『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  467

2015-02-17 07:42:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『そうか、それはよかった。アレテス、その袋は何だ?』
 『これですか、これは、スダヌス浜頭から預かってきた売り上げの集散所の木札です』
 『そんな大袋三袋もあるのか』
 『そうです。ここ三日分です。軍団長に届けてきます』
 アレテスは、二言三言言葉を交わして、その場を離れていった。そこへギアスが姿を見せた。
 『おう、ギアス、お前、明日の予定はどうなっている?』
 『私の明日は、舟艇でキドニア行きです』
 『そうか、誰か代わりの者に行かせろ。明日、新艇のテスト航走をする。お前でないとダメなのだ。操船技術と新艇構造の兼ね合いをテストする』
 『解りました。では、その手配に行きます』
 打ち合わせをしたパリヌルスは、ドックスらのいる場所へと足を運んだ。ドックスが造船作業者たちに囲まれて話し合っている。
 『おう、ドックス。一同に囲まれて造船談義か。明日、アサイチにやってもらいたいことがある、いいか』
 『はい、何でしょう?』
 『舳先帆柱の事だ。細工をしてもらいたい。大きくなくてもよい、タテ方向の補助三角帆を取り付けてほしい。明日、ギアスとテスト航走をする。お前も一緒に乗れ』
 『了解しました。漕ぎかたはどうしましょうか?』
 『漕ぎかたの準備か、お前に任せる』
 『解りました。万端整えます』
 彼は、打ち合わせを終えて、浜の点検巡回を済ませて宿舎の方へ引きあげた。

 パリヌルスは、浜がざわめく朝の活気にあふれた賑わいがたまらなく好きであった。朝の一巡を終えて新艇のところへやってきた。ドックスが補助三角帆の取り付け作業をやっている。パリヌルスが声をかける。
 『あッ!隊長、おはようございます。あと少々で出来あがります』
 『そうか、慌てずともよい。時間に余裕がある、海は凪いでいる。もう、ギアスが来ると思う』
 言葉を交わして小島の方へ目を移した。小島の方でも人が忙しそうに立ち回っている。その風景を目に入れた。
 ギアスが姿を見せ、声をかけてくる。
 『おはようございます。あ~、私の意見を取り入れての今日のテスト航走ですか』
 『おう、昨日の話し合いで、お前から聞いた意見を発表した。俺自身が体感して置きたいことでもあるのでな』
 『それにしても早い手配ですね』
 『そうだ、拙速を尊ぶだ。余っているようで足りないのが時間だ』
 『全く、言われる通りです』
 ドックスが声をかけてくる。
 『パリヌルス隊長、出来あがりました』
 『おっ!よしっ!出る準備ができたか。行こう』
 『判りました。新艇を海へ出します』