TATSURO SHIBUYA + ARCHITECTURE LANDSCAPE DESIGN STUDIO

アーキテクチュアは建築、ランドスケープは景観。風景を生かす建築環境デザインに取組んでいます。

VRによる空間評価

2011-01-19 11:06:28 | サステナブル建築
CAVEという3Dシミュレーション装置を活用して、VR(ヴァーチャルリアリティ)による空間評価の研究を行っています。

実際に建築や街並みを作ったり、変えたりするのは費用や時間がかかりますが、VR上であれば、比較的容易にそのシミュレーションが可能です。
例えば、街並みの景観整備や建築のエイジング(古風美)などの研究に活用できるのではないかと考えています。


白鷹の家」を体験している様子。
3次元CADでモデリングした建築空間をリアルスケール(実物大)で体験することができます。


床面もしっかりあるので、階段で2階にあがったりすることも可能です。

※写真がブレているように見えるのは、3D投影用に映像を出力しているためです。
3Dメガネをかけると、非常に臨場感のある空間体験が可能です。

大学では建築単体ではなく、周辺環境も含めた「サステナビリティ」の研究を行っています。
3次元CADやVR装置、景観シミュレーションといった先端的な技術を用いてはいますが、実際に街に出て調査(サーベイ)をしたり、模型を作ったり、自分の身体で体験しながら考え、作っていくことを信条としています。

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エコタウン桜井@安城市

2010-12-06 21:58:43 | サステナブル建築
エコタウン桜井の見学に安城市に行ってきました。
土地区画整理事業に伴って整備された5棟の環境共生型仮移転住宅。

仮移転住宅は、5年という期間限定の住まいですが、ここに住み生活した人をきっかけに、住み手の環境に対する意識改革につながるだけでなく、この住宅に関わった建築家や工務店には、大きな宣伝材料になるので、新しいプロジェクトが生まれるチャンスになります。
こうした取組みを行政が積極的に行い、環境志向型のライフスタイルを誘導していることに、共感を覚えました。

ただ、「私ならこうするのになぁ。」と思う点もいくつかありました。
例えば、エリア全体での外壁の素材や色などの統一感。そして、植栽計画。
もっともっとよくなる余地が残されているように感じました。。
同じようなプログラムで他の地域で行うような機会があれば、私も設計に取組んでみたいです。


エコタウン桜井の様子


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愛知県立芸術大学/時を経て魅力が増したエイジング建築の好例

2010-11-20 23:50:03 | サステナブル建築
東京藝大の元倉先生にお誘いいただいて、愛知県立芸術大学の見学会に参加してきました。
言わずもがな、吉村順三さんの代表作です。

キャンパスマスタープランは南北に軸をとり、広大な敷地の中にそれぞれがお互いに見通せるような適切な距離感を保ちつつ、のびやかに配置された建物群。

設計にも関わられた三沢浩さんの「痩せ型の建築」をつくろうとした。という解説は非常にわかりやすかったです。
ムダをそぎ落とし、非常に抑制の効いた機能的なデザイン。そして、自然光と身体性にあふれた室内環境は、とても心地よい落ち着く空間でした。

設計者の息づかいが聞こえるようなきめ細やかなディテール。
内装の木材の使い方。そして色使い。
全てがやさしく調和していて美しい。
竣工して約40年を経てもけっして古さを感じさせないような空間の力にとても感動しました。

ひとつひとつの校舎、ひとつひとつのディテールが全て教材になるようなキャンパス。
こんなキャンパスで学べる学生は非常に贅沢だなぁとつくづく感じました。

お天気にも恵まれ、にゃんこも気持ちよさそうに日向ぼっこしていました。

愛知芸大では、新校舎の建設が暫時進められていますが、こんなにもすばらしい既存の計画を全く無視したようなマスタープランとどうしようもない新校舎の建築には非常に落胆しました。

単純に経済的価値だけでは計れない社会的、文化的価値がこの建築にはあります。保存運動も行われており、構造的な問題や改修費用の捻出など、これからが正念場だと思います。

短期的な費用対効果で安易に建て替えをするのではなく、長期的価値観を持つこと。
「優れた建築を自分たちの子供の世代に残した!!」ということを誇れるような大学になってほしいと思いました。

こうした「残したくなるような魅力的で美しい建築」という価値観を建築に関わるひとりとして、これからも伝えていきたいと強く思いました。

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建築のシズル感/実寸で考えること

2010-10-27 23:04:34 | サステナブル建築
シズル感」とは、焼肉なんかで肉が焼ける時の「ジュー、ジュー」っていう擬音語の「sizzle」に由来することば。

もともとは、広告業界などで、ビールがおいしく見えるように水滴をつけたりするなど、映像表現において、「臨場感」や「鮮度」を誇張してわかりやすく伝えるための用語。
転じて、五感に訴えるような要素や、魅力的にみえるような要素など広義に使われています。

