メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ジェーン・エア

2013-08-07 17:14:12 | 音楽一般

ジェーン・エア(Jane Eyre、2011英・米、120分)

監督:キャリー・ジョージ・フクナガ、原作:シャーロット・ブロンテ

ミア・ワシコウスカ(ジェーン・エア)、マイケル・ファスベンダー(ロチェスター)、ジェイミー・ベル(リバース)、ジュディ・デンチ(フェアファックス夫人)

 

原作者妹エミリーの「嵐が丘」ほど読む方がきりきり舞いはしないが、それでもより長編であり、やはり波乱万丈、これを2時間の映画にするのは簡単ではないだろう。もちろん何に焦点をあてるか、それにしたがって何を省略するかということになる。それでもこれほど有名なものであれば、思い切ってばっさりとはいかないと想像したが、ここではジェーンとロチェスター二人の交流、魂の会話とでもいうのだろうか、それに焦点をしぼり、幼いジェーンが長じて家庭教師になるまでや、一度ロチェスターと別れて最後に再会するまでなどの部分は思い切りがよすぎるほど飛ばされている。

 

それでも、二人の会話の背景を推察するのにそれほど困ることはない。それは私が幸いにも原作を読んでいる、しかもかなり歳をとってから、というわけでもないだろう。むしろ忘れてしまっていて、映画の進行とともに思い出したことが多い。

 

ストーリーは、女性が仕事を持ち自分で人生を切り開いていくことが困難な時代に、それを忍耐強く、しかも誇り高く行っていき、最後に幸福と魂の平安を得るというものである。

この映画では、主人公のそういう生き方が、女性に限らない普遍的なものにしっかり通じていて、後味のいいものになっている。

 

映画としての映像展開の魅力という点からは地味ではあるけれど、イギリスの田舎、草原、屋敷の室内はうまくとらえられている。特に室内の映像は逆光の多用で、フェルメール調というか、、、

 

最初の寄宿学校の場面もそう大がかりでないし、とにかく街の場面はばっさり切られていて、製作費もそうかかっていないだろうと思われる。

 

そして主演のミア・ワシコウスカ、一見地味な顔立ちの人だけれど、この人が演じてこそのこの映画、と見終わって思う。

ロチェスター役は、登場するときはこういうちょっと高慢な感じがいいのだろうが、最後はちょっと貧相になりすぎか。演技としては、特に二人のやりとりはいい。 

屋敷をしきる夫人、わざわざジュディ・デンチでなくてもという役だけれど、映画興行という観点からは、これでいいのだろう。そして確かにひきしまる。

 

監督は日系米国人らしい。


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オッフェンバック「ホフマン物語」(メトロポリタン)

2013-08-02 21:22:25 | 音楽一般

オッフェンバック:歌劇「ホフマン物語」

指揮:ジェームズ・レヴァイン、演出:バートレット・シャー

ジョセフ・カレーヤ(ホフマン)、ケイト・リンジー(ミューズ、二クラウス)、キャスリーン・キム(オランピア)、アンナ・ネトレプコ(ステラ、アントニア)、エカテリーナ・グバノヴァ(ジュリエッタ)、アラン・ヘルド(4人の悪役)

2009年12月19日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場  2013年6月WOWOW

 

このオペラ、ヨーロッパの音楽祭か何かの録画で見たことはあるかもしれないが、中身にあまり記憶はない。

 

いろいろな版があるらしいが、今回のものはコンパクトな方だろう。

詩人ホフマンが、理想の女性を求めてうまくいかず、これまでの遍歴、それを夢にみたのか、その3人とのストーリーが続き、最後にまた気がつき再生していくか、と見える、という話だろう。

 

最初と最後が酒場で、この演出、衣装、動きがいい。そして合唱の力が要求されるけれども、これはさすがメトで、「クラインザック」という歌? などなかなかである。

 

メトのホフマンではドミンゴが定番らしい。幕間のインタビューでもそのことが出てきてカレーヤは恐れ多いといっていたけれど、でもこういう悩める詩人であれば、むしろ今回のいカレーヤの方がこっちも感情移入できるかもしれない。出ずっぱりであるけれど、終わりまで聴かせる。

 

3人の女性の一番目機械人形のオランピアは、ほとんどファルセットで続く長い歌唱であるが、キムはすごい。この役、夜の女王、ツェルビネッタ(ナクソス)どころではない。近くナクソスに出る予定というのも頷ける。

 

2人目の歌手アントニアとホフマンの理想ステラのネトレプコはもちろん期待通りだが、彼女が言うとおり出番は意外に短い。

3人目の娼婦ジュリエッタ、この人が登場する場面で流れるのが有名な「ホフマンの舟歌」。役のグバノヴァはまずまず。

 

悪役4人を演ずるアラン・ヘルドはうまいし、もうけ役。

 

で、ここでファンになってしまったのはメゾ・ソプラノのケイト・リンジーで、最初はホフマンを好きなミューズであるが、その後の遍歴場面では二クラウスというホフマンの親友(男)に姿を変え、最後にまたミューズにもどり、詩人ホフマンの再生を手助けする。この人もほとんど出ずっぱりである。

 

ちょっと涼しい顔のきれいな人、これはもうこれから注目していきたいズボン役の佳人である。

調べたら昨年のエクサン・プロヴァンスでの「フィガロの結婚」でケルビーノをやっていて、このときとても感心したのだが、あの時のメイクのせいか、今回同じ人とは気づかなかった。名前も記憶していなかった。

 

さてジェームズ・レヴァインの指揮、腰と背中の治療でこのところ長く不在で、放送で見る機会も減ってきたが、これはその前、こういう作品、やはり彼が振るとちがう。リラックスして楽しめるというか、、、

 

そういえば、最近メトのオーケストラコンサートに復帰したという情報がある。いずれオペラのピットにも入るのだろうか。そこまでは無理だとしても、若手の指導とか、もう少し続けてほしいものである。

本当はあのルパージュ演出の「指輪」を全部振ってほしかったが、ともあれ「ワルキューレ」までやってくれたのはよかった。

 

 


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