上空から見るとドミノ倒しの準備のために用心して狭い所にドミノを並べたような団地群の窓々から、明るい光があふれだして周辺を照らしている。灯のともっているどの窓からのぞいても家族や友人達とささやかに、にぎやかにクリスマスイブの夜を楽しむ笑顔が見える。だがその中のひとつに、キッチンンのオレンジ色の電燈の下でテーブルに向かって一心に何か描いている少女がいる窓があった。どうやら家には他に誰もいない。まだ10歳になっているようには見えない少女が一人、テレビも点けず、ただもくもくと絵を描いている。
少女は今朝、母親にウソをついた。「今日はミサキちゃんの家でクリスマス会なの。そのあと、晩ごはんも一緒にどうぞって。ちゃんとお姉ちゃんが送ってくれるって。だから、ママ、早く帰って来れなくても心配ないよ」言ってから、去年も同じウソをついたことを思い出した。と同時に母が自分のウソを見破っているらしいことにも気が付いた。「ホントだよ。心配ないよ」母は信じることにしてくれたらしい。でも、夜になったら、クリスマス会に行っていれば誰もいるはずのないわが家に母から電話がかかってくるだろうな、という予感があった。
電話が鳴った。少女は絵を描く手を止めて立ち上がり、受話器を耳に当てる。
「…… カホ、やっぱりいたのね。…… ごはん、食べたの?」母のやさしい声が少女の体の隅々まで沁みる気がする。ミサキちゃんのところで晩ごはんも食べるって言ったのに母はちゃんとウソを見破っていた。
「食べた。…… ママがちゃんとクリスマスのご飯作ってくれてたから。… おいしかったよ」
「ごめんね。やっぱり今日もいつもの時間なの。…… クリスマスイブなのに」
少女は母が目の前にいるかのように一生懸命首を振った。クリスマスイブなのに頑張っているのはママではないか。
「今日先生がね、誰かの幸せを願ってメリークリスマスって言うと言った人も幸せになるって。だからみんなでメリークリスマスって言い合いした。ママにもたくさんメリークリスマスって言ったよ」
「………」
「…… ママ、メリークリスマス」
「カホ、…… ママもカホのこと考えて何度もメリークリスマスって言わなきゃ。… メリークリスマス、カホ。ありがと、メリークリスマス」
母の声はかすれて震えてた。泣かないように頑張っているのかもしれない。もう一度言わなくては。
「メリークリスマス、… ママ」
電話が切れた後、少女はまたテーブルに向かって絵の続きを描き始めた。団地の上を飛ぶ赤鼻のトナカイが引く橇にサンタクロースと少女と母が乗っている。少女から母へのクリスマスプレゼントだ。丸めた絵を赤いリボンで結んでテーブルの上に置いておくつもりだ。母は今年も2人では食べきれない大きなクリスマスケーキを買って帰ってくるだろう。ケーキをテーブルの上に置いて、コートを脱ぐ前に絵を開いてくれるかもしれない。ママが喜んでくれるといいな、そう思って少女はもう一度「メリークリスマス」と言ってみた。
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製品開発(monipet)、それに農業も手がけるIT企業
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「カホ、…… ママもカホのこと考えて何度もメリークリスマスって言わなきゃ。… メリークリスマス、カホ。ありがと、メリークリスマス」
母の声はかすれて震えてた。泣かないように頑張っているのかもしれない。もう一度言わなくては。
「メリークリスマス、… ママ」
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