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案山子になってはいけない

2014年05月21日 | コンサルティング

写っているのが本当の人間だとしたら、ただならぬ事態です。これは、先日京都の亀岡市の田園を歩いていた時に見かけた案山子(かかし)の写真です。風に吹かれたのか、木にくくられているのに、今にも倒れそうな気配です。

何か事件を予感させるような雰囲気すらあります。

これまでにいろいろな種類の案山子を見てきましたが、こんなにも生々しくて、ちょっとお色気を感じさせる案山子を見たのは初めてでしたので、瞬間ぎょっとしました。 

5月は田植えの季節。既に各地で田植えが終わった頃だと思いますが、これからは稲の成長にあわせ案山子が登場する時期でもあります。  

言うもでもありませんが、案山子は鳥などの鳥獣を追い払うために田畑に人形を設置して、「人間がいる」ように見せかけるものです。視覚に訴えて鳥獣を追い払うわけですが、近年では爆音を用いて鳥獣を威嚇する装置や、肉食獣の匂いのするものを田畑の近くに設置して近づかないようにする方法も試みられているようです。

大切な田畑を守るために、農家の方々が苦心されている様子が伝わりますね。

それでは、これら鳥獣を追い払うための対策の効果は実際、どれくらいあるのでしょうか?鳥獣も案山子を見たり、爆音を聞くと、初めのうちは慌てて逃げ去るようですが、時間経過の中で無害なものとわかると、逃げることはなくなるのです。残念ながら、継続的な効果はあまりないということですね。

それにしても、鳥獣を追い払うためになぜ人型の案山子なのでしょうか?

案山子は、もともとは民間習俗の田の神の依代(山の神の権現)で、霊を祓う効用が期待されていたのです。日本だけでなく海外にも例があり、スイスには楽器のホルンを吹く人型の案山子もあるようです。

ところで、案山子には見かけだけは立派でも、ただ突っ立っているだけで何もしない(=無能な)人物を揶揄して使われることもあります。案山子は確かに物として田畑に存在はしているけれど、自ら鳥獣を駆逐するわけではなく、ただその場に存在しているだけだからです。  

「じんざい」という言葉を漢字で書くと通常は「人材」と書きますが、組織の中で何の貢献もせずに、ただそこに存在しているだけの人のことを当て字で「人在」と説明することもあります。

能力を発揮せずに、そこに存在しているだけという意味では案山子と同じだということですね。  

私たちは人在ではなく、常に組織で必要とされる人材であり続けたいと思いますが、それも口で言うほど簡単な事ではありません。案山子と揶揄されないように努力しなければなりませんね。

ところで、案山子と言えばシンガーソングライターのさだまさしさんの曲に「案山子」(1977年発表)があります。

 ♪「元気でいるか街には慣れたか 友達出来たか 寂しかないか お金はあるか 今度いつ帰る」♪ 私にとっては、懐かしい一曲です。皆さんはいかがでしょうか。

こちらの案山子は無能ではなく、故郷から届く暖かい便りですね。  

(人材育成社)