『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  472

2015-02-24 07:11:19 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、ギアス、どうだ。皆で昼めしを食べるか』
 『そうですね、簡単でいいです。昼めしといきましょう』
 『ドックス、お前、どうする?』
 『皆と一緒に食べます』
 『よしっ!それで決まりだ。俺が昼飯を準備する。ギアス、新艇を浜に揚げてくれ』
 『判りました』
 パリヌルスは、パン工房の方へと足を向けた。彼はセレストスに焼きたてのパンを持たせて戻ってきた。
 皆が新艇の船陰に車座を造って腰を下ろしている。彼は一同に声をかけた。
 『おう、副菜はない、こらえてくれ。焼きたてのパンとぶどう酒だ!』
 『はい、それで十分です』
 『焼きたてのアツアツパンなんて初めて口にします。それが一番の馳走です。ありがとうございます』
 『あっ!ほんとにアツアツの焼きたてですね。ごちそうになります』
 皆が一斉にパンをほおばった。
 『旨いっ!焼きたて、アツアツパン!これは旨い!パンの焼きたて、こんなにうまいとは知りませんでした』
 彼らは、パン工房長のセレストス前にして、焼きたてのパンを味わった。彼らはパンを口にして咀嚼する、満足の笑みをこぼした。
 パリヌルスがドックスに声をかけた。
 『パンの焼きたてはどうだ?今日のパンはいつものパンとは、チ~ト、違う。何とも言えない風味がある』
 『このようなパンを口にすると、いつもよりたくさん食べる。ちょっと待てよーーー。このパン、いつものパンとは、チ~ト違う、風味が違う。何となく春の野山という感じがする』
 『お前、うまく言うな。春の野山ってこんな感じか?春の風味のあるパンなんて初めて口にする。それもぶどう酒で口にするとは、旨い!』
 パリヌルスは話を継いだ。
 『おう、セレストス、皆が春の風味がある、旨いと言っている』
 『パンの新しい趣向に気づいてくれたとは、焼いたかいがありました。パンの風味のトンガリがチョッピリ足りないのかな。これで口にする者たちをビックリさせてやりたかったのに。隊長、ああっ、これは何だ!というような特徴のあるパンを焼いてみたかった』
 セレストスは立ちあがった、それにつれて、パンを食べた一同も立ちあがる。その中の一人が口を開く。
 『セレストスパン工房長、ごちそうさまでした』
 一同が唱和する、これを耳にしたセレストスは感動した。彼は大いに照れた。照れた表情をかくさずに『おうっ!ありがとう』と両手をかざし、応えてその場を去った。
 昼めしを終えた彼らはテスト航走の感想を話題にした。パリヌルスは、彼らが口にする感想に耳を傾けた。
 『ほう、お前ら、いつも乗っている舟艇とは違う走りを感じたかな?』
 『それは感じます。舟艇に比べてやや小ぶりなうえに、帆の枚数、構造の違いで走り感が軽快です。うまく風をとらえて走りを競り合ってみたいですね』
 パリヌルスは、皆が話す感想を耳にして、新しい何かを察知した。