<記事転載>
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日本で報道されない「大統領令」の驚くべき中身
堀田佳男の「オバマの通信簿」【28】
1月11日、オバマ大統領はある「大統領令」に署名した。内容は「知事評議会の設立(EO13528)」というもので、タイトルだけを見ると地味である。
文=堀田佳男
キーワード: アメリカ バラク・オバマ Size: ブックマーク毎日さまざまなニュースが各方面から発信されるが、大手メディアが拾わないものがある。ニュースの重要度が低いというわけではない。大手メディアが喫緊のニュースに時間とエネルギーをとられることで、抜け落ちるのだ。
1月11日、オバマ大統領はある「大統領令(Executive Order)」に署名した。私が日本の主要メディアを見聞きする限り、この大統領令を扱った報道機関はない。
ちなみに、大統領令というのは大統領の一存で国内外のコト・モノを動かせる特権的な行政権のことだ。民主主義の国であっても議会の立法過程や承認を経ずに、文字通り鶴の一声で決められる。
大統領令の内容によっては議会や市民団体からの反発を招くこともある。だが多くの場合、大統領令はそのまま施行される。日本では天皇の勅令に相当するが、首相に同様の権限は与えられていない。
たとえば、アメリカ政府は60年代のキューバ危機やベトナム戦争の最中に外国要人の暗殺を事実上認めていたが、フォード大統領は76年2月に大統領令を出して一切の暗殺禁止を命じた。こうした行政命令が大統領の判断だけで決められていく。
前置きが長くなった。
オバマ大統領が1月に署名した大統領令はオバマ政権発足以来39本目だった。内容は「知事評議会の設立(EO13528)」というもので、タイトルだけを見ると地味である。日本のメディアが拾わないわけである。けれども、知事評議会という名前からは想像もつかない内容が盛り込まれており、関係者に大きなインパクトを与えた。
実はこれまで戦争や紛争などに出動していた米軍を、大統領の監視下で国内でも自由に配置・出動できる決定をくだしたのだ。アメリカは連邦政府と州政府の境界がはっきりしており、多くの知事や市民は軍隊が州内の諸事に関与することに反対している。
日本でも、戦時下でない時に制服を着た自衛隊がそこかしこにいたら、威圧感を感じることだろう。昨夏の州知事会でもこの議案は却下されている。
これまで米軍は、対外的な脅威に対して出動する軍隊という見方が一般的だった。国内の治安については州兵や警察が対応するという不文律があった。南北戦争後にできた民警団法という法律は、まさしくその不文律を規定しており、陸軍や空軍を国内で使用することを違法とした。
それが今世紀に入ってから災害の復興支援やテロ対策といった分野で、国内における軍隊の出動が求められるようになってきた。しかし、アメリカ国内ではこれまで何年も議論されてきた内容で、大統領の一存で簡単に決められる問題ではない。
この分野に詳しい弁護士のマシュー・ハマンド氏は、
「軍隊と警察は明らかに違う役割を担っています。国内で軍隊が配備されると、警察との境界があいまいになって軍隊のシビリアンコントロールを崩壊させかねません。そうなると米軍の機能にもダメージを与えかねないし、軍隊そのものの任務に支障をきたしかねません」
と、今回の大統領令に異をとなえる。
実際に発令された「知事評議会の設立(EO13528)」を入手して読んでみた。
A4で3ページの長さで、5節に分かれている。冒頭には合衆国憲法のもとで保障された大統領の特権として発令する、とある。そして連邦政府と州政府の連携を深めるための大統領令であると冒頭に記されている。
連携を深めるという目的で、オバマ大統領はまず知事評議会という組織をつくった。自らが全米50州の中から10州の知事を選択し、国防長官や国土安全保障長官といった連邦政府高官も組織に含める。
つまり、知事評議会という組織を通して連邦政府と州政府による国防の一体化を図るつもりなのだ。二者を「シンクロ」させることが真意と受けとれる。その中の目玉が「米軍の国内配備」なのである。
大手メディアもほとんど報道していないが、アメリカの一般市民からは反対意見がブログやツイッターなどで数多くだされている。
その一つにはこうある。
「アメリカ大統領は米軍の最高司令官である。今回の大統領令はこれまでの大統領の権限の枠を超えることになりかねない。権力の乱用という点に市民はつねに気をつかわなくてはいけない」
別のブロガーも批判している。
「これほど重要な案件を大統領の一存だけで決めてしまうことは民主主義の冒とくです。大統領令は発令後すぐに効力を持たせられる点で貴重である一方、独善的な政治力を発揮することになりかねません。議会で法案として提出し、十分に議論を重ねてから決めるべきでしょう」
