鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

年頭のあいさつ ~今年の抱負~

2015-01-16 11:01:05 | 日記
鶴岡地区医師会会報誌「めでぃかるとる」に寄稿した、年頭のあいさつです。


年頭のあいさつ ~今年の抱負~

新年あけましておめでとうございます。皆様におかれましては、決意を新たに良き新年をお迎えのことと思います。

昨年は、医師会長として2期目の年でした。会長職としての仕事の他に、各地での講演や学会報告、論文の執筆など相変わらず多忙でしたが、役員、会員また職員の皆様の温かいご支援とご指導のおかげで、なんとか大過なく新年を迎えることができました。この場を借りて御礼申し上げます。

昨年、新たに取り組んだ課題は、地域医療連携室「ほたる」の将来構想と地域医療ビジョン検討委員会です。ともに、今後の地域の医療・介護を統括する新たな組織づくりを目指した大きなテーマです。新年に当たり、私の今年の抱負として述べさせて頂きます。

・地域医療連携室「ほたる」と将来構想

「ほたる」は、ご存知のように厚労省の在宅医療連携拠点事業を受託し設置した部署で、現在総務課内に地域医療連携室として3名を配置しています。活動は、訪問歯科診療を含む総合相談窓口、研修会・講演会などの企画運営、サービス事業所などへの出張勉強会のコーディネート、ホームページによる情報発信、サービス事業所や在宅医療の現状調査など地域の医療・介護に関わる多岐にわたる活動を行っています。また、行政、歯科医師会、薬剤師会との定期的なミーティング、さらには、庄内南部地域連携パス推進協議会の事務局、Net4Uやちょうかいネットの運用管理や関連する会議への出席、南庄内緩和ケア推進協議会への参加や在宅医療を考える会の企画・運営なども活動に含まれます。ほたるの活動は全国的にも先進事例として紹介され、数多くの視察を受けて入れていますし、講演依頼も多くなっています。

このように「ほたる」は、医師会の枠を超えて、地域を対象とした活動を行っているわけですが、「ほたる」の運営・経費(Net4Uも含む)を医師会が全て担うことが本来的なことなのか考えるべき時期ではないかと思っています。私は、「ほたる」を独立した組織とし、医師会、病院、診療所、事業所、行政などが応分に負担し、運営していくことが理想的な姿ではないかと考えています。

また、当地区には南庄内緩和ケア推進協議会(庄内プロジェクト)、庄内南部地域連携パス推進協議会という活発な活動を継続している二つの協議会があります。庄内プロジェクトの活動は、がん対策、緩和ケア普及という枠を超えて、在宅医療を含む地域全体の医療・介護をカバーする活動を行っています。また、庄内南部地域連携パス協議会は、現在、脳卒中、大腿骨近位部骨折、糖尿病、心筋硬塞、5大がんのパスを運用し、連携パスというツールを利用し地域での疾病管理に取り組んでいます。また、今後さらに増加する認知症に対しては、鶴岡市がおもにその対策を講じているわけですが、行政だけでの対策には限度があるように見受けられます。このように、複数の組織が緩和ケア、がん対策、在宅医療、疾患管理、医療介護連携、認知症などさまざまな切り口で、同じ目標に向けて取り組んでいるという複雑な状況があります。「ほたる」の活動も含め、既存の組織を整理し、地域全体を統括する法人組織を新たに設置できないのか、というのが私どもが抱いてきた長年の構想です。
昨年は、3-4回会合をもち、行政や病院側の意見も聴取しましたが、独立した後ほんとうに継続できるのか、資金をどう調達するのか、医師会としてブランドがなくなるのではないか、などの課題も多く出されました。しかし、課題は課題として受け止めつつ、まずは庄内プロジェクトと地域連携パス推進協議会を発展的に統合した協議会づくりからまずは始めてみようということで、現在検討を進めているところです。

・地域医療ビジョン検討委員会

一方で、国は地域医療構想(ビジョン)を策定し、病棟単位で都道府県に報告する制度を設け、更なる病床再編を進めようとしています。しかし、地域にはそれぞれに事情があり、行政主導による画一的な手法で複雑な関係性の上に成り立つ地域の医療資源を効率化できるのか疑問が多いと感じます。また、入院患者の多くが人生の終末期にさしかかる85歳以上になると予測されていますが、看取りを含めこのような方々を病院で診るのか、施設でみるのか、あるいは在宅なのか、患者・家族・住民の多様なニーズに適切に対応できる、医療・介護資源の最適化が求められています。

そのような背景のなか、松田保健所長を座長とし、病院長、老健施設管理医師、かかりつけ医などをメンバーとする話し合いの場を医師会内に設置し、これからの当地域の医療・介護のあるべき姿についての提言を頂きたく諮問したのが地域医療ビジョン検討委員会です。昨年は2回の会議を開催し、地域のリソースやニーズ調査の方法、看取りの基本的な考え方などを議論し、本年度末には、提言(答申)を頂くことになっています。議論のなかで、退院調整・支援、在宅医の紹介、地域包括支援センターとの連携などの機能を担う「ほたる」の発展型をイメージした「在宅診療コントロールセンター(仮称)」の設置という提案もでており、この委員会においても、地域全体を統括する組織の必要性が議論されています。

・ Change & Challenge

旧来の枠組みを壊し、新しい組織を再構築するのは容易なことではありません。しかも、今回の構想は医師会内部のことだけではなく、行政、病院などを含む地域全体に関わることです。抵抗が多いのも当たり前です。しかし、変えようとしなければ、何も変わりません。理想を掲げながら、理想へ向けて少しでも前進できたと思える年にしたい。変革にはかなりのエネルギーが必要ですが、今年は、“Change & Challenge”精神で努力してみたいと思っています。

今年一年の皆様のご健勝とご多幸を心より祈念して、年頭のご挨拶とさせていただきます。 

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