画像を投稿する練習をしています。失礼をお許しください。 山田 秀雄
ロムルスとレムスに乳を飲ませるメス狼はローマのシンボルとして
BC296年にローマのカピトリウムの丘に置かれた。
『パリヌルス、進めてくれ。作戦立案に関しては、お前に頼るほかはない。よろしく頼む』
『オキテス、ここは話し合いで、まず、敵を想定する。いいな』
『判った』
『敵が我々を攻撃してくる。その目的又は目標は何だと考えている。次は敵勢の規模は?そして、奴らはどのような作戦展開で来るかを考える。今の我々は、それらについて何もわかっていない。想定で充分だ、それらで考えられるあらゆる攻撃に対応できるように、当方の待機作戦を組み立てる。そういうことだ』
『パリヌルス、理解した』
『では聞く、オキテス!お前の勘で答えてくれていい。海からくるか、陸上をやってくるか?』
『それについては、海も、陸も想定してくれ』
『次だ、奴らは徒党を組んで、集団で来るわけだが、その規模の大きさは?』
『最大で70~80人、最小で15~20人、それ以下はないと考えている』
『奴らの戦闘能力は、その水準はどれくらいだと考えている?その思考尺度は、我々が有している戦闘能力の上か下かだ』
『それについては、我々より、うえであるとは考えにくい。奴らは、我々を船を建造する工人の集団であると考えていればの話だが』
『それについての俺の考えでは、戦場における武器を交えての闘争の練度は、我々の上をいくとは考えにくい。しかしだ、奴らの野蛮、残虐度は我々の想像を上まわる。侮ってはいかん』
『解った。想像される奴らの戦略、戦術、攻略を考えてみてくれ。パリヌルス、とにかくやってくれ、こちらの対応が決まれば、直ちに配備にかかる。よろしく頼む』
『おう、解った!オキテス、少々時間をもらう。四半刻くらいだ』
『おう!』
パリヌルスは、独りになれる場を探して考えを巡らせた。
奴らがここを攻めてくる目的は、新艇の略奪にあると考えられる。とすると襲撃はいつになるか?新艇の完成時を狙ってくると考えられる。奴らはそのためにこの浜を偵察に来る。パリヌルスは、新艇がほぼ完成する7~8日後くらいに攻撃してくると予想した。
脳漿を絞るパリヌルス、彼は、敵を迎え撃つ想定戦場について考えた。
新艇建造の場を戦場にすることを何としても避けたい、そのうえ、夜間の戦闘である、同士討ちによる味方の損傷をもなんとしても避けたい。
パリヌルスは、待機戦略構想をまとめた。
『オキテス、ここは話し合いで、まず、敵を想定する。いいな』
『判った』
『敵が我々を攻撃してくる。その目的又は目標は何だと考えている。次は敵勢の規模は?そして、奴らはどのような作戦展開で来るかを考える。今の我々は、それらについて何もわかっていない。想定で充分だ、それらで考えられるあらゆる攻撃に対応できるように、当方の待機作戦を組み立てる。そういうことだ』
『パリヌルス、理解した』
『では聞く、オキテス!お前の勘で答えてくれていい。海からくるか、陸上をやってくるか?』
『それについては、海も、陸も想定してくれ』
『次だ、奴らは徒党を組んで、集団で来るわけだが、その規模の大きさは?』
『最大で70~80人、最小で15~20人、それ以下はないと考えている』
『奴らの戦闘能力は、その水準はどれくらいだと考えている?その思考尺度は、我々が有している戦闘能力の上か下かだ』
『それについては、我々より、うえであるとは考えにくい。奴らは、我々を船を建造する工人の集団であると考えていればの話だが』
『それについての俺の考えでは、戦場における武器を交えての闘争の練度は、我々の上をいくとは考えにくい。しかしだ、奴らの野蛮、残虐度は我々の想像を上まわる。侮ってはいかん』
『解った。想像される奴らの戦略、戦術、攻略を考えてみてくれ。パリヌルス、とにかくやってくれ、こちらの対応が決まれば、直ちに配備にかかる。よろしく頼む』
『おう、解った!オキテス、少々時間をもらう。四半刻くらいだ』
『おう!』
パリヌルスは、独りになれる場を探して考えを巡らせた。
