中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,088話 ルールの徹底にはナッジを利用する

2022年01月12日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「仕組みを作っても、社員がその通りにやらない」、「なかなかルールが徹底されない」

これは弊社がお付き合いをいただいている中小企業の社長や、様々な企業の問題発見・課題解決研修を担当させていただいた際に受講者からよく聞く言葉です。

組織に人が2人以上存在する場合には、データの管理方法や書類の保管場所など、大なり小なり仕組みやルールが必要になります。仕組みやルールを作ったり、必要に応じて変更したりすること自体簡単なことではありませんが、さらにエネルギーを要するのが、それを守ること、徹底することです。

几帳面にルールを守る人がいる一方、ほとんど気にしないような人がいることも事実です。このため、ルールを全員で共有し徹底するためには、5W1Hなどの具体的な行動計画にしたり、面倒なものにし過ぎるなど敷居を高くしないようにしたりすることがポイントになります。

とはいえ、どんなに工夫をしてもルールを徹底することは簡単なことではないと思います。また、ルールを設けてしばらくの間は徹底されたとしても、時間の経過とともにいつの間にか形骸化してしまったり、ルールを徹底している人だけが煩わしい思いをしたり、損をしているような気持ちになってしまったりするようなことも起きてしまうこともあります。

こうした場合に私がお勧めしているのが、「ナッジ(nudge)」です。ご存じの方も多いとは思いますが、ナッジとは心理学や行動経済学において明らかになってきた人間の行動の原理に基づき行動のきっかけを提供する手法です。

もともとは「肘で軽く押す」という意味のナッジですが、2017年にシカゴ大学のリチャード・セイラー教授がナッジの研究でノーベル経済学賞を受賞して注目が高まるようになりました。

ナッジは、「人は客観的にみると、誤ったり損したりするような選択を知らぬ間にしてしまう」という前提に立った経済モデルを行動経済学とし、大きな費用をかけずに伝え方や表現の工夫だけで一定の成果を挙げることができるとされています。

実際の取り組み例として、宇治市役所では手洗いを促すための工夫として、庁舎のトイレに「手をしっかり洗いましょう」という通常の表現でなく「となりの人は石鹸で手を洗っていますか」というポスターを張ったところ、手洗いをする人が増えたそうです。これは、自分が手洗いをしているかどうかを周囲から見られていることが気になるという意識が働いた結果だと考えられます。これ以外にも、定期検診の受診率を上げるためにナッジを利用している八王子市役所の例など様々なところで取り組まれており、功を奏しているようです。

組織のみならず社会には守らなければならないルールや仕組みが様々あるわけですが、前述のように徹底することはなかなか難しいものです。しかし、そうした前提のもとでナッジのように表現や伝え方を工夫することで改善を試みてみることも一案です。なかなかうまくいかないと思っていらっしゃる方は、一度試してみてはいかがでしょうか。

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