izumishのBody & Soul

~アータマばっかりでも、カーラダばっかりでも、ダ・メ・ヨ ね!~

「そんな日の雨傘に」はもっと涼しい時期に読む本であった

2010-08-29 17:30:29 | 日記・エッセイ・コラム
 書店で、表紙に惹かれて買った本、「そんな日の雨傘に」。
雨が降る中、傘をさしながら、椅子を2つ置いて水たまりを越えようとしている・・椅子を交互に移動させながら足を置いていけば、足を濡らさずに行けるというのか・・・楽観的というか、現実味に欠けるというか。
モノクロのその写真はひんやりと美しく、どこか滑稽でもあり、哀感もある。
暑さを忘れたくて、つい買ってしまった。

 著者のヴィルヘルム・ゲナツィーノはドイツの作家。これが初めての邦訳というから、まったく知らないのも無理はない(でしょ)。発行元が白水社とあるから、なんとなく信頼できそう。。

 「46歳、無職、つい最近彼女に捨てられた。どこにも居場所がない・・」という男が主人公。
 無職とはいえ、彼は「靴を試し履きしてそのレポートを書く」という生業を持ってはいる。靴男だ。
 奇妙なことに、この靴男、「自分の存在許可を出した覚えがないのにこの世にいる」という気分から逃れられない。。。。
 綿ぼこり的に毎日街を歩きながら、路上の様々な出来事を眺め、日々時々、その“面妖さ”を妄想する。
 これはそんな靴男のモノローグである。

 重く暗い気分に取り憑かれてはいるのだが、この靴男、どこかユーモアがあって(皮肉っぽいけど)滑稽なのだ。だから、読んでいてときおり「クスッ」と笑ってしまうこともある。
 ドイツの最高文学賞を受賞したとあるが、そっか~、ドイツって気質なんだなぁ~、という感じ。なんだか先が見えない展望のない男だが、決して破滅的ではないし、厭世的なわけでもない。そこが面白い。
 で、まあ、読み進むうちに文体にも慣れ(翻訳文って独特のクセがあるでしょ~?)、人名と関係もしっかり把握し、その世界に入り込みたいのではあるが、いかんせん、気候が違いすぎる!
 連日の猛暑の横浜で読むには、イマイチ、ひんやりした気分に没頭しきれないのである。
 本は最後まで読み切って、面白かったけど、これはもっと涼しくなってから(あるいは涼しい時期に)読むものだな~、というのが読後感。
 秋になったら(秋は来るのか??)、また読み返してみよう。   

「そんな日の雨傘に」ヴィルヘルム・ゲナツィーノ著/白水社Photo_2

コメント (2)
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