奴らがここを攻めてくる目的は、新艇の略奪にあると考えられる。とすると襲撃はいつになるか?新艇の完成時を狙ってくると考えられる。奴らはそのためにこの浜を偵察に来る。パリヌルスは、新艇がほぼ完成する7~8日後くらいに攻撃してくると予想した。
脳漿を絞るパリヌルス、彼は、敵を迎え撃つ想定戦場について考えた。
新艇建造の場を戦場にすることを何としても避けたい、そのうえ、夜間の戦闘である、同士討ちによる味方の損傷をもなんとしても避けたい。
パリヌルスは、待機戦略構想をまとめた。
『ほ~う、それはどこからの情報だ?』
『話の出どころは、統領と来訪者との話らしい。それで統領が言われるのは、ここでもし何かがあれば、それは一大事ということになる。ということで夜の警備を万全のものにしたらどうだということだ』
『それは言われる通りだ。万全のものにすることに異論はない。敵の攻めてきかたによるが、今の状態では心もとないことは確かだ』
『それで、それをやると同時に情報の収集もせよということだ。情報収集については、オロンテス、ギアスと打ち合わせる。とりあえず建造の場の警備の増強について手を打とう。その打ち合わせだ。よろしく頼む』
オキテスは、話のほこ先をドックスに振った。
『ドックス、聞くが、夜のかがり火は何か所くらいにしている?』
『かがり火は、1艇当たり建造の場に4か所です』
『建造の場にかがり火を4か所か、そして、周りは真っ暗というわけだな、ドックス』
『はい、そいう状態です』
『パリヌルス、それに加えて、夜の張り番、警備担当者は現在12名でやっている。統領の見解では、『それは手薄だな』というわけだ。お前はどれくらいが適当と考える?』
『そうだな、そうだなではない。ちょっと状況を想像してみよう。敵が来るとすれば、何を目的に、どのように攻めてくるかと考える。それができたら、どのような警備体制がふさわしいか考えられる。それがこの場合の思考の原点だ』
『パリヌルス、考えてくれ』
『判った。任せろ!』
パリヌルスは、身の回りに目を走らせた。彼は木板に使える板を探して手にとった。パリヌルスは、近頃になって、文字を書いて考える癖を身につけていた。
『おう、オキテス、話をするぞ、いいか』
『ちょっと待ってくれ、今、ドックスと話の真っ最中だ』
『ドックス、建造の場の明かりについて考えよう。場の周囲を明るくするか、新艇の周りを明るくするかについて結論を出す。これには、敵が来たらどう戦うかが問題なのだ。ここにいて話を聞いてお前も考えろ!完成をまじかにした新艇に変事があっては困る。そのために手を打つのだ』
『判りました』
オキテスはドックスとの話を終えてパリヌルスと話し始めた。
『おう、パリヌルス、待たせた。話を始めよう』
『おう、話し合う項目を書いてみた。順不同だが話しあっている間にうまくまとまる』
二人はうなずき合った。
『話の出どころは、統領と来訪者との話らしい。それで統領が言われるのは、ここでもし何かがあれば、それは一大事ということになる。ということで夜の警備を万全のものにしたらどうだということだ』
『それは言われる通りだ。万全のものにすることに異論はない。敵の攻めてきかたによるが、今の状態では心もとないことは確かだ』
『それで、それをやると同時に情報の収集もせよということだ。情報収集については、オロンテス、ギアスと打ち合わせる。とりあえず建造の場の警備の増強について手を打とう。その打ち合わせだ。よろしく頼む』
オキテスは、話のほこ先をドックスに振った。
『ドックス、聞くが、夜のかがり火は何か所くらいにしている?』
『かがり火は、1艇当たり建造の場に4か所です』
『建造の場にかがり火を4か所か、そして、周りは真っ暗というわけだな、ドックス』
『はい、そいう状態です』
『パリヌルス、それに加えて、夜の張り番、警備担当者は現在12名でやっている。統領の見解では、『それは手薄だな』というわけだ。お前はどれくらいが適当と考える?』
『そうだな、そうだなではない。ちょっと状況を想像してみよう。敵が来るとすれば、何を目的に、どのように攻めてくるかと考える。それができたら、どのような警備体制がふさわしいか考えられる。それがこの場合の思考の原点だ』
『パリヌルス、考えてくれ』
『判った。任せろ!』
パリヌルスは、身の回りに目を走らせた。彼は木板に使える板を探して手にとった。パリヌルスは、近頃になって、文字を書いて考える癖を身につけていた。
『おう、オキテス、話をするぞ、いいか』
『ちょっと待ってくれ、今、ドックスと話の真っ最中だ』
『ドックス、建造の場の明かりについて考えよう。場の周囲を明るくするか、新艇の周りを明るくするかについて結論を出す。これには、敵が来たらどう戦うかが問題なのだ。ここにいて話を聞いてお前も考えろ!完成をまじかにした新艇に変事があっては困る。そのために手を打つのだ』
『判りました』
オキテスはドックスとの話を終えてパリヌルスと話し始めた。
『おう、パリヌルス、待たせた。話を始めよう』
『おう、話し合う項目を書いてみた。順不同だが話しあっている間にうまくまとまる』
二人はうなずき合った。
クリテスは、そのように答えて来訪者が群れている新艇の建造の場へと移った。
アヱネアスとオキテスが話し込む。
『話している言葉を耳にしたことがあるがうまく聞き取れない、話していることが解らない、そういうことなら交流はあきらめだ。オキテス、聞くが、建造の場は、夜の張り番は何人くらいでやっている?』
『はい、12名です』
『それは多いとは言えないな。俺の考えだが、今夜から夜の張り番を倍の30名くらいに増やしてはどうかな。建造の場への来訪者にクレタ人でない者が訪れている。『海の民』言われる者どもが、このクレタに姿を見せていると耳にしている。真偽のほどは確かではない。オロンテス、ギアスに指示して、情報の収集をしてほしい。ところで新艇の出来上がり具合は、どこまできている?』
『そうですね、八分通り仕上がっています。もうそろそろ、コールの塗装にかかろうかと思案しているところです。帆は全艇分加工を終えました。第1号艇納入の最終打ち合わせをしたいと考えています』
『ほう、そうか。お前ら、ようやった!ここで新艇に何かあったでは話にならん。警備に力を注ごう、いいな。パリヌルスにも話して、手配を頼む。用心するにこしたことはない』
『判りました。今夜から、直ちに実施します。統領の言われるように、万全を期します』
言い終えてオキテスは、立ちあがり、ドックスを手招きで読んだ。
浜の巡回を終えたパリヌルスが姿を見せる。オキテスがすかさずパリヌルスに声をかけた。
『おう、パリヌルス隊長、統領から夜の建造場の警備について指示があった。ドックスも呼んだ、もう来る。3人で打ち合わせをしたい。緊急の用件だ、よろしく頼む』
『おう、了解!どこでやる?』
『ここでやろう!』
ドックスが来る。
『おう、ドックス、ご苦労。夜間の警備のことで打ち合わせをやる。打ち合わせを終えたら、即、手配をしたい!いいな』
パリヌルスが口を開く。
『オキテス、始めてくれ』
『おう、近頃、この浜への来訪者が増えている。来訪者の中には、この土地の住人、クレタ島の住人ではないと思われる者が増えてきている。それはそれで結構なことだが、結構だといって喜んでいられないところもある。パリヌルスも耳にしていると思うが、『海の民』なるやからが、クレタのあちこちで騒動を起こしているそうだ』
オキテスは、ここで話をきり、目を合わせ、互いの気持ちを確かめた。
アヱネアスとオキテスが話し込む。
『話している言葉を耳にしたことがあるがうまく聞き取れない、話していることが解らない、そういうことなら交流はあきらめだ。オキテス、聞くが、建造の場は、夜の張り番は何人くらいでやっている?』
『はい、12名です』
『それは多いとは言えないな。俺の考えだが、今夜から夜の張り番を倍の30名くらいに増やしてはどうかな。建造の場への来訪者にクレタ人でない者が訪れている。『海の民』言われる者どもが、このクレタに姿を見せていると耳にしている。真偽のほどは確かではない。オロンテス、ギアスに指示して、情報の収集をしてほしい。ところで新艇の出来上がり具合は、どこまできている?』
『そうですね、八分通り仕上がっています。もうそろそろ、コールの塗装にかかろうかと思案しているところです。帆は全艇分加工を終えました。第1号艇納入の最終打ち合わせをしたいと考えています』
