メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

フォードvsフェラーリ

2021-04-13 16:47:12 | 映画
フォードvsフェラーリ ( Ford v Ferrari、2019米、153分)
監督:ジェームズ・マンゴールド
マット・デイモン(キャロル・シェルビー)、クリスチャン・ベール(ケン・マイルズ)、カトリーナ・バルフ(モリー・マイルズ)
 
ある自動車評論家が新聞に書いていた記事から見る気になった。2時間半は長いが、期待以上であった。
第2次世界大戦後1960年代、若者たちを相手にした自動車商戦で苦境に立っていたフォード、イメージアップのためル・マン24時間に乗り出す。
 
大企業フォードらしく、レースでは強いが経営は危なくなっているフェラーリを取り込もうとするが、創業者エンツォ・フェラーリはフォードを醜い工場で作られた醜い車と酷評、初代の創業者フォードは立派だったが当時の2代目は、とこけにする。しかもフォードとの話は買収話が進んでいたフィアットに高く買わせるための策略だった。
 
このとき交渉に行ったのが後にクライスラーに移るリー・アイアコッカ。アイアコッカは米国人でただ一人勝ったことがある(車は英アストン・マーチン)キャロル・シェルビーを採用してレーシング・カーの開発を進めていく。
 
そこに、シェルビー同様ちょっと外れていたドライバーのケン・マイルズが加わり、フォードとの意見の相違で苦闘しながら、1966年のル・マン、ここからの1時間は演技、カメラ、音響と見るものを飽きさせない。

ゴールでの信じられない(有名な話らしいが)エピソードは、その時のフォードの体質を反映したもの。
シェルビーは一人だが、ケン・マイルズの妻(モリー)と息子の話が、うまく交錯している。
レースの細かいシーンは、詳しい人にはたまらないだろう。
 
シェルビーのマット・デイモンは、内に抱えた複雑な思いを極端に見せないところがさすがである。これで見ている人にはわかる。
 
ケン・マイルズのクリスチャン・ベール、ドライバーとしてはちょっと華奢だけれども、冒頭から最後まで想定内ではないものを出していくキャラクターを、終わってみて気がつく見事な演技だった。
 
ケンの妻モリーのカトリーナ・バルフはモデル出身と聞くとなるほどだが、きれいなだけでなく、しっとりしたケンのよき理解者をうまく演じていた。
 
タイトルからするとフェラーリについてもっと突っ込んで描いていると期待する人もいるだろうが、それはない。ル・マンで打ち負かす相手として、レース走行と隣のピットの騒ぎを見られるにとどまっている。
 
何か不機嫌そうなケン・マイルズ、こういうタイプは?と思っていたら、しばらくして思い出した。映画「ライトスタッフ」のチャック・イエーガー。
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする