先日、あるレストランで食事をしたときに、店員さんから「よろしければ、お願いします」と言ってアンケート用紙を渡されました。私は、アンケートの作り方と統計分析について研修を行なうこともあるので、「勉強のために」とお店の方に頼んで1枚頂戴してきました。
ひと目見て、大変よくできた調査票(アンケート用紙)だと思いました。
質問項目の1~3が来店時の状況について、4~7が料理について、8~9が施設について、10~13が店員のサービスについて、それぞれが個別のグループを形成しています。このうち「料理」と「店員」についての質問グループが大事な部分です。なぜなら、来店状況や施設についてはコントロールしにくい部分だからです(もちろん、施設の雰囲気が悪かったり、化粧室が汚れていたりしたらアンケート以前に大問題です)。
お店としてコントロール可能な「料理」と「店員」の評価が、14~15の「満足度」にどの程度影響を与えているかを調べ、改善すべき点を見つけるのです。
これは想像ですが、店長に対する「けん制」にも使っているかもしれません。このレストランはチェーン店ですから、アンケート結果を店舗ごとに集計、比較して点数の低い店舗にプレッシャーをかけることもできそうです。
このようにアンケートにはいろいろな使い方があります。
最も有名な(悪名高い?)使い方をしている例は、週刊少年ジャンプの「読者アンケート」でしょう。
「ジャンプ」の中には、愛読者アンケートハガキが付いています。これを読者が切り取って、切手を貼って送ります。抽選で「豪華賞品」が当たるので、それがインセンティブになっているわけです。そして、このハガキには、その号で面白かったマンガ上位3つを書く欄があります。
編集部はその結果をマンガごとに集計し、上位からランキングを付けます。毎回、上位に位置するマンガは大体決まっているようです。そうした人気マンガは連載が続きます。一方、下位ランクのマンガは連載打ち切りの対象になると言われています。
このように「ジャンプ」はアンケート至上主義を徹底することで、雑誌内でいわば自然界の淘汰のような機能をはたらかせ、他誌を凌駕する面白さと売上を実現してきたと噂されています(同誌の編集部はその噂を否定しています)。
さて、研修講師も受講者のアンケートで仕事の存続が決まることがあります。ただし、研修の受講者は「読者」ではありませんので、アンケートの点数が高いからといって必ずしも良い研修を行っているとは限りません。
面白おかしい研修をやれば、アンケートの点数は良くなります。しかし、研修は娯楽ではありません。
そこで大切になってくるのが「自由記入欄」です。そこに書かれた受講者の生の声の中には、少数ですが納得できる良い指摘が見つかることもあります。それは本当にありがたいことです。
ですから、点数で評価するだけのアンケートは不十分であると言わざるを得ません。
レストランのアンケートにも自由記入欄は必要です。それがあれば、お客様の生の声が拾えるからです。
たとえば上記のアンケートに自由記入欄があれば、私なら間違いなく「量が少ない」と書きます。
(人材育成社)