オッフェンバック:歌劇「ホフマン物語」
指揮:ジェームズ・レヴァイン、演出:バートレット・シャー
ジョセフ・カレーヤ(ホフマン)、ケイト・リンジー(ミューズ、二クラウス)、キャスリーン・キム(オランピア)、アンナ・ネトレプコ(ステラ、アントニア)、エカテリーナ・グバノヴァ(ジュリエッタ)、アラン・ヘルド(4人の悪役)
2009年12月19日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場 2013年6月WOWOW
このオペラ、ヨーロッパの音楽祭か何かの録画で見たことはあるかもしれないが、中身にあまり記憶はない。
いろいろな版があるらしいが、今回のものはコンパクトな方だろう。
詩人ホフマンが、理想の女性を求めてうまくいかず、これまでの遍歴、それを夢にみたのか、その3人とのストーリーが続き、最後にまた気がつき再生していくか、と見える、という話だろう。
最初と最後が酒場で、この演出、衣装、動きがいい。そして合唱の力が要求されるけれども、これはさすがメトで、「クラインザック」という歌? などなかなかである。
メトのホフマンではドミンゴが定番らしい。幕間のインタビューでもそのことが出てきてカレーヤは恐れ多いといっていたけれど、でもこういう悩める詩人であれば、むしろ今回のいカレーヤの方がこっちも感情移入できるかもしれない。出ずっぱりであるけれど、終わりまで聴かせる。
3人の女性の一番目機械人形のオランピアは、ほとんどファルセットで続く長い歌唱であるが、キムはすごい。この役、夜の女王、ツェルビネッタ(ナクソス)どころではない。近くナクソスに出る予定というのも頷ける。
2人目の歌手アントニアとホフマンの理想ステラのネトレプコはもちろん期待通りだが、彼女が言うとおり出番は意外に短い。
3人目の娼婦ジュリエッタ、この人が登場する場面で流れるのが有名な「ホフマンの舟歌」。役のグバノヴァはまずまず。
悪役4人を演ずるアラン・ヘルドはうまいし、もうけ役。
で、ここでファンになってしまったのはメゾ・ソプラノのケイト・リンジーで、最初はホフマンを好きなミューズであるが、その後の遍歴場面では二クラウスというホフマンの親友(男)に姿を変え、最後にまたミューズにもどり、詩人ホフマンの再生を手助けする。この人もほとんど出ずっぱりである。
ちょっと涼しい顔のきれいな人、これはもうこれから注目していきたいズボン役の佳人である。
調べたら昨年のエクサン・プロヴァンスでの「フィガロの結婚」でケルビーノをやっていて、このときとても感心したのだが、あの時のメイクのせいか、今回同じ人とは気づかなかった。名前も記憶していなかった。
さてジェームズ・レヴァインの指揮、腰と背中の治療でこのところ長く不在で、放送で見る機会も減ってきたが、これはその前、こういう作品、やはり彼が振るとちがう。リラックスして楽しめるというか、、、
そういえば、最近メトのオーケストラコンサートに復帰したという情報がある。いずれオペラのピットにも入るのだろうか。そこまでは無理だとしても、若手の指導とか、もう少し続けてほしいものである。
本当はあのルパージュ演出の「指輪」を全部振ってほしかったが、ともあれ「ワルキューレ」までやってくれたのはよかった。