イリオネスは目を開けた。今、オキテスと話しあっているのは、原価の算定の件であって、販売価格ではない。原価計算についての判断事項の検討である。
彼が意を決したのは、原価の絶対条件である。それは集散所が提示してくる販売価格が、我々が計算して算出する原価の倍額であってほしいことであった。
『おう、オキテス、決めた。まず費目のことだ。原価計算の費目は2項でよい。第一項、建造用材の原価、第二項、この作業にかかわっている
作業者たち一日当たりの総額を300オボロスとして、建造に費やす日数を80日としてのその総和を建造用材原価と合算して、新艇5艇の総原価としてくれ』
『解りました、第三項の諸掛りは合算する必要がないということですね』
『そういうことだ。お前、原価算出について、いい提案をしてくれた、ありがとう。将来において、いま、指示した詳しい内容を説明することがあるかもしれないが、今日のところにおいては聞くな。原価計算は、通貨単位のドラクマで表示してくれ。換算は解っているな』
『いえ、正確にはーーー』
『そうか、その件について、説明しておく。1ドラクマは、6オボロスだ。作業者たち一日当たりの総額が、300オボロスだから、50ドラクマだ』
『解りました、これに基づいて計算の上、新艇1艇当たりの原価を算出します』
『オキテス、余分の木板があるか?』
『はい、あります』
『よこせ!』
イリオネスは、オキテスから木板を受け取って、図を描いた。
上段に原価の構成図。下段には原価及び利益の総和図を描いて、利益部分の一部に販売諸掛り経費といった構成図を描いてオキテスに手渡した。
『オキテス、見て理解できるな。販売価格内における各費目の構成について書いてある。よろしく頼む』
オキテスは、イリオネスの宿舎を辞して浜に降りてきた。
彼は浜に立って、西のかなたの水平線に目をやる、茜に燃える夕陽がその身を海に沈めようとしていた。
オキテスが定めている安堵できる建造の場の一隅に戻り、イリオネスと打ち合わせた数字を書き入れてきた木板と各費目の構成図を見つめた。
300オボロスが50ドラクマ、稼働日数が80日、この数字の根拠について考えたが不可解な数字である。その後においても、説明を求めることもなく、この数字の根拠を知ろうとはしなかった。
イリオネスの書いた図を見つめて内容を把握して理解した。
彼の胸に去来する感慨は、イリオネスの見識に対する尊敬と絶大の信頼であった。
彼が意を決したのは、原価の絶対条件である。それは集散所が提示してくる販売価格が、我々が計算して算出する原価の倍額であってほしいことであった。
『おう、オキテス、決めた。まず費目のことだ。原価計算の費目は2項でよい。第一項、建造用材の原価、第二項、この作業にかかわっている
作業者たち一日当たりの総額を300オボロスとして、建造に費やす日数を80日としてのその総和を建造用材原価と合算して、新艇5艇の総原価としてくれ』
『解りました、第三項の諸掛りは合算する必要がないということですね』
『そういうことだ。お前、原価算出について、いい提案をしてくれた、ありがとう。将来において、いま、指示した詳しい内容を説明することがあるかもしれないが、今日のところにおいては聞くな。原価計算は、通貨単位のドラクマで表示してくれ。換算は解っているな』
『いえ、正確にはーーー』
『そうか、その件について、説明しておく。1ドラクマは、6オボロスだ。作業者たち一日当たりの総額が、300オボロスだから、50ドラクマだ』
『解りました、これに基づいて計算の上、新艇1艇当たりの原価を算出します』
『オキテス、余分の木板があるか?』
『はい、あります』
『よこせ!』
イリオネスは、オキテスから木板を受け取って、図を描いた。
上段に原価の構成図。下段には原価及び利益の総和図を描いて、利益部分の一部に販売諸掛り経費といった構成図を描いてオキテスに手渡した。
『オキテス、見て理解できるな。販売価格内における各費目の構成について書いてある。よろしく頼む』
オキテスは、イリオネスの宿舎を辞して浜に降りてきた。
彼は浜に立って、西のかなたの水平線に目をやる、茜に燃える夕陽がその身を海に沈めようとしていた。
オキテスが定めている安堵できる建造の場の一隅に戻り、イリオネスと打ち合わせた数字を書き入れてきた木板と各費目の構成図を見つめた。
300オボロスが50ドラクマ、稼働日数が80日、この数字の根拠について考えたが不可解な数字である。その後においても、説明を求めることもなく、この数字の根拠を知ろうとはしなかった。
イリオネスの書いた図を見つめて内容を把握して理解した。
彼の胸に去来する感慨は、イリオネスの見識に対する尊敬と絶大の信頼であった。