『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  656

2015-11-16 05:13:24 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、セレストス、この出来あがった箱だが夜露が気になる。野積みにはしておけない。何とかしたい』
 『オロンテス棟梁、大丈夫です。小麦の格納庫に入れる余裕があります』
 『そうか、そこへ入れてくれるか』
 『判りました』
 セレストスは、その手配を指示、入庫作業を終えた。
 『おう、セレストス、見たところ、堅パンの仕事の進捗は、万事うまくいっていると見ている。夕めしを終えたら、明日、明後日の段取りを打ち合わせる。昨日、試し焼きしたミックス堅パンの検討をする。いいな』
 『判りました。準備します。なお、打ち合わせには、私以外に4,5人同席させようと考えていますが』
 『おう、それがいい。それで打ち合わせをやる』
 『判りました』
 仕事歩調が決まる、これで一挙にゴールに向けて突っ走れる。オロンテスの心気が高ぶっていく。ここで信条を思い起こす、忘れてはならん。
 『脚下照顧、確かな一歩』
 彼は高ぶる心気を抑えた。この堅パンの仕事の都合5日間に及ぶ起承転結を改めて脳裏に描いた。
 『冷静にして沈着、いけいけドンドンだ』と独り言ちた。
 夕めしの場をパン工房の者たち全員で囲む。オロンテスは、場で一同に告げた。
 『お前たち、昨日から多忙の渦中にある、その奮闘に礼を言う、ありがとう。今、焼いている堅パンは、『保存』を売りにした、新商品である。明日、明後日と懸命に努めてくれ。宜しく頼む』
 全員から『おうっ!』返事が返る。
 『この納品を終えたら、集散所において我々の新商品として取り扱っていく。宜しく頼む』
 彼らは『おうっ!』『おうっ!』と喊声で答えた。
 オロンテスが場を見廻す、食事の終了を確認して、セレストスに声をかけた。
 『おう、いいか、そろそろだ。打ち合わせを始める。場はこの場でやる。秘密にすることもない、メンバーを集めてくれ』
 打ち合わせが始まる。セレストスとチーフとして製造現場に臨んでいるメンバー5人を前にしてオロンテスは話し始めた。
 『まず、製造個数の事だ。製作総数は、150箱、内訳は、羊乳蜂蜜堅パンが60箱、ウス塩堅パンが60箱、ミックス堅パンが30箱とする、判ったな。これから、ミックス堅パンを見てどれにするかを一同に計り決定する。セレストス持ってきたミックス堅パンを一同に配ってくれ』
 『判りました』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  655

2015-11-13 05:29:51 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスは、焼きあげたウス塩堅パンを吟味している、周りの者たちにも味見をさせている、彼らの意見を聞きとる、彼は決定した。
 『おう、セレストス、小屋への搬入が終わったのか』
 『はい、最中です。もう終わるはずです』
 『塩味を決めた。最初の塩味堅パンの塩量の3分の2として、オリーブ油を半分とするのだ。生地練りに指示してくれ』
 『はい、判りました』
 『それから、明日の給食パンの事だが、今言った調合で焼きあげてみてくれ。オリーブ油は適当に調整しろ。以上だ』
 『はい、判りました』
 『おう、セレストス、それから、向こう三日間の仕事の段取りを打ち合わせる。いいな。今日の業務が終わったら打ち合わせだ』
 箱作りの今日の仕事が終わりに向かっている。マクロスチーフが姿を見せた。
 『オロンテス隊長、報告します。今日の箱の出来上がりは60個です。残りの90個ですが、明日の午前中に仕上がります。今日の仕事はこれで終了とします。それからですが、箱の用材が少し残っています。その用材で20個くらい箱が作れますが、どのようにしましょうか?』
 『用材が残っている?箱20個が作れる。マクロスチーフ、それは、いいね。用材を使いきって、箱を作ってくれ。いいかな』
 『判りました。それで明日の段取りをします。今日はこれであがります。新艇建造現場の状況確認の必要がありますのでーー』
 『お~、そうか。ありがとう。箱を検収する』
 二人は広場へと向かった。出来あがった箱が広場の真ん中に積まれていた。オロンテスは、一同に声をかけた。
 『おう、諸君、ご苦労でした。今、焼きあがった堅パンを持ってくる、口にしてくれ』
 セレストスが堅パンを持って姿を見せる、熱々の堅パンを一同に配る。
 彼らが声をあげる。『熱い!』『ごちそうさんです』と言って、彼らが口に運ぶ風景がそこにあった。
 『では、オロンテス隊長、私たちはこれにてーー』
 彼らは広場を去っていった。
 広場に立って、箱の山を見つめるオロンテスには、仕事完了の情景が見えた。
 堅パンを焼き上げる、箱に詰める、蓋を釘づける、荷積み、荷おろし、堅パンの引き渡し、代価の受け取りまでの情景がはっきりと見えた。
 『よし!いいだろう』
 『少々、風があるな、この状態なら夜露の心配はないと思うが、だが、気にかかる』
 彼は、セレストスに声をかけた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  654

