「ステップフォード・ワイフ」(The Stepford Wives) (2004年、米、93分)
監督 フランク・オズ 原作 アイラ・レヴィン
ニコール・キッドマン、マシュー・ブロデリック、ベット・ミドラー、グレン・クローズ、クリストファー・ウォーケン、ロジャー・バート、ジョン・ロヴィッツ
アメリカのステレオタイプの勝ち組スノッブをステレオタイプで皮肉った映画ではある。
TV局のプロデューサーとして成功したニコール・キッドマンだが度が過ぎてとんでもない失敗となり失職、局では格下の夫は休養と治療のため子供と一緒に彼女をコネティカットのステップフォードというセレブが集う一帯・住宅地に連れて行く。そこでは妙にきれいなアメリカ的生活が営まれ、妻はみな絵にかいたように夫に従順で、映画でも裏には何かあると思わせる。
話はそれが実はどういうしかけであり、そのしかけをもとにアメリカ的なものが批評され、たいした形ではないがどう乗り越えられるかというプロセスを、細かい部分を楽しませながら描いていく。
ニコール・キッドマンはこの地域に入ってからは見え方が強すぎという感じがするが、夫役のマシュー・ブロデリックでバランスはうまくとれている。
むしろこの種のドラマの常としては脇役のうまさがキーであり、そこは先輩でちょっとこの世界に疑問をもっているベット・ミドラー、その夫のジョン・ロヴィッツ、ゲイ役のロジャー・バートは文句なしだし、女達を取り仕切るグレン・クローズは期待にたがわない。しかしやはりここは男社会の長クルストファー・ウォーケン、この人の適度なあくの強さといかがわしさの絶妙な表現、これ無しには成り立たない映画であろう。
クリストファー・ウォーケンはこのところ、「隣のリッチマン」(2004米、ベンスティラー、ジャック・ブラック他)の謎のホームレス、「ドミノ」(2005米)の妙に軽いTVプロデューサーなど、コミカルな役で好調のようで楽しく得がたい人である。
こういう世界を皮肉る道具としては、ブランドの名前が出てくる状況が面白い。バナナ・リパブリックのカーキはニコールの夫がここへ来て初めて着たそうで、ゲイのロジャーが議員に立候補するくだりではドルチェ&ガッバーナ、グッチ、ヴェルサーチが捨てられ演説にはブルックス・ブラザーズで登場、女達にあきれられる。
また男達が集うホールの内装はラルフ・ローレンで、シャーロック・ホームズ風と言われているから、以前から予想していたとおりこのブランドは英国コンプレックスを下敷きにしていることが確認できる。
このアイラ・レヴィンの原作は1975年にキャサリン・ロス主演で映画化されており、本作はリメイクになる。キャサリン・ロスは特にステップフォードに行ってからはこの役にマッチしそうで、近々DVDが出るそうだから見てみよう。
アイラ・レヴィンは「ローズマリーの赤ちゃん」などかなりの売れっ子作家で映画化されたものも多い。
噂によれば、ニコール・キッドマンは後にこの映画に出たのを後悔したらしい。オスカーも取り、このところ社会的なもの演劇的に難しいものに出ることが多くなっている彼女としては、何か薄っぺらな感があったのかもしれない。
しかしいいこともあったようで、共演したベット・ミドラーと仲良くなり、2度目の結婚パーティーで彼女に歌ってもらうことになったそうだ。