「鴨川ホルモー」(2009年、113分)
監督:本木克英、原作:万城目学、脚本:経塚丸雄、音楽:周防義和
山田孝之、栗山千明、濱田岳、石田卓也、芦名星、斉藤祥太、斉藤慶太、荒川良々
万城目学の原作は読んでないが、この人の次作「鹿男あをによし」のTVドラマが面白かったのにつられて見た。
その期待は半分満たされ、半分は空振りというところ。
京都大学のサークルで、陰陽道というのだろうか、その世界の鬼を呼び出し、他の3校の同じようなサークルと鬼同士の戦いをする、という奇想天外、ふざけた世界で、ギャグのような掛け声、動作、CGを駆使した大勢の小さな鬼たちの合戦、それに仲間うちの嫉妬、軋轢など青春ものの定番テーマを加えてなんとかまとめてはいる。
ただ、二度ある大きな戦いの最初の方で、細かい面白さ、笑いは出尽くした感があって、後半はドラマとしての勢いが期待されるのだが、どうも息切れしてしまっている。鬼の戦いそのものをもう少しくわしくうまく描いてくれてもよかった、と思ったが、おそらく鬼がどうというよりは、それをけしかける人の「気」の問題なのだろう。
配役はまずまず。山田孝之は映画に出すぎの感もあってまたかと思ったが、軟弱なところと骨太なところが同居した主人公をうまく演じて、いい意味で意外。栗山千明は名前だけで演技を見ていなかった(何しろ「キル・ビル」を見ていない)が、こういう見てくれの悪い損な女の子を意味ある存在として演じきれる女優、というのに感心してしまった。
クラブの部長に荒川良々というのは、またまたワンパターン。本人の責任ではないけれど、先が読めてしまう配役は一考を要する。
レナウン娘のCMソングがいきなり出てくるところは、笑いの一つのポイント。これは一つの手である。ただ、音楽の効果としては、これほど笑う場面ではないが、「メゾン・ド・ヒミコ」(2005)で「また逢う日まで」が突然使われるシーンに比べると、スコーンと抜ける感じはもう一つ。
一方、「鹿男あをによし」は奈良と京都がからみ、また鬼ではなく、現実に存在する鹿を使っていることで、話に落ち着きと奥行きが生まれていた。またTVの連続ドラマであったから、小さい不思議な話を少しずつ味わうことで、結果的に、ドラマとしての息切れ感から逃れていたようだ。