1月に発令された「知事評議会」の設立は、名前からは想像もつかない内容が含まれていた。市民が反対意見を出しても、この大統領令はそのまま生かされるだろう。
民主主義の世界であっても大統領令という特権によって、上からモノが決まってしまう現実を見せつけられた思いだ。
<ロイター転載終わり>
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<毎日新聞転載>
.中国:米大統領とダライ・ラマの会談に猛反発 批判を警戒
【北京・浦松丈二】オバマ米大統領とチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の会談が今月後半にも実現する見通しになったことに中国政府が猛反発している。米国による台湾への武器売却問題や米ネット検索最大手グーグルを巡る対立も重なる。中国政府は3月5日開幕の全国人民代表大会(全人代=国会)を前に、米国に対し異例の強い態度を示すことで、反米世論の矛先が政府の「弱腰」批判に転じないよう強く警戒している模様だ。
中国外務省によると、楊潔※(よう・けつち)外相が訪問先の独ミュンヘンで「ダライ・ラマは単なる宗教家ではなく、祖国(中国)分裂活動を続けてきた政治亡命者だ」と決めつけた上で「チベット問題の高度の敏感さを認識し、ダライ(ラマ)と接触しないよう米国に強く要求する」と強調した。中国外相が第三国で対米批判を展開するのは異例だ。
中国政府は連日、会談方針への「断固反対」を表明しているほか、会談実現なら報復措置を取ると予告し、歴代の米大統領が過去にダライ・ラマと会談した時とは比較にならない強い調子で警告を発している。
中国国内には08年3月のチベット自治区ラサで発生した暴動以降、民族暴動が相次いでおり、政府内にはダライ・ラマと外国指導者の会談は外交だけでなく、国内の安定に直結するとの危機感が高まっている。
中国政府は国内経済の持続的な回復のためにも対米関係の悪化を望んでいないが、1月12日にはグーグルが中国発のサーバー攻撃や中国政府の検閲廃止を求めて中国市場からの撤退を示唆。米国防総省が同29日に台湾への武器売却方針を発表し、中国が軍首脳の相互訪問停止など対抗措置を打ち出した。
中国政府にとって、民間企業であるグーグルの撤退やブッシュ前政権が決めた台湾への武器売却は止められなくても、ダライ・ラマとの会談は来月への延期や写真を公表させないなどの形で譲歩を米側から引き出せると判断している模様だ。
北京の外交関係者によると、昨年11月に訪中したオバマ大統領は中国指導部にダライ・ラマとの会談方針を通告。中国側は特に全人代前の会談は避けるよう強く求めたという。
中国外務省の馬朝旭報道局長は「オバマ大統領が訪中した際、中国指導者が(ダライ・ラマと大統領の会談について反対の)立場を詳しく説明した」と明言し、米側が譲歩しない場合は両国首脳の信頼関係を損なうと示唆している。
<毎日新聞転載終わり>
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<朝倉 慶氏の記事>
「そろそろ喧嘩を始める時、これから大混乱になって中国が弱ったときにアメリカは中国に対して牙を剥くでしょう。その時の役者はオバマかヒラリーかはわかりません。「肉を切らして骨を絶つ」、アメリカは自らの犠牲が伴うのはわかりきっています。戦うということは自らも傷つくのです。アメリカは覚悟を決めたのです。そして準備を始めました。勇ましいグーグルの姿はアメリカ国家そのものです。ついに、米中、生き残りをかけた覇権争いの幕は開いたのです。」
<転載終わり>
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またもやアメリカは中国に喧嘩を売りました。中国があれほどダライ・ラマ氏とアメリカの会談に反対しているにもかかわらず、アメリカは全く無視です。
グーグルから始まり、台湾へのアメリカからの武器輸出、そして今度はダライ・ラマ氏との会談と、3連発で喧嘩を売ってます。朝倉慶氏の予測通りに進んでいます。いずれ、アメリカと中国は雌雄を決するときが来ることでしょう。
●ロイター
http://president.jp.reuters.com/article/2010/02/05/59FBF0DC-1221-11DF-8D2E-14193F99CD51.php
●毎日新聞
http://mainichi.jp/select/world/news/20100207k0000m030035000c.html
●朝倉 慶氏記事
http://blog.goo.ne.jp/hitsuku/e/8335b1a3cabe1772c72cea3dc50694d6
