06年6月3日 日産スタジアム
ナビスコ杯準々決勝 横浜2ー1磐田 9946人
Sブロック席 メーン2階サイドスタンドで観戦
| 逆転勝ちに喜び、回り続けるトリコ傘。でも2階は寂しい入りだった |
カウンターからの浮き球のタテパスが那須の裏に出る。那須は前田に競り負け、決定的シーンとなった。
しかし、前田のシュートは乾いた音をたてて右ポストにはね返される。ボールがこぼれたところには松田。助かった。
ところが、松田の体勢は十分ではなかった。背後に相手選手を抱え、かにばさみのように両足を揃えた間にボールが収まった。押し出すようにやっとの思いで達也に返す。それを成岡に奪われ決められた。
頭を抱える松田。体勢が悪かったとはいえ、ミスはミスだ。
W杯開幕まであと3日。日産スタジアムにやって来たのはたったの9946人。三ツ沢でも満員にならない。そのおかげで、選手の声や観客の声がよく聞こえる。ハーフタイムで選手が引き揚げるときには怒号が聞こえた。
涙の落選会見、そして傷心から練習を休んだ久保は、福岡戦、浦和戦と欠場し、この日ようやくベンチ入りしたが、スタメンではなかった。
マリノスのもうひとりの代表候補。私の中では現在の日本一のディフェンダーである松田は、最初の23人に選ばれなかった。田中誠が離脱しても、選ばれたのはナビスコ杯に向けて調整十分の松田ではなく、ハワイで休養中の茂庭だった。きっと落ち込んでいるだろうなと心配していた。この悔しさをこの試合で見せてくれ。そう祈りながら、背番号3を見つめ続けた。
松田は前半から積極的に前線に顔を出した。「いつの間に」と驚くシーンが何度があり、枠を外れたがフリーでヘディングシュートも放った。守備も失点シーン以外は完ぺきだった。
失点直後のマルケスの決定機も、ループが相手GKにパスする結果となり、最悪のムードで後半に入った。
後半開始直後に、あっさり最終ラインの裏にパスを通される。成岡のシュートが外れ失点は免れ、やれやれとした後だった。
松田が相手陣まで上がってパスを受けドリブル。左サイドのマルケスへ預け、そのまま前線へと走り続ける。マルケスから清水、再びマルケスと渡り、最後は清水へ戻る。エリア付近で相手に囲まれた清水は中央へパス。そこには松田がフリーでいた。慌てて戻るジュビロDF。しかしもう遅い。GKを冷静に見て、右足サイドキックでゴール右へ狙いすましたシュートが決まる。松田の気合いと執念が同点ゴールをもたらした。
松田はゴール後、ゴール裏のサポーターに対して手を合わせて頭を下げるポーズで謝った。そして、メーンスタンドに向かって、左の胸のエンブレムを叩いてガッツポーズをしてみせた。ディフェンダーがセットプレーじゃない流れからの自分のゴールで、自分のミスを帳消しにした。それも自分が起点となり、ゴールまでの流れをつくりだしてみせた。カッコイイぜ、マツ!
後半21分、動きの悪かった吉田に代えて久保が投入された。ゴール裏からひときわ大きな久保コールが沸き起こる。
「久保ゴ~ル 久保ゴ~ル 久保ゴ~ル タ ツ ヒ コ」
何度も何度もコールされる。気を落とすな。南アフリカへ向けて頑張れ。みんなそう願っている。体調さえ戻ってくれば、お前が日本のエースだと信じている。
しかし、久保の動きは目を見張るものではなかった。空中戦の競り合いにはまったく勝てていなかった。やっぱりもうひとつか。
同点となった後もマリノスは攻め続けた。特に清水。走り続けたねぇ。何度も相手ボールを奪ってチャンスをつくった。しかしマルケスの出来が良くないこともあり、ゴールには結びつかない。
残り5分となったところで、マイク登場。しかし、チャンスはやってこない。このまま引き分けだと、アウエーゴールで不利になる。
そして最後のチャンスかと思えるコーナーキックを得る。キッカーは平野。
平野の蹴ったボールは弧を描いてゴール前へ。一瞬、人混みのなかにボールは消え、そして次に見えたときにはネットが揺れた。入った! 誰だ? 河合か? スタジアム内の大型ビジョンに映し出されたのは久保の笑顔。久保だ。久保だよ。
私の席からはゴール前は人が一杯いて、久保の姿は見えなかった。シュートの瞬間もジュビロの選手に隠れて見えなかった。試合後のハイライト画面でもメーンスタンドからの映像しかなくよく分からない。久保のいたところに平野のボールが落ちてきたような気がしたが。
どんな形であれ、このゴールで吹っ切れて欲しい。
試合後のテレビインタビューで久保は結構しゃべったらしい。帰宅すると娘がそう言っていた。
今季から始まったゴール裏でのインタビューでは、「ゴールの感触は?」と聞かれ
「良かったです」とポツリ。スタンドは大爆笑。
松田も呼ばれて同じことを聞かれると
「良かったです」。いいぞ、マツ。
最後に(といっても質問は2つ)「サポーターの皆さんへひとこと」と聞かれ、松田は
「自分のミスで先制された。次の磐田も頑張るので応援に来て下さい」などと、ちょっと長めのコメント。
さて、期待の久保は
「応援よろしくお願いします」とこれまたポツリ。期待に応えてくれた。
漫画のストーリーのような、落選組二人の活躍で気合いの1勝。ヤマハでの試合はテレビ観戦となるが、マツの言うように「もう一度レッズとやる」まで絶対負けるな。
この日のマツは本当に凄かった。シュート3本もチーム最多。最高のリベロだ。感動!
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