『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  735

2016-03-11 05:19:11 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 三人を射る陽射しは、夏の兆しを感じさせるがやわらかであった。
 食後のくつろぎの一時である、晴れ晴れとした表情、なごみの雰囲気、新艇の話題で弾んだ。
 ドックスが腰をあげる。
 『両隊長、ごちそうさまでした。時間が来ました、私はこれにて』
 オキテスが声をかける。
 『おう、そうか。ドックス、頼みだ、三番の建造の場のことだが、足場に不安な箇所がある。ちょっと、見てやってくれ』
 『解りました』
 ドックスが場を去っていく。
 『おう、オキテス、俺も行く、用船に使う軍船を見なければならん』
 『おうっ!そうか。俺も夕方までに、この仕事をかたずけねばだ。次の仕事に備えなきゃならん。じゃ~な』
 オキテスは、昼前からに仕事に手をつけた。
 木板に描いた図を見て、首っ引きで考えた。
 算出記号もない!0もない、この時代の算術、算数の計算作業は、手落とさない、抜け落とさない、記憶に頼り、加減の作業の連結、繰り返しで両手、両足の指、傍らの小石、木切れ、身近にある使える小物を駆使して計算作業をしたのではないかと推察される。
 オキテスも木板に図を描く、建造用材の木切れを使い、加減の作業を連結、繰り返して、原価の算出作業を行った。
 加減乗除の記号を使い、定められた数式を駆使して行う、また、コンピユーターなる機器を使う、現代人のやる答えの算出作業では考えられない手数のかかる算出作業で原価を算出したであろうと推察される。現代人が数分、または、数秒で答えを出す作業に、オキテスは、日がな一日を算出作業に費やして、原価という答えにたどり着いた。
 
 この数行を描いている筆者自身、この古代、原始の時代を思いやってペンを運んでいる。どのようにして加減の作業を進めて、答えに到達するか、したか、大変な思いでペンを運んでいる。書き記すことが正しいか、正しくないか、それは定かではない。

 オキテスは幾度となく検算を繰り返して、木板に書いた答えの数字を確かめた。イリオネスと話し合った原価の費目以外に一項目をつけ足して原価を算出した。
 オキテスが気がついて、追加した費目は、ガリダ方より派遣を受け入れている、5人の製材要員の費用である。
 彼はこれくらいであろうと、適当に基礎数字を決めて計算に及んだ数字であった。