『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  658

2015-11-18 04:50:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスは話しながら頭の中では、キドニアへの荷運びについて考えていた。朝の第1便に荷積みして運べるか否かについて考えた。
 『まあ~、いいか、荷物の総量を見てだな』とした。
 彼は、この堅パンのプロジエクトの品づくり完了までを打ち合わせて、その遂行を指示したことで肩の荷を半分降ろした気分に浸った。
 『これでテカリオンとの取引に集中できる!』
 彼は、取引価格について思考を巡らせた。答えは簡単に出そうでない。納品完了までに都合三日の日にちがある、余裕をもって価格を決め、交渉の展開を考えるとした。
 夜は更けていった。

 朝だ、夜明けだ。水平線を裂いて昇る朝陽がまぶしい。朝行事を終えての清々しさ、オロンテスは、焼きあげて箱詰めにした堅パンの箱を持って、足取りも軽く、ヘルメスの方へ歩を進めていく。
 テカリオンに渡す堅パンの見本品として携行していく品である。
 彼の今日の大事な一件は、テカリオンとの価格交渉である。波を割って揺れるヘルメスに身をゆだねて脳漿を搾って考えた。
 計算の基礎をパン1個木札1枚において考えた。パン6個分に加算要素が使ったオリーブ油、堅パン焼きあげの手数、そして、堅パンを入れる木箱、パン工房の全員が四日間この仕事に集中した、その積算結果はこうでなければいけないと決めて、総計を算出した総額と照合した。
 彼は堅パン1箱木札9枚~10枚と決めた。その価格、その価値をパン10個と天秤にかけて評価、検討した。
 『まあ~、妥当といったところか』これでテカリオンとの価格交渉をすると意に決めた。
 ヘルメスの進む前方にキドニアの船だまりが見えてきていた。
 船だまりに着く、仕事の手配を済ませ、オロンテスは船だまりに碇泊しているテカリオンの船に向かう。
 テカリオンの所在を問う、彼は不在であった。オロンテスは、乗り組みの者に堅パンの箱を託して引きあげた。
 用件を終えたオロンテスは集散所に向かう。売り場に着く。場を見渡す、今日も客の出足がいいことを確認した。
 彼は、準備してきた小袋を携えて、ハニタスのところを訪ねた。
 笑顔で彼を迎えるハニタス、心は通じている、確信した。
 『おう、オロンテス殿、いかがですかな?新艇建造の方の仕事の進み具合は?』