公私を問わず、「バタバタしていて・・・」という言葉を頻繁に使う人がいます。
私の経験上、この「バタバタしていて」が使われる場合、最後は「○○ができない」という否定型で締めくくられるケースが多いと思っています。
そしてこの「バタバタしていて・・」、結局はその間、物事を先延ばしにしているだけで、必要な判断・決断ができないということが多いようにも感じます。
話は変わりますが、この間、2015年上半期輸入車のトップはメルセデス・ベンツとの報道がありました。そこで、メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長の「なぜ、メルセデス・ベンツは選ばれるのか?」(サンマーク出版)を読みました。
そこでは、「部下に相談されたら、24時間ルールで答えるようにしている。言われてすぐやれば、忘れたり先延ばしにしたりせずにすんで一石二鳥。会社に24時間ルールを徹底とまではいかなくても、せめて48時間。丁寧でありながら、抜群に早い仕事の原理原則を共有したいと考えている」とありました。
メルセデス・ベンツ日本では、2011年3月11日の東日本大震災の時に、茨城県日立市にある新車整備工場が被災しましたが、週明けの14日には国土交通省に社長が自ら出かけ、整備地変更の許可を依頼し、愛知県豊橋市の工場でも整備をできる許可を得ることができたそうです。
後になって、国土交通省から「会社の代表の方が来てくださったからよかった。じかにいらしたのは御社くらいですが、問い合わせは殺到していますから」という状態だったという話を聞いたそうです。
私は、先週この日立の新車整備工場を訪問させていただく機会があり、整備をしている方から直接その時の話を伺いました。14日の週の半ばには豊橋に移動して整備を始めていたとのことでしたので、まさに即断・即決し即行動に移した結果による功績だったと言えると思います。
このことを上野社長は、「今できることを見極め、今すぐやる」という仕事のやり方をしてきた結果だとも本の中で紹介しています。
同じように、この即断・即決を徹底していたのは、あの田中角栄元総理大臣です。先日「NHK 戦後70年ニッポンの象徴」という番組の中で紹介されていましたが、印象に残ったのが「断るならすぐに断れ」という言葉です。
かつて、多い日には200人もの人が目白の邸宅を陳情に訪れたそうですが、田中氏は全員に直接会い、その場で①すぐやる。②今はできないけれど、来年やる。③考え直せ。のいずれかの道筋を伝えたそうです。
我々は何か物事を断る場合には、つい先延ばしにしてしまいがちですが、田中氏はたとえ、できない場合であっても決して先延ばしせずに、その場ではっきり「できない」と断ったということで、この中途半端にせずはっきりした姿勢が、かえって信頼を得ることにつながっていたようにも思えます。
「多くの政治家は「やるやる」と言ってやらないけれど、田中は違った」と番組では紹介していました。
政治家としては功罪いろいろあった田中角栄元総理ですが、先の上野金太郎社長とも共通するのは、「物事を先延ばしにしない、すぐに判断する」ということだと思います。
「バタバタしていて・・・○○できない」とつい言ってしまう人は、「判断や行動を先延ばしにしているだけではないか?」と、一度自らに問いかけてみる必要があるのかもしれません。
(冒頭の写真はメルセデス・ベンツ コネクションのHPより)
(人材育成社)