いつからだったっけ。
今日も
翔くんはその綺麗な顔を近づけてきて
唇にちゅっとキスをする。
ただの
幼馴染なのに。
翔くんとは、幼稚園からずっと一緒で幼馴染だった。
毎日のように幼稚園が終わるとどちらかの家に行って
母親たちは、飲み物を飲んだりお菓子を食べながら談笑し
子供たちは、家の中で遊んだり庭に出て遊んだりして過ごす。
そんな毎日だった。
毎回二人だけという訳ではなかったけど
家も近く、また親同士の気も合ったのだろう。
他の友達に比べて圧倒的に二人で遊ぶ機会が多かった。
そして、そのまま二人は同じ小学校に上がった。
その頃はお互いクラスの気の合う友達と遊ぶことが多く
学校では一緒にいる事はなかった。
ただ、昔から一緒にいたせいか、何となくお互いに安心感がある。
家も近所だったから帰りはどちらからともなく誘い一緒に帰った。
そして、一緒に帰った後は、お互い他の友達と約束してなかったり
習い事がなければどちらかの家で宿題をしたり一緒にゲームしたり
漫画を読んだりして過ごした。
そうこうしているうちに中学生になった。
二人の関係は相変わらずで学校ではお互い気の合う奴とつるみ
そして時々一緒に帰った。
一緒に帰った時は、用事がなければどちらかの家で過ごす。
多分、どちらの親も小さい時からずっと見てきたせいか
安心感があるのだろう。いつ行っても歓迎された。
翔くんは、端正な顔立ちをしていて頭も良く
昔からやたらモテる人だった。
そして、中学に上がるとますますそれは顕著になり
同級生だけでなく先輩や後輩からもよく告白されていた。
そして中学2年になると翔くんは同じクラスの
綺麗な顔立ちの女の子と付き合い始めた。
そしてその彼女とはテスト期間以外は毎日のように登下校を一緒に
するようになったので翔くんと一緒に帰ることはなくなった。
そして、その日は
期末テストの真っ只中だった。
草木の色が濃くなり、初夏を感じはじめた学期末テスト期間中のある日。
思いがけず翔くんに話しかけられそのまま一緒に帰ることになった。
以前は、毎日のように一緒に帰っていたのにこうして
並んで帰るのも久しぶりだな、なんて事を思いながら翔くんの顔を見る。
翔くんは、相変わらず端正な顔立ちをしていて
そして太陽の光が当たりキラキラしていてとても綺麗だった。
その姿をぼーっと眺める。
そして、その日はそのまま一緒にテスト勉強しようという事になり
翔くんの家に行く事になった。
部屋に入ると翔くんは慣れた手つきでテーブルを出してきて勉強道具を広げる。
その姿を、やっぱりぼんやりしながら眺めた。
「ふふっ手ぇ止まってる」
「だって、やる気出ないんだもん」
「ふふっ相変わらずだね~」
翔くんは、そう言って可笑しそうに笑う。
でも、そうは言っても明日も試験なのでそんなことは言ってられない。
仕方なく勉強道具を広げるとテスト勉強を始めた。
そして勉強を始めて1時間くらいがたった。
だんだんやる気も失せてきてシャープペンを持っている手が止まる。
「ふふっ飽きちゃった?」
「うん、飽きた」
「じゃ、ちょっと休憩しよっか」
それに気付いた翔くんが優しくそう聞いてきた。
シャープペンをポイッと手から離し、飽きたと答えると
やっぱり翔くんは優しい表情で休憩しようという。
こういうところが安心できるところなのかな? なんて思いながら
その端正な顔を見た。
「うん。15分たったら教えて。ちょっと寝る」
翔くんがどうする?って表情をしたから
そう言ってそのまま、うーんと伸びをすると
床に寝っ転がり目を閉じた。
「ふふっわかった。じゃあ、俺、ちょっと飲みもんとってきたりしてるから寝てて」
「うん、わかった」
翔くんはやっぱり優しくそう言ってきたので
目を閉じたままそう返事をした。
「智くん15分たったよ。おやつもとってきたよ~」
優しい翔くんの声で目を覚ます。
ちょっと目を閉じるだけと思っていたのに
本気で寝てしまっていたらしい。
「じゃあ、ヤだけど、やるか」
「ふふっ」
そう言って、よっこらせと起き上がった。
そして持ってきてくれたジュースを半分位飲んでコップを置いた。
翔くんは何も言わず優しい顔で見ている。
そして、そのままゆっくりと顔を近づけてきた。
「……?」
翔くんは至近距離で黙ったまま見つめる。
お互いの顔と顔がくっつきそうになる。
でも、翔くんのその視線から目を離す事ができない。
“え?”
そして、あっと思った
その瞬間。
唇に柔らかい感触を感じる。
それはほんの一瞬だった。
すぐに翔くんの顔が離れる。
「じゃ、再開しますか」
「……うん」
そう言って翔くんは、ふって笑いかけると
何事もなかったかのような顔をして勉強を再開した。
“今の ナニ?”
翔くんはやっぱり何事もなかったかのような顔をして勉強をしている。
一瞬、夢かと思う。
でも、唇にはまた柔らかな感触が残っていた。
でもいくら翔くんの顔を見ても
翔くんは特に気にする感じはなく平然としていた。
だから何も言えなくなってしまう。
仕方なく困惑する気持ちをなんとか抑え勉強を再開する。
でも、いくら勉強に集中しようとしても
頭の中にハテナマークがいっぱいで
とても集中できそうもない。
そんなこちらの思いをよそに
それは
その後も続いた。
[ここを開設して1000日超えました。その前にやってたファンブログ(閉鎖してます)が1500日。月日が経つのが早いです~]