「2番目のキス」(Fever Pitch) (2005年、米、103分)
監督 ピーター・ファレリー、ボビー・ファレリー
ドリュー・バリモア、ジミー・ファロン
大好きなファレリー兄弟の近作である。
キャリア・ウーマンでそろそろ結婚をと考えているリンジー(ドリュー・バリモア)が出あったのが子供達には人気があるが垢抜けていない数学教師ベン(ジミー・ファロン)、いままでにないタイプということから仲良くなる。このプロセスをあまり丁寧にやらずに、あとからエピソードを引用したりする作りはうまい。
しかしベンには大きな問題があり、それは子供のころ伯父の影響で好きになりその後相続したボストン・レッドソックスのシーズン・シート、そしてレッドソックス最優先の生活・人生スケジュールというわけ。こっちが1番目で彼女とのキスは2番目というのが邦題の意味だろう。
いつものファレリー兄弟ほどは、ギャグ連発というわけではないが、そこはレッドソックスいのちの人たちがまた笑わせてくれる。ベンのシート周囲の人たちが、なじまないリンジーやリンジーのためにシートを売ろうかとするベンを責めたりするせりふがまた面白い。
中ほどで少したるみがあるものの、終盤は一気にクライマックスに持っていき、笑いと涙で見事である。もっともこれは例の86年間ワールドシリーズで優勝できなかったバンビーノの呪いが解ける劇的なシーズン、その実話プロセスをかぶせたからでもある。 これは撮影中の偶然とか!
原作は、ニック・ホーンビイ「ぼくのプレミア・ライフ(Fever Pitch) (新潮文庫)。いずれ読んでみよう。
邦題のように元来は、サッカーのイングランド・プレミアリーグの話で、アーセナル第一という主人公が出てくるそうだ。
1997年にイギリスですでに映画化されており何とコリン・ファース主演である。彼は少しぶきっちょなところがあるから合うかもしれない。見てみたい。
ところでこのピッチという言葉は日本でも最近サッカーの放送でよく使われるが、アメリカで野球場にも使われるのかどうかはわからない。手元の英和辞典はちょっと古いが、(大道商人の)店張り場というのが近いか。
ニック・ホーンビイはこれがデビュー作らしいが、他にも「ハイ・フィデリティ」、映画がヒットした「アバウト・ア・ボーイ」などがある。
ところでファレリー兄弟といえば「メリーに首ったけ」(1998)の脚本、監督がまず印象深い。ついでに言えばドリュー・バリモアとメリー役のキャメロン・ディアスは「チャーリーズ・エンジェル」つながりでもある。
実はこのメリー、人生の岐路に立った時に方角を決める重要なファクターとしてサンフランシスコ49ers (アメリカン・フットボール)が好きということが出てくる。今回の映画とまるで同じパターンではないのだが、ファレリー兄弟の2つの作品がこうということになると、それぞれの映画からのメッセージとは別のことも考えたくなる。
つまり、人生で何か決めなければならないとき、何も宗教、哲学、まじめな原則などによらなければならないということもないんじゃないか、どこかのチームが好きだからという選択でも許されるかもしれないよ、という彼らの寛容。
この映画には何人かカメオ出演があるらしい。
始球式にボストンゆかりの作家スティーヴン・キングというアナウンスがあったので見るとへんなおじさんが球を投げた。館内で見ていた外国人が声を出して笑っていたので本当かもしれないと思って調べたら、どうも本人らしい。
2004年シーズン終盤のレッドソックス快進撃はヤンキース戦7点差をひっくり返すところから始まるが、このヤンキース7点目が松井秀喜のホームランで、映画でも節目となるシーンでラジオ放送に出てくる。
ドリュー・バリモアのプロデュースはこれが最初ではないが、このひと才能ありそうである。
ボストン・フェンウェイ・パークでは8回終了後におきまりで「スウィート・キャロライン」(ニール・ダイヤモンド)が流れ観客が大合唱するらしく、映画でもそのシーンがある。
この曲調はぴったりだが、どういうわけでこうなったのだろうか。