『ほう、そうか。お前ら、ようやった!ここで新艇に何かあったでは話にならん。警備に力を注ごう、いいな。パリヌルスにも話して、手配を頼む。用心するにこしたことはない』
『判りました。今夜から、直ちに実施します。統領の言われるように、万全を期します』
言い終えてオキテスは、立ちあがり、ドックスを手招きで読んだ。
浜の巡回を終えたパリヌルスが姿を見せる。オキテスがすかさずパリヌルスに声をかけた。
『おう、パリヌルス隊長、統領から夜の建造場の警備について指示があった。ドックスも呼んだ、もう来る。3人で打ち合わせをしたい。緊急の用件だ、よろしく頼む』
『おう、了解!どこでやる?』
『ここでやろう!』
ドックスが来る。
『おう、ドックス、ご苦労。夜間の警備のことで打ち合わせをやる。打ち合わせを終えたら、即、手配をしたい!いいな』
パリヌルスが口を開く。
『オキテス、始めてくれ』
『おう、近頃、この浜への来訪者が増えている。来訪者の中には、この土地の住人、クレタ島の住人ではないと思われる者が増えてきている。それはそれで結構なことだが、結構だといって喜んでいられないところもある。パリヌルスも耳にしていると思うが、『海の民』なるやからが、クレタのあちこちで騒動を起こしているそうだ』
オキテスは、ここで話をきり、目を合わせ、互いの気持ちを確かめた。
二人は昼食を忘れて話し合っていた。意義のある話は充実した内容であるといっていい、互いに満足を胸に抱いた。アヱネアスが言葉をかける。
『遅くなったが、父上、昼めしを食べましょうや』
『おう、いいな!』
昼食の場を囲む、向かい合って食べる、簡単したての食事、場には話し合いの残心がこもっていた、
『久しぶりの二人でとる食事だな』
アンキセスがつぶやきながら酒杯を持った手を伸ばしてくる、酒を注ぐアヱネアス、二人は遠い昔に過ぎ去った日を想い出しながら、パンをうまそうに食した。食事を終えて、アヱネアスは浜へと歩を運ぶ。
新艇が日に日にカタチを整えて仕上がっていく。今日も来訪者が来ている、見慣れぬ風体の者が新艇に見入っている。
アヱネアスはいぶかしんだ。彼らはクレタの者ではない、話し合う言葉が聞きなれた言葉ではなかった。いぶかしみを深めるアヱネアス。
『おい、オキテス、あれを見ろ!アイツらの話す言葉が聞き取れない。誰か聞き取ることのできる者がいないか』
『風体を見たところクレタ人ではないようですな。クリテスを呼びましょうか?』
『おう、そうしてくれ』
オキテスは、傍らで作業をしている者に声をかける。
『おう、5番艇の建造の場にいるクリテスを呼んできてくれ』
『判りました』
間をおくことなく姿を見せるクリテス。
『おう、クリテス、頼みだ』
『はい、何でしょう?』
アヱネアスが声をかける。
『アイツらの話していることが解らん。お前が聞いて、解るか、ちょっと、そばで聞いてみろ』
『はい、判りました。やってみます』
クリテスは統領から指示を受けて、新艇をはさんで向かい側に立つ、作業をするふりをして、耳をを傾ける。
耳にする彼らの話声、彼は、デロスのアポロンの神殿で聞いたことがある言葉だと思い出した。
クリテスは、彼らに話しかけようか、かけないでおこうかと迷った。言葉を解することができない、声がけをあきらめた。彼は、場を離れ統領のもとへと戻ってくる、復命する。
『統領、彼らは、エルトリア人が使う言葉を使っています。話している内容については私にはわかりません。私にできるのは挨拶ぐらいです』
『そうか、解った。『海の民』ではないのだな。人数はどれくらいだ?』
『『海の民』ではないようです。身なりもそれなりに整っています。人数は15人くらいのようです』
『そうか、自由にさせておこう。聞かれたら、クリテス、お前はここにいて、要望があれば、相手をしてくれ』
『はい、判りました。私は向こうの新艇のそばにいます』
『遅くなったが、父上、昼めしを食べましょうや』
『おう、いいな!』
昼食の場を囲む、向かい合って食べる、簡単したての食事、場には話し合いの残心がこもっていた、
『久しぶりの二人でとる食事だな』
アンキセスがつぶやきながら酒杯を持った手を伸ばしてくる、酒を注ぐアヱネアス、二人は遠い昔に過ぎ去った日を想い出しながら、パンをうまそうに食した。食事を終えて、アヱネアスは浜へと歩を運ぶ。
