JSP_Blog

ジェイエスピー社員が綴る日替わりブログ

思い出ダイバー

2011-05-16 09:22:04 | 日記
1998年、夏。
何があったか覚えている野球ファンも多い事だろう。

あの『平成の怪物』と呼ばれた松坂大輔を擁する神奈川県代表の横浜高校が、春・夏連覇(夏の大会の決勝はノーヒットノーランまで!)の偉業を達成したのだ。

1998年、夏。
僕は何があったかを絶対に忘れることは無い。

僕たち吹奏楽団の最大の目標は、吹奏楽コンクールでの演奏後に行われる結果発表で、全国大会に出場することができる北海道代表に選ばれることであった。

その日のために前年の年末から演奏する曲の選曲を始めた。決定するまでに聴いた曲は2~300はくだらない。曲が決まってからは時間があればデモテープを聴き、音を体中に運んだ。普段の練習は勿論の事、暇さえあれば楽器(ストリングベース)を持ち出して部室や自宅で自主練習をした。合宿前には左手の親指以外の指先は、絆創膏だらけになっていた。自主練習だけでは団体演奏は良くならない。同じパートや同じフレーズの楽器達が集まって分奏を行い、学校が閉まる時間まで残って全員での合奏を行った。幸い夏休み期間中のため授業は無い。コンクールの事だけを考える環境は整っていた。

当日は、ライバル校の演奏が1番最初だった。僕たちは演奏順が次のために舞台袖で聴いている。団員の緊張感がピークに達してきているのが解る。演奏時間は12分間と決まっているが、その12分間が果てしなく長く感じられた。

張りつめた空気が客席からの拍手で一気にはじけた。演奏が終わった。次は僕たちの番だ。あれだけのことをやったと後の自分に誇れるだけの事はやってきた。後は12分間を団員、指揮者、審査員、お客様と楽しむ時間にするだけ。

コンクールは課題曲→自由曲の順に演奏する。順調だ。課題曲が終わって、同じパートの後輩がピアノに移動する。少しもたついているようだ。12分を1秒でも過ぎてしまうと失格となってしまうため、会場中の皆が焦る。ピアノの用意が出来たと同時に指揮棒が動き出す。それを合図に自由曲の演奏が始まった。

指揮者はのってくると曲の最後の一音を必要以上に長く延ばす癖があった。この日も当然のように音を十分に響かせてから指揮を終えた。普段通り演奏しても2曲で11分50秒前後なのに、曲間でも時間を使ったし、この終わり方だ。『時間切れ失格』が団員全員の心を支配していた。が、演奏自体はこの日にピークを持ってきたことだけあって、今までで一番の出来だったと思う。本番中は代表の事など微塵も考えず、この広い会場で演奏できることの喜びと充実感でいっぱいだった。

全ての団体が演奏を終え、結果発表の時間となった。演奏した団体の代表者が舞台上に立ち、結果を待つ。客席には各団体のメンバーが固まって、同じように結果を待つ。
簡単に結果発表について説明しよう。良い結果から「金賞」「銀賞」「銅賞」である。「金賞」を受賞した団体の中から、全国大会に出場することが出来る『代表』が選ばれる。北海道の大学の枠数はたったの1つだけだ。言い忘れていたが「時間切れ失格」となった団体は、どんなに良い演奏をしていても「賞」が貰えない。しかも賞の発表前に言い渡される。

「では大学の部の結果です・・・」
この時点で時間切れ失格ではないことが確定した。全員が胸を撫で下ろした。
「1番『金賞』・・・」
「うぉ~~~~~!!!」
ライバル校は金賞だった。良い演奏だったし間違いないだろう。
「2番『金賞』・・・」
「きゃ~~~~~!!!」「うわ~~~~!!!」
僕たちも金賞だ。良い演奏を届けることが出来たようだ。ここまでは例年通り。
「・・・それでは代表校を発表します・・・」



次々と抱き合う代表に選ばれた演奏者達。目からは涙があふれている。興奮して寝転がっている人もいた。叫び過ぎたのだろう、ものすごい咳をしながら声にはならない声で喜びを分かち合っている。出場した演奏者全ての目標を達成した人たちの輪が会場の一角に出来ていた。そんな中、僕は購入したばかりの携帯電話で実家に電話をかけていた。

『母さん、今年は実家に帰らないから!』


私は隔月の第三月曜日に登場します。よろしくお願い致します。
(照)


monipet
  動物病院の犬猫の見守りをサポート
  病院を離れる夜間でも安心

ASSE/CORPA
  センサー、IoT、ビッグデータを活用して新たな価値を創造
  「できたらいいな」を「できる」に

OSGi対応 ECHONET Lite ミドルウェア
  短納期HEMS開発をサポート!

