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日本のロボット産業が立ち上がるために

2015年10月25日 | コンサルティング

日本はロボット技術で世界をリードする「ロボット先進国」であると言われています。1980年の「ロボット普及元年」(ロボット工業会による命名)あたりから自動車や家電の生産ラインでは溶接ロボット、塗装ロボットのように産業用ロボットが急速に普及してきました。

その後いくつかの盛り上がりはありましたが、ここ数年のロボット産業に対する国や企業の力の入れようは特筆すべきものがあります。もはや単なるブームなどではなく、ひとつの大きな産業が形成されはじめているように思います。

最近のロボットに関するキーワードは「知能化」です。機械としてのロボットに人工知能(AI)を組み合わせて、より高度な仕事ができる賢いロボットに注目が集まっています。ソフトバンクのPepperの発売や将棋でAIがプロ棋士に勝ったこと、そして以前このブログでも書いた2045年のシンギュラリティ(技術的特異点)など、話題には事欠きません。

では、日本が知能化分野でも世界をリードしているかと言うと、必ずしもそうではないようです。AIにおいては海外と横一線かやや遅れをとっているようです。たとえば、アメリカではGoogleが資金力にものを言わせてロボットやAIに関する企業を片っ端から(?)買い漁っています。また、IBMやGE、インテルなどが2014年に設立したIIC(Industrial Internet Consortium)はロボット技術のスタンダード(世界標準)を押さえようとしています。

もちろん日本も官民を挙げての活動が本格化しています。特に通商産業省は2015年1月に発表した「ロボット新戦略」の中で、今後のアクションプラン(五カ年計画)を示しています。

こうした様々な取組の中で、私は次の2つに注目しています。

ひとつは、OpenEL (Open Embedded Library)です。OpenELとは、「ロボットおよび組込みソフトウェア向けのオープンなライブラリ」です。ライブラリとはソフトウェアのパーツのようなもので、これを使うことでロボットの目や耳、手足などにあたるセンサやモータを簡単に制御することができます。OpenELは「組込みシステム技術協会(JASA)」が中心となって仕様を作り、世界的な標準化団体であるOMG (Object Management Group)に国際標準として採用するよう提案しています。

産業用ロボットの技術では他国に比べて一日の長がある日本こそ、ロボットの「神経系統」をつかさどるソフトウェア分野にもっと力を入れるべきだと思います。

もう一つは、ロボット事業におけるSIerです。SIerとはハードとソフトを組み合わせて、ニーズに合ったシステムを構築する業者です。ロボットが高度化すればするほど、実際の仕事で使うためには複雑な問題が生じてきます。ロボットを導入するにあたって、どのようなシステムを構築し運用していけばよいのか、コストパフォーマンスはどうか、従業員への教育はどうするべきか等々・・・。こうした問題に答える専門家(SIer)が必要になります。

ロボット産業を確立するためには、独立したサービス事業者としてのSIerを早急に育成しなければなりません。

どのような産業であっても、人を育てるという基本的な営みがその根本にあるからです。

(人材育成社)

通商産業省「ロボット新戦略」 www.meti.go.jp/press/2014/01/20150123004/20150123004b.pdf

ロボットおよび組込みソフトウェア向けのオープンなライブラリOpenEL(組込みシステム技術協会 理事、アップウィンドテクノロジー・インコーポレイテッド 代表取締役社長 中村 憲一) » Robopedia

シンギュラリティ2045年 - 人材育成社のブログ