34. 英語散策 (猪飼篤著 1991発行)
『 独創性については私は、「ろくでもない独創性を育てよう」と言いたい。
科学・技術・芸術の進歩に役立つ独創性も結構ですが、各個人の日常生活における「ろくでもない独創性」こそが生活を楽しくしてくれるのです。
各個人がもう少し人の使わない言葉を探して日常生活に独創性を取り込むべきだと思います。
独創性、国際性というと大変おおげさで、「湯川博士」、「福井博士」がどーんと目の前に現れて、日本では独創性や国際性のある人は13人ぐらいしかいないのではないかという気がしています。
しかし、creative、original という言葉はもう少し庶民的に考えてもよろしいでしょう。
creative writing、creative cookinng、creative painting、creative drinking などというレベルでまず自分の精神を解放していくことからはじめたいと思います。
そこで、「みんなと一緒」(to go in hand with everybody else)を避けることからはじめます。
1人でものごとに対する人間を、よい意味でも悪い意味でも、
a lone wolf (一匹狼 孤独を好む人)
a lone eagle (孤独なワシ 王者は孤独 Eagle fly alone)
a loner (孤独な人 一匹狼)
a maverick (所有者の焼印をいてない牛 独立した立場をとる知識人)
と呼び、lonerはスリなどの単独犯も意味します。
一人でやることは、to play a lone hand と言います。一か八か突進するのは、
to go for broke (やけっぱちでゆけ)
It's all or nothing. (のるかそるかだ)
It's a hit or miss (operation). (当たるか、それるか、やってみろ)です。
そういうやりかたをする enterprising (進取的、積極的)な人を a go-getter (敏腕家)と呼びます。
そして得られる勝利は、a single-handed victory (一人で勝ち得た勝利)ということになります。つまりfootballでの応援に言う。
Go, go, Duke, go get Duke! (それゆけ!デューク、やれゆけ!デューク)の精神です。(Dukeは私が留学した大学の名です、失礼)。
話がそれましたが、私は一度本格的な breain storming というのをやってみたいと思っています。
"Sounds interresting. Why don't you do it? It will be fun.
Anyway you ain't gonna die for doing it."
"Hey, let's do it! Let's have some fun out of it."
"Go ahead! You are gonna make it. Why not?" (gonna = going to)
「面白そうじゃないか。やってみたらいいじゃないか。きっと面白いぞ。とにかくやって死ぬわけじゃないんだから」
「よし、やってみようじゃないか! とにかく少し楽しもうぜ」
「よしやれ! きっと成功だ。成功しないわけがない」 』
『 時々、私の口をついて出るカントリーの名文句に "Now and then, there's a fool such as I am" (私のようなバカも時にはいるさ)というのがあります。
「利口だ、馬鹿だ」という表現はどこの国でも多いものです。英語で、「利口な」という言い方には、
bright : quick at learning (覚えるのが早い)
smartt : good or quick in thinking (よい考えがひらめく、考えが早い)
brilliant : very bright (非常に頭がよい、きれる)
clever : quick at learning and understanding (覚えも理解も早い)
sharp : quick and sensitive in thinking (考えが早く鋭い、まとをついている)
ingenious : haveing cleverness at making or inventing things
(ものを作ったり発明したりする才がある)
cunning : having cleverness in deceiving
(ずるがしこい、deceive はごまかすこと)
crafty : cleverly deceitful (人をだますのがうまい)
calculating : coldly planning (計算高い)
shrewd : clever in judgement (判断にすきがない)
wise : having good sense (知恵がある)
hardheaded : practical and thorough (実務的に周到である)(thorough:完全な)
intelligent : having powers of reasoning or understanding
(分析的で理解力が高い)(reason:推論する)
resourceful : able to find a way round difficulties
(難局に打ち勝ついろいろな手を知っている)
sage : wise as a result of long thinking and experience
(長年の知恵の蓄積がある知恵者)
omniscient : all-knowing, knowing everything
(ああ、何でも知っているあの人のこと)
sophisticated : having a knowledge of social life
(社会生活が洗練されている)
cool-headed : calm ; hard excite (落ち着いて沈着冷静) 』
『 私の知る限り、多くの大学院生は修士論文は日本語で書き、博士論文を英語で書きます。私が読んだ論文からいくつか気がついたことをあげると、まず日本語の論文の場合、
1. 日本語の中へ precipitation(落下、促進), incubation(抱卵、孵化),reaction(反応),cell membrane(細胞膜)などの英語がそのままの形で入っている。
2. ;(セミコロン)とか、:(コロン)のように本来日本語の句読点でないものが、勝手な使い方ではいっている。
この2点がいつも気になります。使うなら、;は "and",:は ”これらから網羅するぞ”と言い換えられる使い方をして下さい。
英語で書かれた論文はかなりレベルに差があります。一番大切なのは、
1. 文章は一回読んだだけでわかる(関係代名詞、挿入句はできるだけ避ける)
2. 結論、判断、意見などの記述には必ずその前後に理由が書いてある。
3. 一つの結論、判断、意見とそれを支持する理由を書いたら一つのパラグラフとする。
つまり文法的にやさしい構文で、一つ一つの文章が続いていく間の理屈の流れが備わっていればとてもわかりやすい、という案外あっけないことです。
英語で博士(または修士)論文を書くときは、「文章の流れとともに理屈が頭にはいる」というのが鉄則です。ですからせっかく勉強した英文法の大半が使えません。文法的に解読しなくてはならないような文章はむずかしいからです。
1. 関係代名詞はできるだけ使わない。
2. 自分のやった実験とその結果はすべて過去形で書く。
3. 分詞構文、独立不定詞句は格好いいけど使わない。
4. できるだけ受動態を避ける。
5. しゃれて使いたいと思った単語、句、熟語は使わない。
(例:in order to elucidate, lest……should, on the other hand, etc.
on the one hand がないのに on the other hand と書く人が多すぎます。 (elucidate:説明する))
そして、一文を書いたら、
1. 主語はあるか
2. 動詞はあるか
3. 動詞は主語の数と一致しているか
4. 時制は大丈夫か
5. 証拠もないのに勝手な結論を述べていないか
6. 三段論法として筋が通っているか
をチェックして下さい。何気なく読むと間違いもなく、正しいと思う文章も、理屈の上ではおかしいということもあります。もちろん日本語で書く時も十分気をつけて書いたほうがいいのです。 』
『 To read an English book you ought to know English, to learn English you ought to read English books.
英語の本を読むには英語を知らなくてはいけない。英語を知るには英語の本を読まなくてはいけない。
To get job you need experience, to get experience you need a job.
仕事を得るには経験がなくてはいけない。経験を積むには仕事につかなくてはならない。
If you are too busy to attend a meeting you must see your boss in person, if you have time to see your boss you are not busy enough.
(in person : 自分で)
仕事が忙しくて会議に出られないときは、君の上司に直接会いにゆかなくてはならない。しかし、もし上司に会う時間があれば君は忙しいとはいえない。 』
私(ブログの筆者)の口癖 ”何かをするには、(別の)何かをしなくてはならない、その何かをするには、(また別の)何かをしなくてはならない。”(第35回)