建築業界では、「素材感」とか「リアル」といったニュアンスに近いような気がします。
また、別の言葉でいうなら、実寸(一分の一)のことだと僕は思います。
実寸とは、実物と同じ縮尺でリアルに素材に触れて確かめることが出来る。
つまり、五感で感じ取れるウソのない寸法ということ。

設計図書の多くは、紙の大きさに合わせて住宅なら1/50や1/100、詳細図でも1/5や1/10といった縮尺で描かれますが、実寸を縮小することとは、細かい部分は省いて抽象化することになります。
もちろん、設計段階ですべて実寸大で描くことは理論上はできても、実際には現場での施工精度も伴うことなので、あえて「描かない」こともあります。

建築を作ることとは、そういうことも考慮して、最終的に「現場」が重要になると僕は考えています。なので、僕は、現場では、できるだけ実寸で考えることにしています。

例えば、壁紙や外壁の素材・色を決める際に、小さな端切れを見せられても、一般の人には到底わかりにくいと思います。
カーテンの色をお店でサンプル帳から選んで、実際につけてみたら、まったく印象が違うというのは、よくある話。

しかし、実寸だと模型や図面ではわからなかった空間の密度や光の具合といった五感を刺激する体験ができるので、ウソがつけない。
つまり、「良いところも悪いところも加味して、いかに良いところを伸ばして、悪いところをカバーするか。」といった「ポジティブな」思考をすることができるのです。

このほかにも、実物大のモックアップを作ることは、職人さんと設計者とのとてもよいコミュニケーション手段にもなります。
これまでの経験上、「いいものをつくろう」という志の高い現場では、モックアップを作ることで、より洗練されたディテールが生まれたり、コスト面でもVEが可能になったりすることが多いです。
僕はこうした「建築のシズル感」が大好きです。

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JIA25年賞/塔の家

2010-10-23 23:23:23 | サステナブル建築
久しぶりに外苑周辺を散策。
この1,2年の間で、新しい建物が建ったり、古い建物がリニューアルしており、東京という都市の新陳代謝の速度に驚かされる。

写真は、2007年にJIA25年賞を受賞した東孝光さん設計の「塔の家(1966)」

建築は基本的には土地から動かないものだが、姿かたちは日々少しずつ、微細に変化している。例えば、外壁の経年変化や汚れもそのひとつ。
その変わっているのか、変わっていないのかわからないぐらいのゆっくりとした変化は、まるで生命のそれと似ていて、とても興味がある。

建築の微細な変化も年を重ねるにつれて熟成され、あじわい深いものとなる。
ただ、それを「美しい」と感じる人もいれば、「きたない」と感じる人もいる。
これらを総称して「エイジング」と呼び、現在研究対象としている。

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Ken Yeang /Green Skyscraper/The Decorated Shed

2010-10-13 23:58:47 | サステナブル建築
SITEのNarrative Architectureが「The Duck」なら、Ken YeangのGreen Skyscraperは「The Decorated Shed」である。と、僕は思う。

景観という側面から見たとき、「緑」あるいは「空中の森」は、ある意味で建築自体とは独立した装飾のような役割を持つのではないか?という見立て。

超高層建築における「緑化」の技術は、「構造」の技術に比べるとクリティカルな問題とはならないと僕は思う。
つまり、「切り離された緑」=「装飾」と考えることが出来るのでは?と思う。

超高層建築における「緑」のあり方は、壁面緑化(いわゆる緑化パネル)のような類に加えて、もっと、自然の根源的な部分に近づけると思う。例えば、吹抜けやボイドを利用した「空気の流れ」のデザインも可能になるし、現にそうした建築が実現しつつある。
自然のイミテイトを超えた、もっとポジティブな自然な建築のあり方。
超高層建築における緑の多様性。そこに非常に可能性を感じる。

Ken Yeangは、マレーシアの建築家で、積極的に緑化を取り入れた高層建築のプロジェクトなど、グリーンビルディングあるいはサステナブル建築の先駆け的な建築家の一人。
An interview with architect Ken Yeang, on CNN's 'Just Imagin


※The Duck、The Decorated Shedってなんだべ?っていう方はRobert Venturiの「ラスベガス」と「建築の多様性と対立性」を参照ください。

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私の考えるサステナブル建築とは

2010-07-03 23:52:13 | サステナブル建築
最近の建築業界は「エコ技術」だけが先行していて、少し危機感を感じている。
私が考えるサステナブル建築とは、太陽光発電とか高断熱とか環境配慮技術に頼った建築のあり方ではない。もちろんエコ技術は大切だが、そこに人がどのように関わっていくかがより大切だと思っている。

例えば、人に愛されるような建築のあり方。快適で魅力的な建築は、人に長く使ってもらえるし、長く使うために、大切に扱ったり、不具合があれば修理をしてもらえる。
そのためには、住み手に適したスケールや材料(マテリアル)、空間のしつらえが必要で、そこには定量化しにくい部分(空間の質など)も含まれている。
つまり、エコ技術も大切だが、人が関わってはじめて建築も持続可能なのだと私は考えている。