2015-11-12 04:19:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 キドニアから帰ってきたオロンテスは、あれこれと多忙である。彼は、堅パンつくりの状況を確認する。
 『おう、この進捗状況ならテカリオンとの約束の履行に支障はない』思い通りに行けることを確信した。
 彼は、集散所においても堅パンの取り扱いを目論んでいたのである。
 『オロンテス、俺は浜へ戻る』
 『そうか、いろいろとありがとう、礼を言う』
 『何かあったら、気にせずに言ってくれ』
 『おう、何かと世話になる、よろしく頼む』
 箱作りの現場で立ち止まる。
 『お~い、マクロス!俺は浜へ戻る。宜しく頼むぞ』
 『判りました』
 オキテスは、現場を一巡して、その場をあとにした。
 オロンテスは、気がかりの堅パンつくりの進捗に安堵して心に余裕を持った。
 『おう、セレストス、焼きあがった堅パンの箱詰めの事だが、この堅パンは『保存できる』が売りのパンだ。保存するといっても何カ月もということではない。まあ~長くても一カ月ぐらいの事だ。その間の日持ちが課題なのだ。解るな。そのための容器があの箱なのだ。そういうことで箱詰めのタイミングの適時が大事と考えている』
 『判りました。焼き上がりの熱い堅パンを詰める、蓋をする、熱がこもる、パンが汗をかく、湿気がこもる、目的とする保存に不具合ということですね』
 『お前、よく解っているではないか、そいうことだ。時間をかけて熱を冷ます、適度に乾かす、それを確かめて箱に詰める。その段取りで仕事を仕あげる』
 『判りました。そのように仕事を進めます』
 『それをやるには、ちょっと設備をしなければならなかった。それが俺の考えから抜け落ちていたということだ。今からではどうにもならない。セレストス何とかするのだ、考えてくれ』
 『判りました。何とかします。空き場所を探してよきようにいたします。任せてください。日々のパンも焼く仕事があります。急いで処置します』
 セレストスは現場に戻っていく、焼きあがった堅パンの山を見つめて思案した。
 今、使っていない小屋の事を思い出す。
 『この際だ、急場のしのぎだ、あの小屋を使う』と決めた。
 彼は、部下二人を連れて小屋へ向かう、小屋に踏み入る、見まわす、使えることを確かめた。同行してきた二人に指示をする。
 小屋の清掃と焼きあがった堅パンの搬入する要領を指示した。
 『手すきの者を連れてきて急いでやってくれ』
 ほどなく、準備完了の報せが来る、それを受けて点検する、焼きあがった堅パンを小屋へ運び入れて事を終えた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  653

