TATSURO SHIBUYA + ARCHITECTURE LANDSCAPE DESIGN STUDIO

アーキテクチュアは建築、ランドスケープは景観。風景を生かす建築環境デザインに取組んでいます。

サステナブルということ

2009-03-19 20:48:05 | サステナブル建築
Sustainable(サステナブル):持続可能性について、改めて考えてみる。

直訳すれば、
1.「支持できる;維持できる。持ちこたえられる。耐えうる;立証できる。」
2.<開発などが>(環境を破壊せずに)持続可能な;<経済成長が>インフレのない。」
(by ジーニアス英和大辞典)

となっているが、これは1987年、国連の「環境と開発に関する世界委員会(ブルントランド委員会)」に提出された報告書『我ら共有の未来』で用いられたSustainable development:サステナブル・ディベロップメントを契機として一般に知られるようになった。

日本語表記に関していうと、「サステナブル」もしくは「サスティナブル」、あるいは「サステイナブル」と表記されるが、未だバラバラで統一されていない。(こういう言葉は、国語審議会で決めるのだろうか?)
ただ、日本建築学会の論文においては「サステナブル」とされることが多いようだ。

では、「持続可能な建築」についてはどうかというと・・・

「地域レベルおよび地球レベルでの生態系の収容力を維持しうる範囲内で、
(1)建築のライフサイクルを通しての省エネルギー・省資源・リサイクル・有害物質排出抑制を図り、
(2)その地域の気候・伝統・文化および周辺環境と調和しつつ、
(3)将来にわたって人間の生活の質を適度に維持あるいは向上させていくことができる建築物」
(日本建築学会 サステナブル・ビルディング小委員会:「サステナブル・ビルディング普及のための提言」,『建築雑誌 No.1445』pp63,1999)

とされており、一定の定義づけはなされているものの、一般にあまり浸透しているとは考えづらい。

持続可能な建築について研究している者の一人として、私もよく聞かれるのだか、その場合は、「端的に言って、長持ちする建築のこと。」という言い方をしている。

問題は言葉ではなく、いかに「長持ちさせているか」にあるのだけれど、入り口のところでつまづきやすい事が、この分野を分かりにくくしている要因の一つなのかもしれない。

さて、前置きが長くなったが、私が思うに、建築分野においては、「環境=設備」と捉えられることが多く、建築における持続可能性に関する様々な取組みも、これまで設備先行で進められてきた。
もちろん建築の居住環境を機械を使って制御し、快適な室内環境を作り出すことに異論はないのだが、どうしてもそれは、室内環境とか室外環境といった「閉じた」環境の中だけでの話となり、なんとなく「胡散臭さ」が漂うのだ。

私は、「環境」といったとき、狭義の意味(=設備環境)ではなく、周辺環境や地域の歴史、文化まで範囲をを広げ、「開く」ことで、広義の「環境」を意識する必要があるように思う。

つまり、建物を長持ちさせているのは、何も「建築の構造が丈夫だから」とか、「高断熱・高気密だから」といった、物理的な高耐久性だけでなく、「人々に愛されるから」とか、「愛着があるから」という人の主観(=歴史性、文化性)も考慮すべきなのではないかということだ。

なぜなら、愛着がある建物なら、人は「建物を大事に使う」し、人々に愛されているなら、「建物を長持ちさせよう」と努力するからである。

残念ながら、こうした社会的な側面からの建築の持続可能性についての研究はこれまで全く進んでいない。
20世紀は、大量生産・大量消費の時代といわれたが、社会が成熟した今、これまでのストックをいかに活かし、それらといかに上手に付合っていくかが重要になる。
その意味においても、建築の持続可能性について、社会的な「仕組みづくり」や「デザイン」からのアプローチが、これからもっと面白くなる余地があると私は思う。

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