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日本で報道されない「大統領令」の驚くべき中身
堀田佳男の「オバマの通信簿」【28】
1月11日、オバマ大統領はある「大統領令」に署名した。内容は「知事評議会の設立(EO13528)」というもので、タイトルだけを見ると地味である。
文=堀田佳男
キーワード: アメリカ バラク・オバマ Size: ブックマーク毎日さまざまなニュースが各方面から発信されるが、大手メディアが拾わないものがある。ニュースの重要度が低いというわけではない。大手メディアが喫緊のニュースに時間とエネルギーをとられることで、抜け落ちるのだ。
1月11日、オバマ大統領はある「大統領令(Executive Order)」に署名した。私が日本の主要メディアを見聞きする限り、この大統領令を扱った報道機関はない。
ちなみに、大統領令というのは大統領の一存で国内外のコト・モノを動かせる特権的な行政権のことだ。民主主義の国であっても議会の立法過程や承認を経ずに、文字通り鶴の一声で決められる。
大統領令の内容によっては議会や市民団体からの反発を招くこともある。だが多くの場合、大統領令はそのまま施行される。日本では天皇の勅令に相当するが、首相に同様の権限は与えられていない。
たとえば、アメリカ政府は60年代のキューバ危機やベトナム戦争の最中に外国要人の暗殺を事実上認めていたが、フォード大統領は76年2月に大統領令を出して一切の暗殺禁止を命じた。こうした行政命令が大統領の判断だけで決められていく。
前置きが長くなった。
オバマ大統領が1月に署名した大統領令はオバマ政権発足以来39本目だった。内容は「知事評議会の設立(EO13528)」というもので、タイトルだけを見ると地味である。日本のメディアが拾わないわけである。けれども、知事評議会という名前からは想像もつかない内容が盛り込まれており、関係者に大きなインパクトを与えた。
実はこれまで戦争や紛争などに出動していた米軍を、大統領の監視下で国内でも自由に配置・出動できる決定をくだしたのだ。アメリカは連邦政府と州政府の境界がはっきりしており、多くの知事や市民は軍隊が州内の諸事に関与することに反対している。
日本でも、戦時下でない時に制服を着た自衛隊がそこかしこにいたら、威圧感を感じることだろう。昨夏の州知事会でもこの議案は却下されている。
これまで米軍は、対外的な脅威に対して出動する軍隊という見方が一般的だった。国内の治安については州兵や警察が対応するという不文律があった。南北戦争後にできた民警団法という法律は、まさしくその不文律を規定しており、陸軍や空軍を国内で使用することを違法とした。
それが今世紀に入ってから災害の復興支援やテロ対策といった分野で、国内における軍隊の出動が求められるようになってきた。しかし、アメリカ国内ではこれまで何年も議論されてきた内容で、大統領の一存で簡単に決められる問題ではない。
この分野に詳しい弁護士のマシュー・ハマンド氏は、
「軍隊と警察は明らかに違う役割を担っています。国内で軍隊が配備されると、警察との境界があいまいになって軍隊のシビリアンコントロールを崩壊させかねません。そうなると米軍の機能にもダメージを与えかねないし、軍隊そのものの任務に支障をきたしかねません」
と、今回の大統領令に異をとなえる。
実際に発令された「知事評議会の設立(EO13528)」を入手して読んでみた。
A4で3ページの長さで、5節に分かれている。冒頭には合衆国憲法のもとで保障された大統領の特権として発令する、とある。そして連邦政府と州政府の連携を深めるための大統領令であると冒頭に記されている。
連携を深めるという目的で、オバマ大統領はまず知事評議会という組織をつくった。自らが全米50州の中から10州の知事を選択し、国防長官や国土安全保障長官といった連邦政府高官も組織に含める。
つまり、知事評議会という組織を通して連邦政府と州政府による国防の一体化を図るつもりなのだ。二者を「シンクロ」させることが真意と受けとれる。その中の目玉が「米軍の国内配備」なのである。
大手メディアもほとんど報道していないが、アメリカの一般市民からは反対意見がブログやツイッターなどで数多くだされている。
その一つにはこうある。
「アメリカ大統領は米軍の最高司令官である。今回の大統領令はこれまでの大統領の権限の枠を超えることになりかねない。権力の乱用という点に市民はつねに気をつかわなくてはいけない」
別のブロガーも批判している。
「これほど重要な案件を大統領の一存だけで決めてしまうことは民主主義の冒とくです。大統領令は発令後すぐに効力を持たせられる点で貴重である一方、独善的な政治力を発揮することになりかねません。議会で法案として提出し、十分に議論を重ねてから決めるべきでしょう」
