「仕事の生産性の向上」を目的とした研修のご依頼をいただく際には、演習の中で1か月間の仕事時間や残業時間を定量化するようにしていただいています。
これは、まずは残業時間を客観的な数字で確認し、それをきちんと認識していただくことによって、削減に向けたできる限りの努力や取り組みをしていただくためのものです。
しかし、実際にこの演習を行っていただくと、事前に研修の担当者から伺っていた残業時間よりも、はるかに少ない数字が出されることが多いのです。
もちろん、部署によっては時期により繁忙期がありますので、一時的に残業時間が多くなることはあります。しかし、演習の中で受講者が答える1か月の残業時間は平均20~30時間以内がほとんどで、その割合は受講者の9割ほどと言っても決して過言ではありません。
そして、この傾向は企業の規模には関係なく、さらに研修の形態が企業内の研修であっても、公開型のセミナーであっても、ほぼ同様の結果となっています。
さらに、この状況は働き方改革が叫ばれるようなった2016年以降からということでもなく、弊社が10年前から研修にこの演習を取り入れるようになってから一貫しています。
しかし、一方で世間では長時間労働が依然として大きな問題となっているわけですから、弊社の研修の結果とは大きな隔たりがあります。
果たして、この違いをどのように考えたらよいのでしょうか?
この点、私自身もずっと疑問に思っていたのですが、その理由はおそらく次のようなことではないかと考えています。
一般に、研修を社内で行ったり、社員を公開セミナーに派遣したりする会社は、その規模によらず人材育成の必要性をしっかり認識していると考えられます。
人材育成をきちんと行っている会社は、必ずしも時間に余裕があるわけではないですし、潤沢な利益が出ているわけでもないと思います。
しかし、そういう状況であったとしても、人材育成を大切に考えているからこそ、限られた予算の中でも外部から研修講師を呼んだり、公開セミナーに社員を派遣したりしているのです。
つまり、こうした会社は「人を大切にしている会社」と言えるのではないでしょうか。
そして、実はこうした会社は同時に、働き方改革が叫ばれるようになる以前から少しでも無駄を省き、残業時間もできる限り減らすような努力を行っていたのではないかと考えています。
このため、研修の中で出される残業時間が一般で言われているほどには多くないという結果につながっているのでしょう。
一見、人材育成と残業時間はあまり関係なさそうに思えますが、実は前述のように大きな相関関係があるのではないか。いずれ調査によってエビデンスを明らかにしたいと考えています。