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読書傾向

2007年09月18日 | 雑感
村人に信任のあった村役人が突然豹変した。
持ち米を総て取り上げるという。村の長が体を張って阻止しようとすると槍を繰り出しいまにも突き刺す剣幕に、折れざるを得なかった。
村の長は、憤怒に震えながら、娘を嫁に貰ってくれぬかと考えていた自分の不明を恥じた。

時は幕末の徳川慶喜が大政奉還したころ、甲府城は官軍と闘うため、農民の貯蔵米を兵糧にすべく借り上げ始めた。
城からは、村役人が手早く集めたことを誉め、早々に米を城内に納めよと命令した。
ところが、村役人は納期を無視したため、改めて城から督促に来た。

そこで、村役人が次のようにいう。
社倉米は、領民たちのために備える貯蔵で城兵の兵糧に使うべき性質ではないと突き放した。
伝え聞いた村人たちは、ここではじめて村役人の真意を知った。
いずれ幕府からの専横を見越して、村にばらばらにある米を一箇所に集め、本来の役割を守るべく拒絶したのだった。
村役人は、幕府の直臣だが社倉を解放するには、城代の直接の命令が必要と建前を貫く。だが幕末の緊急時に、幕府直轄の甲府城に城代は留守をしていた。
後日、武力で押そうとするが村人たちが立ち上がった。
                「米の武士道」山本周五郎著

なんとも清々しい展開は"感動もの"だ。周五郎作品はこのような感動ものにあふれていて読ませる。涙もろくなったか、涙腺がゆるむのです・・・。
iinaがピックアップしたのは『ならぬ堪忍』新潮文庫の戦前の短編集13作の中の一篇です。

如くいうiinaは、若いころに氏の『ざぶ』を途中で放り投げ、読むのを避けていた著者だった。読み残し『ざぶ』を掘り起こし、読み直したら青春小説の感動巨編であることを遅れて知り、いまよく読む著者になっています。
一体、どこを毛嫌いしたか思い出せない・・・・?



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