極端な話、暑かったらエアコンをつけるのではなく、風が抜けるように、きちんと空気の通り道を考えて設計すればよいわけだし、明るくしたかったら自然採光が取れるように開口部を作ればよいのだ。(「白鷹の家」では、「断熱採光壁」という自然採光可能な断熱壁を開発しました。)
最近の住宅は、断熱性能(Q値)を意識するあまり、開口部が小さくて壁ばかりの住宅が多いのが残念だ。まるで、夏でも「ダウンジャケット」を着ているような住宅がどれだけ多いことか。。開口部を大きくとっても、窓ガラスをペア以上にするとか内側に断熱ブラインドを設置するなど、「重ね着」の発想さえすれば、いくらでも暖かくできるというのに。。


「持続可能な建築」とは、人が関わることで、住まい本来の意味や価値をうまく引きだしている建築のこと。
その結果としての「エコ」。

住まいの居住性能、エコ性能も人が住む楽しさ、住まいに人が関われる魅力を忘れてはいけないと思う。

住んで楽しい住まい。
建築まかせのエコではなく、そこに人が関われる「エコな住まい」を私は作っていきたい。




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屏風(ヒンプン)

2010-06-11 23:08:53 | サステナブル建築
沖縄の伝統的な民家に多く見られる「ヒンプン」。

魔除けのためのものとされていますが、目隠しだったり、風除けとしても機能している模様。
沖縄は台風の被害が少なくないですから、「ヒンプン」も地域に即した建築形式としてサステナブルなもののひとつと考えられます。


最近気になっているのが、伊礼さんのブログに出てくる「銘苅家」、国指定重要文化財@伊是名島。

1906年(明治39年)に建て替えられ、1979年(昭和54)に修復が行われた建築とのこと。
100年以上もの間、大きな戦火や自然災害を免れ、風雨に耐えたサステナブル建築。


王族の子孫が暮らした邸宅は、今見てもとてもカッコいい。
ギリギリまで低く高さを抑えた佇まい。深い庇。そしてヒンプン。
民家と呼ぶにはあまりにも立派な建築だが、ぜひ見に行きたいサステナブル建築のひとつです。


ヒンプンの写真は伊礼さんの住宅建設でおなじみのAiba StyleさんのHPより。

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環境性能におけるコミッショニング(性能検証)の重要性

2010-05-10 02:51:15 | サステナブル建築
コミッショニング(性能検証):設計段階で想定した建物の環境性能が、実際に確保されているかどうか実際に測定するなどして確かめること。
CASBEEなどの環境性能評価は、設計段階で想定される環境性能であり、実際にその性能が確保できているかは完全に担保できていない。
そこで、建物のZEB(Zero Energy Building)化が国際的な流れになるにつれて、今後は想定した環境性能の確実な確保とその検証が大切な役割を担うものと考えられる。


以下、日経BP社 ケンプラッツより。
「室内環境や省エネルギー性、建物の使いやすさの観点から、建物使用者が欲する建築設備の要求性能をまとめ、その実現のために、設計・施工・引き渡し時といった各段階を通し、建築関係者の判断や行為に対する助言・査閲・確認を行う。同時に、必要かつ十分な文書化、機能性能試験などを行い、受け渡される建築設備システムが適正で、運転保守が可能な状態であることを検証する。これら一連のプロセスをコミッショニング(過程)と呼ぶ。運用開始後も、建物の全使用期間にわたって適用可能で、新築でない建物も対象となりうる。 」

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研究にも活用したい汎用3Dソフト

2010-05-06 23:38:32 | サステナブル建築
3DマイホームデザイナーLS3byメガソフト
汎用性の高いいわゆる一般向けの3Dソフト。

これまでノーチェックだったのだが、調べてみるとプロ用の3dsMAXとか、Mayaなんかにはない機能が充実していることに驚いた。

その一つがエコ住宅対応機能

屋根を作ってその上にソーラーパネルを置くと、日射量や発電効率の計算をしてくれるという。
その他にも、バリアフリーの評価として色覚・白内障の疑似シミュレーションまでできてしまうのだから驚きだ。

はっきりいって、これほど生活者にすぐに役立つような実用本位のソフトはこれまで皆無だったと言っていい。

次世代省エネ基準とか、Q値なんていわれても素人にはわかりにくいのであって、電気代がどれだけかかるのかとか、収納量がどれだけあるのかといった住宅の実用本位の性能をシミュレイトできてしまうのには脱帽した。
生活者の視点で誰にでも使えそうなUIもいい。


もちろん汎用ソフトだけに、精度の問題はあるのかもしれないが、大まかな傾向や、総量を把握したり、比較するには十分すぎるのではないかと思う。

本格的に3Dとレンダリングをやりたい人は、スケッチアップとかこういったソフトを用いてラフな配置や形のスタディした後、これをたたき台にすればソフトとしてのすみ分けもできると思う。

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