『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  728

2016-03-02 04:59:05 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 何をどうすればいいのか見当がつかない。この戸惑い、彼は足踏みした。腰をあげるオキテス、建造の場の一巡に歩を向けた。
 『何とかなるであろう、答えは、向こうからすり寄ってくるさ』とたかをくくっている、そうはならないことをあとから知るのである。
 思考が足踏みしている、顔をあげる、海を見る、やや強めの西風があおる海涛を眺めた。
 小島を目指す舟艇が波を割っている、櫂操作のしぶきが風に舞っている、キドニアからの帰りであろうと思われた。
 一陣の風がオキテスに吹いて通る、目を半眼にして黙考している、建造の場からは、作業の槌音が耳に届く、班長の指示する声が聞こえる、彼は建造の場へと目線を向けた。
 建造の場に立ち働く者たち姿を目に入れる、そして、つぶやく。
 『この風景が好きだな、限りなく好きだ!』
 ドックスが作業の進捗を見ている、ひとつの建造の場を見終われば、次の建造の場へと移っていく、彼はしみじみ思う。
 『ドックスがいる、あいつがいればこそ、この事業がうまく進んでいる』
 彼は感慨を深めた。
 『俺たちが組織体だから、これができている』
 組織体が形成されている、その組織体の絆は?、考えが頭をかすめて通り過ぎていく。
 『それについては、また、いつの日にか考えよう。今はーーー』であった。
 彼は我に返る。
 『今は、新艇建造の原価計算、これを集中して考えなくてはーーー』である。
 原価計算総体について考えていたが、なんとなく違和感を覚える、原価計算のコア、核は何?であるか、思考のスタンスを変える。
 立ち位置を変えて考える、原価計算の風景が変わって見える、見えていなかったものが見えてくる、が、瞬時にその姿が消える、考えが進まない。三歩進んで二歩さがるではない、三歩進んで三歩も四歩も後退するではないか。思考の足踏み、じれったい、イラつく、何とか抑える。
 彼は手ごろな大きさの石を両手に持てるだけ拾い集めて、目の前に並べて考えた。
 『これだけの者たちが、これだけの日数をかけて、これだけの仕事をする』
 彼はなんとなくわかりかけてくる。
 『うっ、うう~ん、そういうことか』
 今でいう、インプット、プロセス、アウトプット、思考作業の手順が見えてきていた。
 解決のいとくちが彼の目に見えてきた。
 『こうして造るから、このように出来上がる』
 彼は、物を造るプロセスの作業費目を見つけた。人が力を合わせて、日数を重ねて物を造る。
 彼らが、一日にかける労働の価値がこれだけで、これだけの日数を重ねて、これだけの物を造る、その総和がこれだけである。
 彼の思考がどうやらここまで来た。