中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第一印象だけでは決められない

2014年09月10日 | コンサルティング

「○○さん、この点についてはどのように考えますか?」

「・・・・・」

研修の時に、受講者に考えや感想を尋ねる場面が多々あります。そのような時に、間髪入れずに理路整然と自分の考えや感想を言う受講者がいる一方で、瞬時には答えない受講者もいます。

しばらく待っても発言が出てこない時には、「考えがまとまっていないのかな、もしくは大勢の前で発言するのが嫌なのかな」と思って、内心、「話したいと思うことがないようであればいいですよ」と別の人を指名しようかなと考え始める頃になって、ようやくゆっくり話し始める受講者もいます。

そうして、とても丁寧な感想やしっかり考えた発言を聴くことができると、「さきほどの沈黙は考えをまとめていたんだな、急かしたり別の人を指名したりしなくて良かった」と心から思うのです。

このことを自分自身に置きかえてみると、常日頃考えている内容についての質問であれば即答できますが、そうでなければ、しばしの間沈黙し、考えを整理してから答えることはよくあります。

自分が質問などをした際、即答することが必ずしも良いことではないと分かっていても、つい答えを急かしてしまうことは誰にでもあると思います。

瞬時に発言するのがいいのか、ゆっくり考えてから発言するのがいいのか、時と場合によって変わるものだと思いますが、では採用試験の場合はどうなるのでしょうか。

採用側からすると、大勢の志願者から限られた人数を選考していく過程で、例えば個人面接や集団面接の中では、早く返答することが尊ばれるということは結構多いのではないでしょうか。

限定された時間の中で良い人材を、と考えるあまり、早く簡潔に答える人の方が第一印象が良くなることは否めないところだろうと思います。

しかし、そうなると熟考型の人にとっては不利になります。

先の例の受講者のように、質問に答えるまでに時間がかかると、採用側からすると「答えられないんだな」と判断されてしまうかもしれません。限られた時間の中では、それはそれで致し方がない部分もあるとは思いますが、一方では結果として大切なものを見落としてしまうことになっていないかとも思います。

かつて、私が就職試験に臨んだ頃は、大学に求人が来ているところにのみ採用試験に応募していたのに比べ、現在の方式では誰でもエントリーをすることができますから、大手の有名企業であればあるほど大勢の志願者が集まることになります。

そういう状況では、採用にスピードが求められるのはわかりますが、もしかしたら、じっくり考えて大きな成果を生み出す可能性を持った金の卵を逃しているのかもしれないと考えると、何となく腑に落ちないと感じるのも事実です。特に「人」に関しては第一印象だけでは決められないとあらためて感じています。

(人材育成社)