グローバル化時代のビジネスパーソンに必要な知識といえば、経営戦略からExcelの関数に至るまで、非常に幅広いものがあります。さらに、最近は「教養」が新たに加わってきています。そして教養とは、単に即効性のある道具ではなく、もっと「広く深い知識」だと言われています。
ビジネス雑誌の教養に関する特集を読むと、よく紹介されるのが次のような「教養のないビジネスパーソン」の例です。
「・・・先日、イギリスに出張した時、商談の後にパーティがあったんだが、先方の会社の偉い人に日本の浮世絵についていろいろ聞かれて、大いに困ったよ。」
グローバル化が進むビジネス環境においては、英語が話せるだけでは失格で、自国(日本)の文化や歴史についてそれなりに語ることが必要だというわけです。
こうしたトレンドに敏感な社員教育業界は「ビジネス教養」を研修メニューに付け加えたり、通信教育の講座にしたりと、さっそく商売のネタにしています。以下は、ある会社が企業向けに提供しているコンテンツの一部です。
(1)「源氏物語」、「吾輩は猫である」、「種の起源」「相対性理論」を読む。(2)「歌舞伎」、「落語」、「浄瑠璃」を観る。(3)「茶道」、「いけばな」を体験する。(4)「オーケストラ」、「シェークスピア」を鑑賞する。
いかがでしょうか、どれかひとつでも「語る」ことができるものがあるでしょうか。ちなみに私(平野)はありません。
私は今までに数回ですが、海外の取引先と商談が終わった後、その会社の経営者(役員クラス)が開いてくれたパーティに出たことがあります。いずれも、名の知れた大企業でした。
そこで先方の偉い人たちと話した内容といえば、ここで書くに値しない本当にくだらないことばかりでした。強いて「教養的」な話題としては、メル・ブルックスの映画のギャグについてとか、昔のSF(スミス、ブラウン、クラーク等など)のどれが一番面白かったか、といったことでした。
私は、ビジネスパーソンが教養を身につけることについては、大賛成です。しかし、教養そのものはグローバルなビジネスでは、それほど役には立たないと思います。
では、どんな話題について話せばよいのでしょう。
もしあなたが十代の頃に夢中になったことがあれば、それを話題にしてみることをお勧めします。
英語なんてカタコトで大丈夫です。相手がアメリカ人でもイギリス人でも中国人でもインド人でも、あなたと同じ世代ならきっと通じ合う話題があります。
「ビジネス教養」は時間ができたら始めてみてください。
(人材育成社)