新艇が日に日にカタチを整えて仕上がっていく。今日も来訪者が来ている、見慣れぬ風体の者が新艇に見入っている。
アヱネアスはいぶかしんだ。彼らはクレタの者ではない、話し合う言葉が聞きなれた言葉ではなかった。いぶかしみを深めるアヱネアス。
『おい、オキテス、あれを見ろ!アイツらの話す言葉が聞き取れない。誰か聞き取ることのできる者がいないか』
『風体を見たところクレタ人ではないようですな。クリテスを呼びましょうか?』
『おう、そうしてくれ』
オキテスは、傍らで作業をしている者に声をかける。
『おう、5番艇の建造の場にいるクリテスを呼んできてくれ』
『判りました』
間をおくことなく姿を見せるクリテス。
『おう、クリテス、頼みだ』
『はい、何でしょう?』
アヱネアスが声をかける。
『アイツらの話していることが解らん。お前が聞いて、解るか、ちょっと、そばで聞いてみろ』
『はい、判りました。やってみます』
クリテスは統領から指示を受けて、新艇をはさんで向かい側に立つ、作業をするふりをして、耳をを傾ける。
耳にする彼らの話声、彼は、デロスのアポロンの神殿で聞いたことがある言葉だと思い出した。
クリテスは、彼らに話しかけようか、かけないでおこうかと迷った。言葉を解することができない、声がけをあきらめた。彼は、場を離れ統領のもとへと戻ってくる、復命する。
『統領、彼らは、エルトリア人が使う言葉を使っています。話している内容については私にはわかりません。私にできるのは挨拶ぐらいです』
『そうか、解った。『海の民』ではないのだな。人数はどれくらいだ?』
『『海の民』ではないようです。身なりもそれなりに整っています。人数は15人くらいのようです』
『そうか、自由にさせておこう。聞かれたら、クリテス、お前はここにいて、要望があれば、相手をしてくれ』
『はい、判りました。私は向こうの新艇のそばにいます』
口を閉じたアンキセスとアヱネアスは、互いを受け入れ、寛容と決意の目を合わせた。
『父上。あなたの言われるところをよく理解しました。私の想いは、興した事業のことがあります。麦の収穫は終えましたが、秋の収穫のことがあります。また、諸事対処の資金のこともあります。いずれ、クレタについての見極めもつきます。決断は、いつでもできるようにと状態を整えています。全て手落ちなく進めています。決断のときにそなえて、情報の収集にも配慮しています。私は、これだけの一族を統べているのです。『はい!決断しました』『はい!船出します』と言って、軽々とことを決めて、この地を離れるわけにはいかないのです。解りますね!』
アヱネアスは、父アンキセスを瞬きもせず、真剣な目つきで話を継いでいく。
『私としての仕事、業務の進め方があるのです。その時が来れば話もします。今ここであなたと話したことはとても重大な事案なのです。今日ここで話し合ったことは父上も誰にも話さないでいただきたい。私も秘中の秘として、胸に抱いてます。時が到って公にしなければいけない時が来れば、一族の全ての者に私から伝えます。我らが戦火の中を身を危険にさらし、命を賭して、手を取り合って行動してきた者たちです。絶対におろそかにしてはならないのです。彼らには最大限の心配りをして当然なのです。我々が建国する、その想いを実行する、そのことに思いつくままのわがままは許されない。父上も十分に心していただきたい。父上!建国は我々一族が胸に抱いている望みです。おろそかにしてはならないのです。立つ以上は、いかなることがあっても、進むべく信不退なのです。父上も充分に心してもらいたい!解っていただけますね!』
アヱネアスは、心中に抱いている想いを父アンキセスを諭すような口調でありながら、力強く話を締めくくり伝えた。
『そうだわな!人の上に立つ者の心せねばならないことだ。アヱネアスよ、お前の言ったことがよく解った。俺も充分に心する、安心していてくれていい!お前と俺とは、心はひとつであり、同体である。心得た。心して諸事に対処する、約束する』
二人の話し合いは終わった。アンキセスは双肩に乗っていた荷を下ろす、くつろぐ風情である。
