yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

山 短編7 中 (幼馴染)

2014-04-13 15:07:10 | 短編




高校はわざと遠い学校を選んだ。


あの人に出会わないように。


偶然すれ違ったりすることがないように。





あの人は何一つ悪く


ないのに。










智くんとは、ただの幼馴染だった。


智くんもそう思っていただろうし


自分の中でもそうだと


ずっと思っていた。





でも


あの日。


あの日から、自分の中で智くんは


ただの幼馴染ではなくなった。











あの日。





その日は


あたたかい風がふんわりと吹いていて


夏はもうすぐそこまできているのだと


そう思わせてくれるような


そんな日だった。









その日は2年の1学期末テストの真っ最中だった。
偶然、テストを終え家に帰ろうと歩いている
智くんの姿を見つけた。
思わず駆け寄っていって声をかける。


最近は彼女と一緒に帰る事が多かったから
智くんとこうして一緒に帰るのなんて久しぶり。
そんなことを思いながら、一緒に帰る。


智くんは睫毛が長くて、鼻がすっとしていて
とても綺麗な顔をしている。
そう言えば、昔からその綺麗な顔を見るのが好きで
よく見つめていたっけ。
そんな事を思いながらその綺麗な横顔を見つめた。


そして一緒に並んで歩いているとなんだか自分でも
よくわからないけどホッとしていた。


何でだろう?


幼稚園の時からずっと一緒に過ごしてきたから安心感があるのか
それとも智くんというその存在にホッとするのか
よく、わからない。





智くんは幼稚園の頃からあまり大きな声で騒いだり
はしゃいだりするタイプではなかった。
いつも穏やかで、おっとりとした優しい人だった。


そしてそれは小学生になっても同じで
休み時間は外で遊ぶよりも気の合う友達と絵を書いたり
ぼーっと外を眺めたりしている事が好きな人だった。


かと言って運動が苦手という訳でもなく
むしろ運動神経は抜群で、そして美術面であったり
字も綺麗だったりと
結構何でも器用に出来てしまう人だった。
そんな智くんをどこかいつも尊敬していた。








そして、あの日。


その日はそのまま一緒に帰り、そしてテスト勉強をしようという事になった。
でもあまり勉強が好きではない智くんは一時間程ですぐに飽きてしまう。
その姿があまりにも分かりやすくて
そしてあまりにも智くんらしくて、つい笑ってしまう。


そして一旦休憩しようということになった。
智くんは、うーんと伸びをして床に寝っ転がった。
そして智くんはちょっと寝ると言って
目を閉じると、そのまま本当に寝てしまった。


その寝顔を見つめる。
その寝顔は昔から変わらず無垢で無防備で
可愛いらしい顔をしている。
しばらくその可愛らしい寝顔を見つめた。


そして15分がたった。
約束通り智くんを起こす。
智くんの寝起きの顔は、少しぼーっとしていて
何だかやっぱり可愛いらしい。
その寝起きの顔を見つめた。


智くんはおもむろに持ってきたジュースを飲む。
その、飲んでいる姿、顔、そして唇を見つめる。
智くんの小さくて形の良い可愛らしい唇。
その唇はぷるぷるしていて思わず触れたくなる。






そして


その瞬間。


自分でもなぜそんな事をしようと思ったか、よく分からない。
突然、その唇にキスしたら智くんはどんな反応を示すだろうと
ちょっとした好奇心と悪戯心が湧き出た。


びっくりして、目ぇ覚めるかな?


そんな事を思いながらその可愛らしい顔を見つめ
思わず笑ってしまいそうになる。
それをなんとか堪え顔を近づけていった。


何をされるか全く分かっていない智くんは
至近距離になっても不思議そうな顔をしたまま目をそらさない。
そしてそのままその綺麗な顔に顔を近づけていく。
そしてその唇に自分の唇をちゅっとおしあてた。


唇が離れると、智くんは目をまん丸にして見つめた。
その智くんのびっくりした反応があまりにも可愛らしくて
やっぱり笑ってしまいそうになる。
でもそれをなんとかこらえ何事もなかったような顔をして
すました顔でいた。


智くんは何も言わず呆然としたまま見つめている。
何か言いたげな顔をしていたけど
それに気づかないふりして、そして何でもない顔をして
智くんの反応を楽しんでいた。








その時は本当に


ちょっとした好奇心だった。






でも、次の日もテストを終え帰ろうとしている智くんを
見つけると一緒に帰りそしてまた一緒にテスト勉強を
しようということになる。


そして二人で勉強をしていたらまた智くんの
あのびっくりした可愛らしい顔を思い出してしまって
そしてつい隙を見てその唇にまたチュッとキスをした。


智くんはやっぱり目をまん丸にして驚いた顔をしている




それからはもう


自分でも、よくわからない。




二人で会うたびに隙を見てはその可愛らしい唇に
ちゅっとキスを繰り返す。


智くんはその度に戸惑った表情を浮かべたり
びっくりして、目がまん丸になったり
なにか言いたげな顔をして見つめてきたり
頬を赤く染めて俯いたり


その智くんの反応が見たくて
会うたびに隙を見てはちゅっとキスをした。


智くんはキスをするといつも何か言いたげな顔をして見つめる。
でも、それに気づかないふりして
そして何事もなかったような顔をして
すました顔でその反応を楽しんでいた。








そうこうしているうちに夏休みになった。
夏休みは毎年、お互い用事がない時は一緒に過ごしていた。
一緒に夏休みの宿題をしたりゲームをしたり。
そして各自思い思いに好きなことをして過ごしたり。




そして


この夏は


隙を見ては智くんに


キスをした。



智くんの唇はプルプルしていてとてもやわらかくて
キスをするたびにいつもドキドキした。








でも


ある日。




いつものように隙を見てキスをしようとしたら
智くんの手で塞がれてしまった。




「ダメ」

「……え?」


智くんは手で塞いだまま困った顔をしてダメと言う。
その言葉に呆然としながら見つめた。


「もう、ダメ」

「……」


そして智くんは手を外すと、まっすぐな視線でそう言う。
真剣なその顔に何も言えなくなる。


「ダメ なの?」

「うん、ダメ」


その時には自分の中ではもうするのが当然みたいな感じに
なっていたからびっくりして聞き返す。


「何 で?」

「だって、彼女さんに悪いでしょ」

「……え?」


そして何でって聞くと、智くんが彼女に悪いと言う。
その言葉に何も言えなくなってしまってただその顔を見つめた。


「まぁ、今更かもしれないけどさ」

「……」


智くんはそう言って自嘲気味にエヘヘって感じで笑う。
その顔を何も言えず見る。


「もう、しちゃダメってこと?」

「そう。彼女とだけすればいいでしょ?」


やっぱり信じられなくてもう一度確認するようにそう聞くと
智くんはそう言ってその綺麗な顔でにっこりと笑った。


「……」










その日から
智くんにキスをできなくなってしまった。
それは自分でもよくわからないけど
かなりのダメージだった。


最初はただの好奇心だったのに。








今は、その顔を見るとその唇に触れたくなる。
そして、その唇にキスをしたくなる。
何でそう思うのか自分でもよくわからない。




こちらの思いを知らない智くんは


妙にさっぱりとした無邪気な可愛らしい顔で


笑顔を向けてくる。


それが、今はちょっと辛い。






最初は


ただの好奇心だったハズなのに。