「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「部下(25歳)が、ちょっとしたことで落ち込むんです。管理職の私からすると、落ち込む必要はないと思うのですが。十分能力があるんだし、こちらも無理難題を要求しているつもりはないんですけれど。彼は理想が高すぎるのかな?理想が高いのは決して悪いことではないけれど、どうしたものでしょうか?」
これは、先日弊社が管理職研修を担当させていただいた際に、一人の受講者から相談された言葉です。詳しくお話をお聴きしたところ、直属の部下は、自分の能力を低くとらえがちで、自信をなかなか持てない。部下が落ち込んでしまっていることがわかっても、大きな失敗をしたわけでもないので、上司として何をどのようにフォローをすればよいものか・・・「頑張れ!自信を持て」と言葉でと叱咤激励しても効果があるとは思えないし、考えあぐねているとのことでした。
お話をお聴きして感じたのは、この部下は一所懸命に仕事に取り組む真面目な人柄のようですが、一方で自己肯定感がとても低いのではないかということです。そのため、彼が自分にもっと自信を持つためには、成功体験を積んでもらうことが大切なのではとのアドバイスをさせていただき、話を終えたのでした。
この成功体験に関して、先日のNHKの「チコちゃんに叱られる」で、「小学校の授業に逆上がりが採用されたのはなぜか」を取り上げていました。
そもそも鉄棒などの器械体操は1811年にドイツで生まれたもので、ドイツの教育者だったフリードリヒ・ルートヴィヒ・ヤーンがその生みの親だそうです。逆上がりは筋力をつけるということだけでなく、日々練習を続けることによりできるようになることが多いため、すぐには成功できない逆上がりという課題に対して成功体験を積ませることが目的だったのです。「どうすればよいのか?」と自ら考え、最終的に乗り越えることで力が養われる、頑張ればできるようになる、努力は報われるということを体験を持って感じてもらうということです。
これは、まさにエドワード・L・デシのモチベーション理論における「内発的動機づけ」に該当するのではないかと思うのです。
デシは、内発的動機づけをする理由の一つに有能感があるとしています。有能感とは「能力があると感じる」ことで、達成可能な目標を与え、それを達成したことによる満足感が有能感を生むのです。当然目標が高すぎると達成することができず、やる気も出てきません。逆に目標が低すぎると、達成は当然のこととなって有能感もあまり得られません。
この点から考えると、管理職が一人一人の部下に対して、頑張れば達成可能な目標(ストレッチ目標)を適切に与えることができれば、部下は努力することで成功体験を得ることができ、成長することができるというわけです。
しかし、このストレッチ目標は個々人の能力や状況によって異なるわけで、各々に合った目標を見つけることはそう簡単なことではありません。一人一人の能力をきちんと把握するためには、管理職として日常的に部下の仕事ぶりや言動を観察し続けることが必要だということです。
管理職の皆さんには、慌てず、焦らず、じっくりと部下を観察し、その上で適切なストレッチ目標を与え成功体験を積ませる、この繰り返しで少しずつ部下を育てていただきたいと思います。