アヱネアスは、酒壺を手にとる、父が手にしている酒杯に酒をなみなみと注いだ。アンキセスは、酒杯を仰ぎあげ、杯の酒を一気に飲み干した。
アンキセスが酒杯をアヱネアスに手渡す、
『おう、アヱネアス!飲んでいい!』
アンキセスは、アヱネアスが手にしている酒杯に酒を注ぐ、二人の間に言葉はいらない、アヱネアスは、杯をもちあげ、父と目を合わせる、杯を口に運ぶ、アヱネアスもこれを一気に飲み干した。
ここに二人が胸に抱いていた懸念が霧消し、希望となる、新しい二人の旅たちであった。
『父上。あなたの言われるところをよく理解しました。私の想いは、興した事業のことがあります。麦の収穫は終えましたが、秋の収穫のことがあります。また、諸事対処の資金のこともあります。いずれ、クレタについての見極めもつきます。決断は、いつでもできるようにと状態を整えています。全て手落ちなく進めています。決断のときにそなえて、情報の収集にも配慮しています。私は、これだけの一族を統べているのです。『はい!決断しました』『はい!船出します』と言って、軽々とことを決めて、この地を離れるわけにはいかないのです。解りますね!』
アヱネアスは、父アンキセスを瞬きもせず、真剣な目つきで話を継いでいく。
『私としての仕事、業務の進め方があるのです。その時が来れば話もします。今ここであなたと話したことはとても重大な事案なのです。今日ここで話し合ったことは父上も誰にも話さないでいただきたい。私も秘中の秘として、胸に抱いてます。時が到って公にしなければいけない時が来れば、一族の全ての者に私から伝えます。我らが戦火の中を身を危険にさらし、命を賭して、手を取り合って行動してきた者たちです。絶対におろそかにしてはならないのです。彼らには最大限の心配りをして当然なのです。我々が建国する、その想いを実行する、そのことに思いつくままのわがままは許されない。父上も十分に心していただきたい。父上!建国は我々一族が胸に抱いている望みです。おろそかにしてはならないのです。立つ以上は、いかなることがあっても、進むべく信不退なのです。父上も充分に心してもらいたい!解っていただけますね!』
アヱネアスは、心中に抱いている想いを父アンキセスを諭すような口調でありながら、力強く話を締めくくり伝えた。
『そうだわな!人の上に立つ者の心せねばならないことだ。アヱネアスよ、お前の言ったことがよく解った。俺も充分に心する、安心していてくれていい!お前と俺とは、心はひとつであり、同体である。心得た。心して諸事に対処する、約束する』
二人の話し合いは終わった。アンキセスは双肩に乗っていた荷を下ろす、くつろぐ風情である。
アヱネアスは、酒壺を手にとる、父が手にしている酒杯に酒をなみなみと注いだ。アンキセスは、酒杯を仰ぎあげ、杯の酒を一気に飲み干した。
アンキセスが酒杯をアヱネアスに手渡す、
『おう、アヱネアス!飲んでいい!』
アンキセスは、アヱネアスが手にしている酒杯に酒を注ぐ、二人の間に言葉はいらない、アヱネアスは、杯をもちあげ、父と目を合わせる、杯を口に運ぶ、アヱネアスもこれを一気に飲み干した。
ここに二人が胸に抱いていた懸念が霧消し、希望となる、新しい二人の旅たちであった。
アヱネアスと父アンキセスとの話し合いは最終ラウンドにさしかかっている。父アンキセスの話は、アヱネアスの考えたように運ばれている。
アンキセスの目は輝きを増してきている、アヱネアスを鋭く見つめてくる。アヱネアスも父の勢いに気おされることなく、頭脳は冴えを見せていた。アヱネアスは、話の最終ラウンドは、父の出方にもよるが、身に備わっている知力で充分に対応できると自信を持っていた。
アヱネアスの施政とアンキセスの具申が絡み合う、アンキセスが口を開いた。
『アヱネアスよ、考えてみてくれ。果たしてクレタが建国の地なのかだ。俺が未来を見つめる目で見て、大いに疑義を持っている。気候はまずまずだ。土地の住民の情味はというとこれは申し分がない。クレタは島である、そこに住んでいる人間の数が建国の条件と見合わせると少ない。島の土を見たが、到底、農作物の収穫に関して、豊穣の大地とは言えない、農は国を建てていくうえでの大事である。そのようなわけで1000年2000年と栄える国を興すところではないと判断している。そこで俺は聞きたい。アヱネアス、お前が聴いた、ゼウス神殿の神託をだ。よろしかったら聞かせてほしい。これから話すことは、お前が建国を為すための大事な話し合いだ。そのように心得てほしい。聞かせてくれ』