2015-11-11 05:43:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスに連れだってオキテスも工房の中に入る。焼きあがった堅パンが熱がこもらないように広く場所をとって所狭しと積まれている。オキテスが声をあげる。
 『おう、オロンテス、これは香りなんて、優しい言葉で言えないな。そんな匂いだ!あまくて、うまそうな匂いだ。それも強く鼻を衝く。ひとつつまんでいいかーーー』
 『いいとも、どうぞ!』
 『ひとつ、いただく』
 オキテスは堅パンひとつをつまんで口に運ぶ、歯音をたてる。
 『おう、これはいける。うまい!なかなかだ』
 うまい匂いに包まれて口にする堅パンは、これ以上はないという旨さで舌にからんだ。
 『オロンテス棟梁、羊乳蜂蜜堅パンは、予定数量を焼き上げました。塩味の堅パンを焼く作業に取り掛かっています。これが焼きあがった塩味堅パンです。味見をお願いします』と言って、焼きあがったばかりの塩味の堅パンをオロンテスに手渡した。
 『お~お、これか。焼きあがりの色あいもなかなかいい』手にした堅パンの一つをオキテスに渡した。
 『味わってみてください』
 『おう、味見か』
 二人は香ばしい堅パンを口に運んだ。
 『お~っ!これは一風変わった味だな。オリーブ油とウス塩味がうけるかもな』とオキテス、首をかしげるオロンテス。
 『セレストス、この塩味の堅パンだが、どれくらいのところまで作業が進んでいる?』
 『今、少し前に作業に取り掛かったところです。焼きあがりは、300枚くらいのところです』
 『塩味がきつい!もっとウス味にするのだ。生地つくりを中止しろ!急いで指示をするのだ』
 工房内に緊張が走った。セレストスが生地を練っている小屋へと走った。
 『おう、ネリタス!生地練りを中止しろ!』声を飛ばすセレストス、生地練りを中止させて工房に戻る。
 『オロンテス棟梁、指示を願います』
 『調合する塩を今の半分のものと、3分の2くらいに抑えたものの試し焼きを直ぐやってくれ』
 『判りました』
 セレストスは各部署に指示を出した。
 『オキテス隊長、とんだところを見せましたな』
 『俺は、そのあたりの事については何もわからない。オロンテス、それはお前の仕事だ。しかし、塩あんばいは、あれでもいいのではないか』
 『いや、1枚や2枚を食べる分には、あれでもいいが、4,5枚食べるとなると塩味がきつすぎる』
 『ほう、そんなものか』
 『セレストス、塩味の方はウス塩味とコイ塩味の2種類として箱詰めの段取りとする。解ったな』
 オロンテスは、処理方法の指示をした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  652

2015-11-10 05:38:15 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 セレストスが箱作りの場に姿を見せる。彼も箱作りの進捗を気に掛けている。場の風景を目にする、箱ができている。彼は焼きあがった堅パンの一部を箱に詰めたい心境でいた。しかし、踏みとどまった。これについては、オロンテスの指示にもとづいてやろうと心した。
 『マクロスチーフ、もう箱の組み立て作業が始まっているのですね』
 『おう、そうだ。この調子で箱作りが進めば、明日、昼めし前に総数150の箱ができあがる』
 『そうですか、それは願ってもないことです。堅パンの焼きあがりも順調に進んでいます。これは先ほどの堅パンとは、違う塩味の堅パンです。味わってみてください。批評をしてください』
 マクロスは手に取って口にもっていく、ひと口、ふた口、歯音が響く。
 『おう、なかなかの味ではないか、嫌味がない、オリーブと潮のバランスがいいように思うが。お前らもモノツクリがうまいな。感心感心。ごちそうさん』と言葉を結んだ。
 声が聞こえてくる、オロンテスとオキテスが言葉を交わしながらこちらへ向かってくる。二人は、工房前の広場に着いた。
 『おう、やってる、やってる。マクロス、調子はどんな具合だ?』
 『あ~、オキテス隊長、部材を整え終えて、箱の組み立て作業に取り掛かっています。ドックス棟梁の製材がとてもよくできています。これがつくりあげた箱です』
 『おう、いい仕上がりではないか。オロンテス、見てみろ、出来あがった箱だ』
 『お~お、これは美しい仕上がりだ。セレストス、どうだ?これで焼きあがった堅パン60個がきちんと収まるのか?』
 『はい、実際に60個を入れて、決めた箱の大きさです』
 『そうか、それはご苦労であった。堅パンの仕上がり具合は、どのように進んでいる?』
 『はい、順調に進んでいます』
 『よし!判った。仕上がり具合をみる。箱詰めは、俺の指示を待ってくれ。熱の冷め具合が箱詰めのタイミングだ』
 『判りました』
 『一番最初に出来た試作の箱に、一番最初に焼きあがった堅パンを箱詰めにしておいてくれ。蓋はまだしないようにな』
 『判りました』
 セレストスはオロンテスの指示の何かを考えた。
 堅パンを焼き上げる、間をおいて熱を冷ます、保存食としての箱詰めをする、その意味を悟った。
 完璧といかないまでも試行で発生する錯誤に考えが到達した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  651

