「自己啓発」は私を啓発しない、齊藤正明・著(マイナビ新書) は、自己啓発ビジネスの餌食になった人の悲惨な実体験をつづったものです。
著者は「マグロ船仕事術」で人気のセミナー講師です。しかし、そこに至るまで「人間関係に悩み、会社も業績不振、いっそ独立でもしようかと…自己啓発セミナー・教材に600万円以上をつぎ込んだ」とのこと。
是非ご一読いただきたいのですが、とにかく面白いです。精神が弱いというか情けないというか、よくぞここまで騙され続けたものだとあきれる・・・を通り越して尊敬してしまいます。
研修やセミナーを生業としている私にとっては「おもしろうてやがて悲しき講師哉」というのが正直な感想です。
さて、自己啓発セミナーには色々ありますが、そのほとんどは以下のようなストーリー構成になっています。
1.私(講師)は、以前は暗い性格で人前で話すことなど全くできなかった。
2.そのせいで、人よりも苦労をした(エピソードをいくつか紹介)。
3.そんなある日、〇〇というメソッドに出会った(〇〇は”成功哲学”系の何かなど)。
4.〇〇を実践し始めると徐々に道が開けてきた(エピソードをいくつか紹介)。
5.今日はみなさんに是非〇〇を知って、実践してほしい。必ず人生は好転します!
たしかに、明るく前向きになれば人生は良くなるかもしれませんし、そこまでいかなくても「元気」をもらうだけでも悪くはありません。
とはいえ、こうしたセミナーがもたらす気持ちの変化は一瞬で終わります。食べ物で言えば「お菓子」のようなものです。
ですからセミナーの受け過ぎは禁物です。この本にも書いてあるとおり、「現実である仕事場や家庭がニセモノの世界であり、セミナー会場が本当の世界だ」と思うようになってしまうかもしれません。
こうなると完全に「自己啓発セミナーの餌食」です。
私はこうしたセミナーが悪いと言っているのではありません。お菓子を食べたからといってすぐに体を壊すわけではないでしょう。ただし、アタマが「お菓子」しか受け付けなくなる前に止めることをお勧めします。
特に、やたらと縦に長いホームページの自己啓発セミナーはほとんどが「ジャンクフード」です。食べない方が無難です。
(人材育成社)