ひらいて 綿矢りさ 著 新潮文庫
綿矢りさ(1984~ ) 2012年の作品
初期の「蹴りたい背中」からしばらくぶりの高校生の恋愛を描いた中編小説。
3年の女子生徒愛の一人称で書かれていて、彼女は「たとえ」という変わった名前の同級生男子を一方的に好きなのだが、ほとんど振り向かれない。あるきっかけで彼にはちがうクラスの美雪と数年前から知り合いで、男女のつきあいというより将来を話し合う友人という関係、しかし結びつきは強いということを愛は知ってしまう。
そこで愛は策を巡らし、美雪に近づき仲良くなる振りをして彼との仲を裂こうとするが、美雪を知るにつれ彼女と愛しあうことになってしまう。
この三角形は人工的ではあるけれど、そこは、前から知っているように、作者の優れて私の好きな文章で読ませ、説得力も感じさせる。
結末はちょっと混乱したところも感じられるのだが、登場人物たちの世代、生きることはこれから始まるということだろう。タイトルの「ひらいて」は象徴的に数回出てくるが、読み終わってみるとなかなかうまいネーミングだなと思う。
途中の会話の中に「春琴抄」(谷崎潤一郎)が出てくるけれど、私が好きな綿矢の文章、谷崎に通じるところがあると思っていたから、なるほど。
綿矢りさ(1984~ ) 2012年の作品
初期の「蹴りたい背中」からしばらくぶりの高校生の恋愛を描いた中編小説。
3年の女子生徒愛の一人称で書かれていて、彼女は「たとえ」という変わった名前の同級生男子を一方的に好きなのだが、ほとんど振り向かれない。あるきっかけで彼にはちがうクラスの美雪と数年前から知り合いで、男女のつきあいというより将来を話し合う友人という関係、しかし結びつきは強いということを愛は知ってしまう。
そこで愛は策を巡らし、美雪に近づき仲良くなる振りをして彼との仲を裂こうとするが、美雪を知るにつれ彼女と愛しあうことになってしまう。
この三角形は人工的ではあるけれど、そこは、前から知っているように、作者の優れて私の好きな文章で読ませ、説得力も感じさせる。
結末はちょっと混乱したところも感じられるのだが、登場人物たちの世代、生きることはこれから始まるということだろう。タイトルの「ひらいて」は象徴的に数回出てくるが、読み終わってみるとなかなかうまいネーミングだなと思う。
途中の会話の中に「春琴抄」(谷崎潤一郎)が出てくるけれど、私が好きな綿矢の文章、谷崎に通じるところがあると思っていたから、なるほど。