マーケットリサーチの手法として最も一般的なものはアンケート調査でしょう。レストランなどで料理の味や店の雰囲気、従業員のサービスぶりを記入してもらうアンケート用紙も目にすることがあります。
では、そうした「顧客の声」であるアンケート調査は本当に役に立つのでしょうか。
実は意外なほど「役に立たない」と断言する人は多いのです。
その理由は「お客は自分の欲しいモノをきちんと答えることができないからだ」ということに尽きます。
だから、「お客の言うことをいちいち真に受けて商品を変えていったら、最後は誰からも支持されないものになってしまう」というわけです。
こうしたプロダクトアウトの発想は、製造業をはじめサービス業にも散見されます。
このブログでも一度紹介しましたが、スティーブ・ジョブズが1984年にマッキントッシュ(Mac)を発売したときに、新聞記者から「市場調査をしたのか?」と聞かれて、「じゃあ、グラハム・ベルは電話を発明する前に市場調査をしたのかい?」と答えたという有名な話があります。
一方、プロダクトアウトについては「良いものと悪いものがある」という主張もよく聞きます。「悪い」のは顧客のニーズを無視することであって、「良い」プロダクトアウトはニーズを踏まえた上で先取りをすることだ、というわけです。
確かにもっともらしい言説ですが、私は賛成しません。
良いも悪いもなく、結果として売れたかどうかです。マーケットインについても同じことです。「どちらが売れるのか」わかるならば苦労はしません。
ただし、向き不向きはあると思います。
画像は松下電器(パナソニック)が1980年に発売した「ラジカメ」です。松下電器は、現在もマーケットインの指向が強い会社だと思います。
わたしはなぜ松下のような会社がこのような「プロダクトアウト」的な商品を世に出したのかいまだにわかりません。
「ラジカメ」が本当にプロダクトアウトだったのかどうかはわかりませんが、同じ年にソニーは「ウォークマン」を発売しています。こちらは明らかにプロダクトアウトの商品です。
向き不向きと簡単に言い切ってしまうのは良くないかもしれませんが、企業の文化のようなものがこうした新商品の開発のなんらかの影響を与えているような気がします。
ですから、「向き不向きはある」と信じています。
(人材育成社)