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名奉行

2007年08月07日 | 歴史
矢部駿河守定謙やべするがのかみさだのりは、名奉行として三指ないし五指に入るという。
幕臣の記録や市中の噂話としてもその名裁判ぶりがいくつも残っている。

まず、裁判ではないが、大阪西町奉行時代に、買い占めた米を蔵に隠して炭だと答えた商人から、炭を蔵ごと買い付けたことがある。蔵の奥には大量の米が積まれていた。矢部は、この米を炭の代金で売ったので、大阪庶民は大助かりした。

江戸の南町奉行のとき、紺屋の女房と密通した町医者の裁きは、次のようである。
当時、夫は密通した二人を斬り殺してよかった。しかし、紺屋主人は、「妻を離縁するから、娶ってかまわぬ。だが、遠くへ引っ越せ」と約束の上で二人を許した。
ところが、町医者は引っ越すどころか、これ見よがしにに酒宴をひらき、紺屋を笑い者にした。
紺屋は、南町奉行に訴え出た。
矢部は、白洲で双方の言い分を聞き、町医者に引越しをしない理由をただすと、引っ越す銭がないという。
ならば、お上が引っ越し代を貸し与えようと裁定した。
町医者は、夕刻に数貫文を受け取り、大喜びで家に戻った。
すると、町役人が立っていて、家は封印されて入れない。
「そのほう、困窮していて鍋と釜の他に持ち物はない由。これを持ってどこへなりと立ち去れ」
他の家財は没収。こうして、相手を懲らしめた。

吉原の放火女郎事件は、
身売りされ女郎になった19歳の水呑百姓の娘の話。
父が大病で、年季を増やして五両を借りて送れといわれ、楼主に頼んだが断られた。
親思いの娘は困乱し、親に会いたい一心から妓楼を燃やせば、廓から出られると考え放火した。幸い火事にはならなかったが、娘は捕らえられた。
娘は、白洲では心得違いをして付け火したことを悔い、火あぶりを覚悟している。
放火未遂でも火罪であった。
「御定めの通り刑を行わねばならぬが、病の親に金五両を送りたいというのは、殊勝な心がけであるから、お上から五両の金を貸そう。これを、親元に送るがよい。」と申し渡した。
娘のふさがれていた胸が開いた。次いで自分の処罰を待った。
「その方の処刑は、お上より貸した金を完済せぬうちはできぬ。年に一朱ずつ返せ」というものであった。返済には80年かかる。
火あぶりという残虐な刑を行わず、親孝行を助ける。矢部の在任が長ければ、「大岡政談」のような「矢部政談」が出来上がったかも知れない。

矢部は、老中・との対立から南町奉行をわずか8ヶ月で退任させられた。
矢部は憤死し、天保の改革が失敗し水野忠邦らの失脚後に、冤罪が明らかとなり、矢部家の再興がなった。

[矢部定謙について]

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4 コメント

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江戸時代好きです (makorin)
2007-08-07 13:45:02
江戸時代には、今の役人と違い、気風のいい優れた人材がいたのですね。
実は私、結構江戸時代好きなんです。
好きがこうじて(?)、去年は江戸時代だけのパズル本を作ってしまいました。
また面白いエピソードがあったら教えてください。
(今日2回目のコメントです。しかも仕事の合間に)
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(makorin)さん へ (iina)
2007-08-09 17:53:06
歴史物は面白いですね。
iinaのカテゴリーの「歴史」にいろいろ綴りました。
小説等々から気に入った箇所を載せています。
もっとも小説と史実とを混同しがちなので注意する必要もあります。
ブログアドレスを置いていってくださいね。
盆休みは、呑んで映画にも行かなくっちゃ~
gooホムペが閉鎖になるため、一部のページを移さねばなりませぬ。
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ホムペ閉鎖?? (mako)
2007-08-10 12:09:23
すみません。
不慣れなもので、ブログアドレスのこともよくわかりませんでした。
これでいいのでしょうか?
ところで、gooのホムペが閉鎖っていうことは、iinaさんのHPに遊びにいけなくなるのですか?
引越しが済みましたら新しいアドレスを教えてくださいね。
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(makorin)さん へ (iina)
2007-08-10 17:51:46
雑誌の編集は、確かに季節を先取りしていますね。納得。
しかし、休みは充分に取ってください。
ゆとりが発想を豊かにしますよ。・・・たぶん・・・。
gooホムペの閉鎖に向けて、元々のホームページに頁を少しずつ移しています。
①②③まで移したので、旧と見比べてください・・・
といっても、中身はまったく同じですよ。
ただ改行も
タグを埋めねばならず、意外と眼が疲れます。
残り④⑤⑥⑦⑧⑨とプラス・アルファ分だけ頑張らねば。
http://iinad55.at.infoseek.co.jp/
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