『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  742

2016-03-22 06:01:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『よしっ!ご苦労。乗船して配置についた人員は?』
 『総員、102名、以上です』
 『よしっ!いいだろう。リュウクス、浜に行って、建造の場にいるオキテスに出航する旨を伝えてきてくれ』
 『はいっ!解りました』
 指示を終えたパリヌルスは、航海条件のチエックをする。
 天候、うす曇り、陽光が薄く差し照らしている。凪後の北西からの風が海上を波立てている、白うさぎが海の上で跳ねているように見える波立ちである。パリヌルスは状況を理解した。
 リュウクスが戻ってくる。
 『オキテス隊長に出航を伝えてきました』
 『よしっ!出航する』
 パリヌルスが声をかける。
 『今日の操舵担当は誰だ?』
 『操舵担当は、ヘストスです』
 『了解!中央帆柱、帆を上げ!』
 帆が展がる、風をはらむ、船がゆるゆると動き始める、パリヌルスが声をあげる。
 『おう、一同に伝える!今日、この船は、キドニアに向かう、船上の積荷を運送する、いいな』
 『漕ぎかた櫂を持て、漕ぎかた始めっ!』
 海面が泡立つ、船は蹴立てるように波を割る、船足に速度が出てくる。
 船上の者たちにとって久しぶりの航海である。櫂を操る腕に汗が噴き出してくる、瞬く間に全身が汗ばんだ。
 リュウクスは船の中ほどで木板を打ち鳴らす、漕ぎが同調する、船はパリヌルスの想定速度でキドニアへと航走した。
 ヘルメス艇は、時速10ノット(18~19キロメートル)近い速度で走るのに、軍船の速度といえば、6ノット(11キロメートル)くらいである。歩速の2~2.5倍くらいといったところである。航走時間1時間超でキドニアの船だまりに着いた。
 彼らを迎えたのは、パン売り場のスタッフのひとりである。
 『パリヌルス隊長、ご苦労様です。予定時刻通りの到着です。荷運びの準備をお願いいたします。オロンテス隊長を呼んできます』
 スタッフは走り出した。
 『おう、リュウクス、荷物を岸壁の上におろしてくれ』
 『はい、解りました』
 船上の荷を下ろし終える頃にオロンテスが姿を見せた。
 『パリヌルス隊長、ご苦労です。予定した時間通りの到着です。荷を集散所の収納の部屋へと運びます。案内は私がします』
 『おう、よろしく頼む』