2015-11-09 05:59:15 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『箱は、もう少し浅くてもいける』
 『セレストス班長、これでどうだろう?』
 マクロスがおおざっぱながら、サイズを調整する。見入るセレストスが首を縦に振ってうなづいた。
 『マクロスチーフ、オーケーです。宜しく頼みます』
 『判った』
 『この堅パンは皆さんで食べてください』
 『おう、ありがとう』
 彼らは、マクロスチーフの指示で一斉に箱の部材作成作業を開始する、まず部材からである。
 蓋板と底板の整形をする者、側板を整える者、一同が大わらわで作業を進めていく。アンテウスが、部材の仕あがりをチエックしていく。
 『おう、アンテウス、部材を使って、箱をひとつ組み立ててみろ!部材に不具合があるかないかのチエックだ』
 『判りました』
 アンテウスは、部材を都合して箱を作りあげる。
 『チーフ、出来ました。部材に不具合はありません』
 『おう、出来あがったな。堅パンを入れてみろ!』
 セレストスが持ってきた堅パンを仕あげた箱に詰めた。
 『おう、なかなかいい具合ではないか。ピッタシではないか、おう、これでよし!』
 マクロスが笑みを浮かべてアンテウスをみる、言葉をかけた。
 『部材の仕上がり具合はどうだ?』
 『はい、底板と蓋板は完了しています、側板があと少しで完了です』
 『そうか、側板は都合600枚もいるからな。仕あがったら、次の作業の打ち合わせをやる、いいな。一同をここに集めてくれ』
 『はい、判りました』
 ほどなく部材の作成作業が完了した。
 『おう、一同、ご苦労!部材の作成作業が完了した。箱の組み立てに取り掛かる、いいな。アンテウスがつくりあげた箱の完成品だ。よ~く見るのだ。このように組み立てて完成だ。今日のこれからと明日の夕刻までに、この箱、150個を作る。一人当たり10個くらいの製作だ。中に焼きあがった堅パンを入れる箱だ。丁寧な仕上げを心がけてくれ。解ったな。小休止を終えたら作業を始める、いいな。もらった堅パンを一同に分ける、アンテウス配ってくれ』
 一同が歯音を立てて、うまい堅パンを食べた。
 箱の組み立て作業が始まる、釘を打ち込む快い音が広場にこだました。
 マクロスが一同の作業に目を配る。作業の進捗を注意深く見る。彼は、部材の残りをチエックした。
 『ほう、あと20個くらいの箱が作れるな。明日になっての算段だ』
 マクロスはそのように段取りした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  650