GuruPlug
  カードサイズ スマートサーバ

株式会社ジェイエスピー
  横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
  製品開発(monipet)、それに農業も手がけるIT企業
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

TCO

2011-05-16 08:30:33 | 日記
 TCO(total cost of ownership)という言葉がある。14~5年ほど前には誰も彼もTCO、TCOと言うので嫌気がさしたものだが、最近はほとんど聞くことも無くなっていた。しかし、原発事故が起きて急にTCOと言う言葉が息を吹き返して来たようだ。
 流行が過ぎて聞かなくなっていた言葉でもあるので、多少説明しておくと、TCOとは、システムの初期導入費用だけでなく、システムを導入した後、そのシステムであるがゆえに発生する様々な維持・運用管理費用全体のコストを考えて他のシステムと比較しようという考え方である。@ITにいい説明があったので引用させてもらう。
 
 「ハードウェアやソフトウェアの購入費(保守料・ライセンス費)やシステム開発費といった直接的な費用のほかに、“隠れたコスト”が発生する。TCOはこの隠れたコストを含めて、システムを利用するのに必要なすべてを合算したものであり、システム投資を行う場合の意思決定や運用時の無駄な経費を抑制するために使われる指標である。
 隠れたコストとは、(将来的な)アップグレード費用、システム部門やシステム管理者の人件費(エンドユーザーへの教育やヘルプに費やすサポート費用を含む)、エンドユーザーの人件費(インストールやセットアップなどの作業、部署内ヘルプやサポート作業分)、システムダウンやパフォーマンス低下などによる業務上の損失およびトラブルシューティングなどが含まれる。
 システム投資を考える際には、初期導入費だけではなく、隠れたコストを含むシステムのライフサイクルを通じてのすべてのコストを勘案することが大切だというのが、TCOの考え方である」
 
 今回の原発事故を見ると、原発は一度事故が発生してしまうと、とてつもなく広範囲に、しかも長い期間の対策を要する、とんでもなくTCOのかかるシステムであることがわかる。当然ながら事故が起きないように対策しなければならないし、事故が起きてから少しでも被害を少なくするための対策を打たなければならず、その費用など、真面目に考えれば、相当の額が必要であろうと思われるが、そうしたTotal Costは今まで計算されて来なかったか、計算されても公表されずに隠されてしまっていたのだろう。しかし、単に金銭の多寡に換算することができない大きな不幸と悲しみを今回の事故では周囲の人々に背負わせてしまった。即救助に行ければ助かったかもしれない津波被害者を、原発事故のために救助に行くこともできなかった。長い時間かけてコツコツと作り上げてきた生活のすべてを捨てて、そこを離れなければならなくなった家族。放射能汚染で子供の将来に不安を感じる人たち。彼らの失ったもの、夢や希望をコストに換算する計算式は無い。

 信じられないような惨劇を見た今になっても、マスコミに登場する多くの評論家やマスコミ各社の論調は「経済優先」である。火力発電所と比べ燃料費が安い、二酸化炭素の排出量が少ないという理由で、さらに、たった今、すでに原発があってそのおかげで仕事と生活がある、という人が多いという理由で、変化への道筋を勇気をもって語る人は少ない。または、時間の経過とともに少なくなってしまった。この勢いのまま数か月も過ぎれば、壊れた福島第一原発の周囲に花でも植えて観光ツアーでも行われかねない。白い防護服に身を包んだバスガイドが「原発は永遠に安全です」と説明して笑いを取るだろう。日当1万円で雇われている原発作業者が瓦礫の向こうでVサインを送ってくるかもしれない。皆いつからか「経済優先」に慣らされているのだ。だがその経済優先もTCOを考えた上で語られている言葉では無い。「今」に執着するあまり「未来」や「理想」に対する義務や責任を放棄しているように思える。
 2011年3月11日を生き残ったわれわれは何を決断すべきなのか。未来の誰かが何とかしてくれる、という考え方はもうやめたほうがいい。ここまで大きな災害が起きた今変えられなくて未来のいつか変えられるとはとても思えない。(三)
 
 
monipet
  動物病院の犬猫の見守りをサポート
  病院を離れる夜間でも安心

ASSE/CORPA
  センサー、IoT、ビッグデータを活用して新たな価値を創造
  「できたらいいな」を「できる」に

OSGi対応 ECHONET Lite ミドルウェア
  短納期HEMS開発をサポート!

GuruPlug
  カードサイズ スマートサーバ

株式会社ジェイエスピー
  横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
  製品開発(monipet)、それに農業も手がけるIT企業
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする