『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  660

2015-11-20 04:50:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスは、集散所における今日の用件をやり終えた。彼は売り場に立っている、常連、顔見知りが訪れる、余分に持参してきた堅パンをプレゼントする、受け取る客の顔がほころんだ。
 受け取った彼らは、首をかしげながら、堅パンを見つめる、口に運ぶ、、噛みつく、歯ごたえがある、噛み砕いて、胃に収める。
 オロンテスに言葉をかけてくる、『お~、うまいっ!』『いい味だ、行ける!』二言、三言、言葉を交わす、和んだ売り場の風情を醸し出した。
 オロンテスには、ボワ~っとした感覚で未来が見えてきていた。成り行きを享受するといった心境で状況を受け止めた。
 今日もパンを売り切った、結果に満足し感謝した。帰途に就く頃合いである、一同に声をかけた。
 売り場にハニタスが姿をを見せる。
 『お~っ!ハニタス殿、何か用事でも?』
 『オロンテス殿、あの堅パンの事だが、どのようなカタチで売り出すのか、決まったら教えてほしいと思ってな。あれは保存食に向く、また、ウス塩味の堅パンだが、あれは酒の肴にも向く』
 『売り出すカタチについては、只今のところ思案中といったところです。何かいい方法があったら、ハニタス殿のお知恵を拝借したいですな』
 オロンテスは、謙虚な眼差しでハニタスの顔を見た。
 『そうか、それなら、俺もち~と考えてみる。後日にでも話し合おうではないか』
 『それは楽しみですな。宜しくお願いします』
 ハニタスは売り場を去っていく、オロンテスは売り場の者たちに話しかけた。
 『ほう、仕事とは、結構、楽しいものなのだな。お前らも、もっと仕事を楽しめ!』
 今日も明日への展望を背にして帰途に就いた。
 
 パン工房のセレストスは、てんやわんやと多忙を極めていた。生地練り、堅パンの焼き上げ、そして、堅パンの箱詰めと仕事を追って順序良く仕上げていっている。
 『おう、セレストス、お前、忙しそうだな』
 『おう、マクロスチーフ、今日は最多忙の日だ。明日にはちょっと落ち着く予定だ』
 『箱の仕上がり予定だが、予定通りだ。追加の箱の仕上がり完了もまじかだ。上蓋の釘止めの釘が足りているか、ちょっと気になってな。持ってきたからおいていく』
 『そうか、それはありがたい。いただく。焼きそんじの堅パンだが食べるか?みんなの分に足りるか足りないか、判らんが、これをもっていって口にしてくれ』
 『そんなにくれるのか、充分充分、足りる足りる、遠慮せずいただく、ありがとう』
 マクロスは、受け取った焼きそんじの堅パンをもってパン工房をあとにした。
 セレストスは、箱詰め作業のチエックに小屋に向かう。
 『おう、作業の進み具合はどうだ?』
 『はい、うまく運んでいます。上蓋を止める釘を使い果たしそうです』
 『ちょうどよかった。今、ここへ持って来た』
 『タイミングがいいですね』
 『仕事が調子よくいくときは、こんな具合に進むものだ。太古の昔からそのように決まっている』
 『へえ~、そんなものですかね』