『解った、ゼウスの神殿でのことを話す。ゼウス神殿での神託はない。有るのは神殿の神官のメッセージのみである。神官は、メッセージを俺に伝えた。神官は言う、『汝、見極めよ!良知は、すでに汝自身の身体にある。良知を為すのだ!』これだけです』
『ほう、そうか。なるほどな、言い得ている。その通りだ。アヱネアスよ、ここで俺の考えを伝えておきたい、いいかな、為すのはお前である。言わせてほしい』
彼は唇を酒で湿らせた。口を開く。
『アヱネアスよ、建国の地は、この地より西にあると考えている。もし、その日が来れば、西方に建国の地を探し求めよ。それが父として、息子アヱネアスに言い渡す。建国の地は、我らが住んだトロイではない、トロイから東方の地でもない。ポリュドーロスが命はてたトラキアでもなければギリシアの地でもない、マルマラの海の沿岸でもなければ、黒海に沿った地でもない。今述べた地は、お前が建国する土地ではない。お前が建国するにふさわしい地は、ここよりはるか西にあるへスペリアの地にあると考える。俺はその地に行ったことはない。大河の川筋が広がり、豊かな豊穣を運び来る、まだ文明が開ききってていない丘陵の地に定めればいい。去る遠い昔、ダルダノスが出生の地がふさわしいと考えている。これが俺の息子アヱネアスに申し送る言葉である』
アンキセスは、そのように言って口を堅く結んだ。
アンキセスの目は輝きを増してきている、アヱネアスを鋭く見つめてくる。アヱネアスも父の勢いに気おされることなく、頭脳は冴えを見せていた。アヱネアスは、話の最終ラウンドは、父の出方にもよるが、身に備わっている知力で充分に対応できると自信を持っていた。
アヱネアスの施政とアンキセスの具申が絡み合う、アンキセスが口を開いた。
『アヱネアスよ、考えてみてくれ。果たしてクレタが建国の地なのかだ。俺が未来を見つめる目で見て、大いに疑義を持っている。気候はまずまずだ。土地の住民の情味はというとこれは申し分がない。クレタは島である、そこに住んでいる人間の数が建国の条件と見合わせると少ない。島の土を見たが、到底、農作物の収穫に関して、豊穣の大地とは言えない、農は国を建てていくうえでの大事である。そのようなわけで1000年2000年と栄える国を興すところではないと判断している。そこで俺は聞きたい。アヱネアス、お前が聴いた、ゼウス神殿の神託をだ。よろしかったら聞かせてほしい。これから話すことは、お前が建国を為すための大事な話し合いだ。そのように心得てほしい。聞かせてくれ』
『解った、ゼウスの神殿でのことを話す。ゼウス神殿での神託はない。有るのは神殿の神官のメッセージのみである。神官は、メッセージを俺に伝えた。神官は言う、『汝、見極めよ!良知は、すでに汝自身の身体にある。良知を為すのだ!』これだけです』
『ほう、そうか。なるほどな、言い得ている。その通りだ。アヱネアスよ、ここで俺の考えを伝えておきたい、いいかな、為すのはお前である。言わせてほしい』
彼は唇を酒で湿らせた。口を開く。
『アヱネアスよ、建国の地は、この地より西にあると考えている。もし、その日が来れば、西方に建国の地を探し求めよ。それが父として、息子アヱネアスに言い渡す。建国の地は、我らが住んだトロイではない、トロイから東方の地でもない。ポリュドーロスが命はてたトラキアでもなければギリシアの地でもない、マルマラの海の沿岸でもなければ、黒海に沿った地でもない。今述べた地は、お前が建国する土地ではない。お前が建国するにふさわしい地は、ここよりはるか西にあるへスペリアの地にあると考える。俺はその地に行ったことはない。大河の川筋が広がり、豊かな豊穣を運び来る、まだ文明が開ききってていない丘陵の地に定めればいい。去る遠い昔、ダルダノスが出生の地がふさわしいと考えている。これが俺の息子アヱネアスに申し送る言葉である』
アンキセスは、そのように言って口を堅く結んだ。