2015-11-06 03:58:15 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 昼めしを済ませたセレストスは、オキテスの許へと向かう。
 『おう、セレストス、来たか。万端、整っているぞ。安堵せい!まず、箱作りの要員だ』
 『はい!』
 オキテスは、セレストスを連れて、一同が待機している場所へと向かう。
 『彼ら一同のチーフであるマクロス。おう、マクロス、パン工房のセレストスだ』
 『あ~、オキテス隊長、セレストスとは知らぬ仲ではありません。よく知っています』
 『お~、そうか。マクロス、用件は昨日、言った通りだ。宜しくな』
 二人は握手を交わした。オキテスはセレストスの方へ身体を向けた。
 『セレストス、彼に用件は伝えてある。チーフのマクロスに詳細を説明すれば、その通りのものができると思って間違いない、安心して任せればいい』
 『判りました。ありがとうございます』
 『次は、用材の引き渡しだ。それはこっちだ』
 オキテスは彼らを引き連れて、製材の場へと向かう。用材が整然と準備されていた。用材は美しく仕上げられている。サイズを整えて組み立てればいいまでに仕上げられていた。
 一同は、それらを背に負って、製材の場をあとにした。
 パン工房前の広場に着く、そこを作業の場とすることにしていた。
 『おう、マクロスチーフ、打ち合わせしよう』
 『おう!』
 セレストスは、工房の者に言いつけて、焼きあがった堅パンを一同の数だけ持ってこさせる。彼らに配る。
 『おう、口にしてみてくれ』
 あちこちで堅パンに噛みつく歯音が響く、
 『うまい!』の声があがる。『初めて口にするパンだ』『噛み答えがある。うまい!』との声があがった。マクロスとセレストスは打ち合わせを始めた。
 『マクロスチーフ、今、口にされた堅パンを60個を入れる箱です。箱の構造は、このようにと考えています』と言って、オロンテス承認の設計図を手渡した。見つめる、首を縦に振ってうなづくマクロス。言葉を継ぐセレストス。
 『ひとつ見本を作って堅パン60個を入れるにふさわしい大きさを決めてください。底板と蓋板にはこの板を使用して組み立てる設計になっています。蓋の構造は、このようにして、この箱を保存容器として使うように設計されています。製作はマクロスチーフに一任です』
 『判った。簡単な構造だが用をなす容器になる。セレストス、ところで製作する数はどれだけだ?』
 『入用とする数は、150個です』
 『了解した』
 『今、焼きあがった堅パンを60個を持ってこさせます。宜しく頼みます』
 『お~い!アンテウス、設計図はこれだ。部材を整備する前に見本を作る。箱の大きさを決めねばならんのだ。箱の深さが大きさの決定要素だ。取り掛かってくれ!』
 『判りました』
 『箱の中に入れるのは、今、口にした堅パンを60個だ。現物が、今、届く、以上だ』
 アンテウスは、見本の試作に取り掛かった。またたく間に仕上がっていく。
 『お~い、誰か、工房に行って、セレストス班長を呼んできてくれ』
 セレストス、マクロス、アンテウスの三人は、出来あがった試作の箱に堅パン60個を入れる、蓋をしてみた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  649

2015-11-05 05:13:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『パリヌルス、お前もどうだ?ドックス、お前も来い、テカリオンどのは、お前にとっても珍しい話を持っている客人だ』
 『はい、喜んで一緒します』
 『おう、そうか。一緒に朝食といこう。この海域一番の交易人と技術屋、スーパーマルチ人の朝食会だ』
 オキテスの声がけで朝食の場を囲むことになった。
 イリオネスがテカリオンに声をかけた。
 『テカリオン、ところで、お前の今日の予定は?』
 『はい、今日の私は、アレテス隊長と魚の加工品の事を打ち合わせて、そののちに浜を離れます。五日後にキドニアを出航して、ミチリーニに向かいます。途中、ミレトスに立ち寄りますが』
 『そうか、航海をことなく行くようにな』
 『ありがとうございます』
 『ではな』
 イリオネスは浜をあとにした。
 オキテス声がけの朝食会は弾んだ。オキテスが司会の労をとっている。
 『おうおう、過ぎた話よして、テカリオンどのからこれからの話をしてもらおうではないか』
 『おう、それがいい。テカリオンどのは、この世を広く行ったり来たりで過ごしておられる。それの見聞きを聞かせてほしい。俺らは広く世を知っていない』
 テカリオンは、請われるままに話の種に花を咲かせた。
 『おう、パリヌルス、もう、そろそろだ。小島での用件を済ませたい。連れて行ってくれ』
 それを潮に朝食会は終わった。
 浜の各場が動き始める。日常の喧騒が始まった。
 パリヌルスとテカリオンの二人は小島にわたる。アレテスが出迎える。間をおかずに本題の話となる。
 『アレテスどの、私の予定では、今日から五日間はキドニアにいます。調品のうえ納品をよろしく頼みます。それでだが、季節が季節です。少々、塩をきつめにして調品してください』
 『承知しました。そのように致します』
 『そうか、それはありがたい。宜しく頼みます』
 手短かに用件を終えたテカリオンは、携えてきた木の箱をアレテスに手渡した。
 『釣り針のほかに釣りに使用する小物も入れてあります。使ってください』
 『ありがとうございます』
 『釣り針は大、中、小の三種類を入れてあります。目的によって使い分けてください』
 二人は用件は終えて小島をあとにした。
 『パリヌルス、俺は、これで出航する。しばしの別れだ、元気でいろよ』
 『道中、気をつけて行け。不穏な噂を耳にしている』
 『判った、充分に気をつけていく』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  648 

