『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  740

2016-03-18 05:24:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 帰着の遅れたヘルメスの無事でニューキドニアの浜は落ち着きを取り戻した。
 『おう、オロンテス、ご苦労だったな。無事の顔を見られるのだったら、肝の冷える心配もたまにいい!』
 『そのようなものではない、心配はかけないに越したことはない、海旅に出る俺の心構えだ。集散所との交渉、いい具合に決着した。運ぶ段取りできているのか?』
 『それは出来ている、安心しろ!打ち合わせは簡単に済ませよう』
 うなづきあう二人、目を合わせる。
 『木札の総枚数は、63500枚だ、量が量だけに大量だ。500枚入りの袋が127袋もある。明日、軍船を仕立ててキドニアへ運ぶ。キドニアの船だまりから集散所に運ぶのにも人手がいる。そのようなわけで軍船を仕立てるわけだ。昼前にはキドニアの船だまりに着く。向こうでの段取りはオロンテスお前だ。お前の指示するところへ運ぶ、よろしく手配を頼む。以上だ』
 『判った。船が着工すると思う頃合いにスタッフの一人を船だまりに待機させておく』
 『解った。よろしく頼む』
 『集散所方は、検収の都合もあるゆえに、交換、銀貨の引き渡しは、3日後となっている。軍団長には、先ほど、この事情は伝えておいた』
 『おう、解った。明日は、俺は俺で計画して事に当たる。軍船の準備はもう終わっている。荷積み作業は、明日、アサイチから開始する』
 打ち合わせを終えた二人はそれぞれの方向に向かった。

 夜が明ける、日が改まる、今日の業務が始まる、活気で浜が沸く、クレタに移り住んだ頃とは比べることを否とする活性がみなぎっている。
 この状態の中にあって、一族を率いているアヱネアスの心境はというと、このクレタにおいて、己と一族の想いである建国を果たせるかなと胸の想いに考えを馳せたとき自信をもって、『イエス、ドウイット!』と言える心意を持てないでいる。それはそれとして、いま手掛けている事業の完遂への想いを手放しはしない。己の生き方に対して、極めて厳しい姿勢を矜持していた。
 大いなるリスク、リスクの制御、掌握するサクセス、大望達成への足掛かり、アヱネアスの大志とその大望。
 運命である。
 彼は事業のサクセスと己の大望の長大な辛苦とその征旅の時の訪れが近づいていることに、このとき、未だ気づいてはいなかった。