ショスタコーヴィチ:交響曲第15番
シャルル・デュトワ指揮 NHK交響楽団
2013年11月30日 第1769回定期公演 NHKホール
2014年2月9日TV放送
ショスタコーヴィチ(1906-1971)最後の交響曲(1971)である。発表された当時から「ウイリアムテル序曲」をはじめ、有名な曲の断片が入っていて、それが何かを戯画化したものであるのか、諧謔なのか、いろいろ言われたものである。ほかの作品も含め、あまり食わず嫌いでもと、少しずつ聴き始めたときに、この曲の録音も一度聴いたが、そんなものかという印象しか残っていない。
ところが、こうしてたまたま聴いてみたら驚いた。高度に洗練された部分、それらはいろいろな楽器が選ばれて演奏しがいのあるソロ―パートを含んでおり、全体はそういう離散的な集合が進行していき、悲痛でもなく諦念でもないなんとも言えない静謐の中で終わる。
有名曲の断片は自らの音楽家としての半生を物語っているのか、ソ連という社会をカリカチュアしているのか、いろいろ取れるのだが、一面的ではない。第4楽章に出てくるのはワーグナー、「神々の黄昏」のジークフリート葬送行進曲、「トリスタンとイゾルデ」などだろうか。
オーケストラのいろいろなパートの人たちにとっても、演奏しがいのあるものだろうし、その様子がTVで見ると伝わってきて、そこにこっちが少し移入していくことによってこの曲を味わうことにもなる。
こういう批評性もある曲だからデュトワの指揮はいいだろうと勝手に期待したが、そのとおり。この人はデヴュー時のイメージを残しながら、無理なく円熟しているようだ。