2015-11-04 06:43:11 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 変換ミスをしました。お詫びして、訂正します。

 17行目  全身をモチベーとした。  を
       全身をモチベートした。  に

 訂正いたします。
              山田 秀雄

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  648

2015-11-04 05:22:36 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 あえぐ、声をあげる。
 『うう、う~っ!強く抱いて!』
 パリヌルスは、彼女の口を手で覆った。腰を律動に合わせて、身を震わせる。それに応えるパリヌルス、彼女の耳たぶを噛み、吸う。
 『おう、来たのか、俺もいくぜ!』
 吸っている耳にささやく、うなづき応える。
 『あ~あ~あ、来る来る、来たあ~~!』
 彼女は、彼を抱きしめ、腰を押しつけた。二人の律動は小康する。耳に口を寄せる、『ありがとう』と告げる。
 それにこたえて返す、『ありがとう。よかった!うれしい』
 パリヌルスは、身を離しても彼女の秘部を撫でさすった。
 そうこうしている間にまたもや分身が身を起こしてくる、再び身が燃えてくる。
 『あ~あ、また嵐だ。いいか?』ささやく、『来て!』身を開く彼女、重なっていくパリヌルス、二人は再びの合体に身を震わせた。
 二人は、愛の行為の余韻を堪能した。互いに満足を味わった。
 『さあ~、帰ろう。暗いが大丈夫か?』
 『うん、一人で帰る』
 二人は、『ありがとう』を言い交わして、別れ別れに道をたどった。パリヌルスは、心の中でつぶやく、『互いの満足、交歓、望みの合致か』吹きすぎていく夜風が気持ちよかった。
 何か吹っ切れた想いが全身をモチベーとした。

 晴れの気持ちの朝が明ける、パリヌルスは、浜へと下りていく行く、テカリオンも朝行事に顔を見せたらしい、朝の浜は、イリオネスとテカリオンの話し合いでにぎわっている、オキテスも加わっている、ドックスも傍らにいた。
 朝行事は、社交の場でもある。パリヌルスは、やや離れたところで海に身を浸した。昨夜の思いとの決別が惜しまれたが、それを身につけて今日の作業ではなかろうと洗心の気持ちで洗い流した。
 テカリオンと話したことに対する残心に身構えて彼らの歓談に加わった。
 『軍団長、おはようございます。お~お、皆さん、おはよう!話に花を咲かせていますな。話題は何ですかな?』
 『おう、パリヌルス、おはよう。朝食の前菜のような話だ』
 オキテスが答える。
 『今日の扉も開いた。行雲流水、追いかける希望といったところだ』
 イリオネスがチョッピリ高みにスタンスして、話のピリオドとする。
 オキテスが語り掛けてきた。
 パリヌルスをテカリオンとの朝食の場に誘った。
 オロンテスは、今日のキドニア行の準備に忙殺されている。ギアスは、荷積みの指示と風読みに集中していた。
 『ヘルメス艇、出航!』
 その声を耳にした。