1月に発令された「知事評議会」の設立は、名前からは想像もつかない内容が含まれていた。市民が反対意見を出しても、この大統領令はそのまま生かされるだろう。
民主主義の世界であっても大統領令という特権によって、上からモノが決まってしまう現実を見せつけられた思いだ。
<ロイター転載終わり>
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<毎日新聞転載>
.中国:米大統領とダライ・ラマの会談に猛反発 批判を警戒
【北京・浦松丈二】オバマ米大統領とチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の会談が今月後半にも実現する見通しになったことに中国政府が猛反発している。米国による台湾への武器売却問題や米ネット検索最大手グーグルを巡る対立も重なる。中国政府は3月5日開幕の全国人民代表大会(全人代=国会)を前に、米国に対し異例の強い態度を示すことで、反米世論の矛先が政府の「弱腰」批判に転じないよう強く警戒している模様だ。
中国外務省によると、楊潔※(よう・けつち)外相が訪問先の独ミュンヘンで「ダライ・ラマは単なる宗教家ではなく、祖国(中国)分裂活動を続けてきた政治亡命者だ」と決めつけた上で「チベット問題の高度の敏感さを認識し、ダライ(ラマ)と接触しないよう米国に強く要求する」と強調した。中国外相が第三国で対米批判を展開するのは異例だ。
中国政府は連日、会談方針への「断固反対」を表明しているほか、会談実現なら報復措置を取ると予告し、歴代の米大統領が過去にダライ・ラマと会談した時とは比較にならない強い調子で警告を発している。
中国国内には08年3月のチベット自治区ラサで発生した暴動以降、民族暴動が相次いでおり、政府内にはダライ・ラマと外国指導者の会談は外交だけでなく、国内の安定に直結するとの危機感が高まっている。
中国政府は国内経済の持続的な回復のためにも対米関係の悪化を望んでいないが、1月12日にはグーグルが中国発のサーバー攻撃や中国政府の検閲廃止を求めて中国市場からの撤退を示唆。米国防総省が同29日に台湾への武器売却方針を発表し、中国が軍首脳の相互訪問停止など対抗措置を打ち出した。
中国政府にとって、民間企業であるグーグルの撤退やブッシュ前政権が決めた台湾への武器売却は止められなくても、ダライ・ラマとの会談は来月への延期や写真を公表させないなどの形で譲歩を米側から引き出せると判断している模様だ。
北京の外交関係者によると、昨年11月に訪中したオバマ大統領は中国指導部にダライ・ラマとの会談方針を通告。中国側は特に全人代前の会談は避けるよう強く求めたという。
中国外務省の馬朝旭報道局長は「オバマ大統領が訪中した際、中国指導者が(ダライ・ラマと大統領の会談について反対の)立場を詳しく説明した」と明言し、米側が譲歩しない場合は両国首脳の信頼関係を損なうと示唆している。
<毎日新聞転載終わり>
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<朝倉 慶氏の記事>
「そろそろ喧嘩を始める時、これから大混乱になって中国が弱ったときにアメリカは中国に対して牙を剥くでしょう。その時の役者はオバマかヒラリーかはわかりません。「肉を切らして骨を絶つ」、アメリカは自らの犠牲が伴うのはわかりきっています。戦うということは自らも傷つくのです。アメリカは覚悟を決めたのです。そして準備を始めました。勇ましいグーグルの姿はアメリカ国家そのものです。ついに、米中、生き残りをかけた覇権争いの幕は開いたのです。」
<転載終わり>
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またもやアメリカは中国に喧嘩を売りました。中国があれほどダライ・ラマ氏とアメリカの会談に反対しているにもかかわらず、アメリカは全く無視です。
グーグルから始まり、台湾へのアメリカからの武器輸出、そして今度はダライ・ラマ氏との会談と、3連発で喧嘩を売ってます。朝倉慶氏の予測通りに進んでいます。いずれ、アメリカと中国は雌雄を決するときが来ることでしょう。
●ロイター
http://president.jp.reuters.com/article/2010/02/05/59FBF0DC-1221-11DF-8D2E-14193F99CD51.php
●毎日新聞
http://mainichi.jp/select/world/news/20100207k0000m030035000c.html
●朝倉 慶氏記事
http://blog.goo.ne.jp/hitsuku/e/8335b1a3cabe1772c72cea3dc50694d6