「ダウ平均」と言えば、アメリカの証券市場(株価)の動きを表す歴史のある指標です。日本のニュースでも時々耳にする言葉として有名です。ダウ平均の構成銘柄には米国を代表する優良30社が選出されています。 構成銘柄は、これもまた歴史のあるウォール・ストリート・ジャーナル紙の編集陣によって時々入れ替えられます。
2015年3月6日、ダウ工業株30種平均からAT&Tを外し、Appleを組み入れるというニュースが入ってきました。
AT&Tと言えば19世紀にグラハム・ベルが興したアメリカ最大手の電話会社です。
ダウの構成銘柄から外れた理由は、同じ電気通信分野の他社に比べて時価総額が低いからだとされています。とは言え、日本でいえばNTTのような会社が「米国代表」から外され、Appleが入ったことについては非常に感慨深いものがあります。
さらに、2013年にはHP(ヒューレット・パッカード)が収益の低迷などの理由によりダウ平均から外されています。HPといえばシリコンバレーを代表するハイテク企業の代名詞でした。
株式市場は自由競争社会を映す鏡のような存在ですから、こうした交代劇は当たり前と言ってしまえばそれまでです。
では、なぜAT&TやHPという数万人の従業員を抱える大企業がダウ平均から「淘汰」されてしまったのでしょうか。
進化論でお馴染みのチャールズ・ダーウィンの「最も強いものや賢いものが生き残るのではない。最も変化に敏感なものが生き残る」という一節が思い浮かびます。しかしこの言葉は「種の起源」の中にはないそうです。
私の大好きな「ワンダフル・ライフ」※という本があるのですが、これを読むと「生き残るのは偶然によるもの」ということがよく分かります。進化とは、たくさんのパターンの中から「たまたま」そのときの環境にマッチした、いわば当たりくじを引いたものが生き残った結果を表しているに過ぎないのです。
日々たくさんの企業が知恵を絞って、無数の商品やサービスを生み出しています。
Appleのプロダクトを見ると、市場の動向に敏感に反応したのではなく、自らが納得できる製品を作ったことが成長につながったように思えます。
変化に敏感なマーケット・インではなく、我が道を行くプロダクト・アウトの方が生き残る確率が高いのかもしれません。
(人材育成社)
※Amazon.co.jp: ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF): スティーヴン・ジェイ グールド, Stephen Jay Gould, 渡辺 政隆: 本