1998年、夏。
何があったか覚えている野球ファンも多い事だろう。
あの『平成の怪物』と呼ばれた松坂大輔を擁する神奈川県代表の横浜高校が、春・夏連覇(夏の大会の決勝はノーヒットノーランまで!)の偉業を達成したのだ。
1998年、夏。
僕は何があったかを絶対に忘れることは無い。
僕たち吹奏楽団の最大の目標は、吹奏楽コンクールでの演奏後に行われる結果発表で、全国大会に出場することができる北海道代表に選ばれることであった。
その日のために前年の年末から演奏する曲の選曲を始めた。決定するまでに聴いた曲は2~300はくだらない。曲が決まってからは時間があればデモテープを聴き、音を体中に運んだ。普段の練習は勿論の事、暇さえあれば楽器(ストリングベース)を持ち出して部室や自宅で自主練習をした。合宿前には左手の親指以外の指先は、絆創膏だらけになっていた。自主練習だけでは団体演奏は良くならない。同じパートや同じフレーズの楽器達が集まって分奏を行い、学校が閉まる時間まで残って全員での合奏を行った。幸い夏休み期間中のため授業は無い。コンクールの事だけを考える環境は整っていた。
当日は、ライバル校の演奏が1番最初だった。僕たちは演奏順が次のために舞台袖で聴いている。団員の緊張感がピークに達してきているのが解る。演奏時間は12分間と決まっているが、その12分間が果てしなく長く感じられた。
張りつめた空気が客席からの拍手で一気にはじけた。演奏が終わった。次は僕たちの番だ。あれだけのことをやったと後の自分に誇れるだけの事はやってきた。後は12分間を団員、指揮者、審査員、お客様と楽しむ時間にするだけ。
コンクールは課題曲→自由曲の順に演奏する。順調だ。課題曲が終わって、同じパートの後輩がピアノに移動する。少しもたついているようだ。12分を1秒でも過ぎてしまうと失格となってしまうため、会場中の皆が焦る。ピアノの用意が出来たと同時に指揮棒が動き出す。それを合図に自由曲の演奏が始まった。
指揮者はのってくると曲の最後の一音を必要以上に長く延ばす癖があった。この日も当然のように音を十分に響かせてから指揮を終えた。普段通り演奏しても2曲で11分50秒前後なのに、曲間でも時間を使ったし、この終わり方だ。『時間切れ失格』が団員全員の心を支配していた。が、演奏自体はこの日にピークを持ってきたことだけあって、今までで一番の出来だったと思う。本番中は代表の事など微塵も考えず、この広い会場で演奏できることの喜びと充実感でいっぱいだった。
全ての団体が演奏を終え、結果発表の時間となった。演奏した団体の代表者が舞台上に立ち、結果を待つ。客席には各団体のメンバーが固まって、同じように結果を待つ。
簡単に結果発表について説明しよう。良い結果から「金賞」「銀賞」「銅賞」である。「金賞」を受賞した団体の中から、全国大会に出場することが出来る『代表』が選ばれる。北海道の大学の枠数はたったの1つだけだ。言い忘れていたが「時間切れ失格」となった団体は、どんなに良い演奏をしていても「賞」が貰えない。しかも賞の発表前に言い渡される。
「では大学の部の結果です・・・」
この時点で時間切れ失格ではないことが確定した。全員が胸を撫で下ろした。
「1番『金賞』・・・」
「うぉ~~~~~!!!」
ライバル校は金賞だった。良い演奏だったし間違いないだろう。
「2番『金賞』・・・」
「きゃ~~~~~!!!」「うわ~~~~!!!」
僕たちも金賞だ。良い演奏を届けることが出来たようだ。ここまでは例年通り。
「・・・それでは代表校を発表します・・・」
次々と抱き合う代表に選ばれた演奏者達。目からは涙があふれている。興奮して寝転がっている人もいた。叫び過ぎたのだろう、ものすごい咳をしながら声にはならない声で喜びを分かち合っている。出場した演奏者全ての目標を達成した人たちの輪が会場の一角に出来ていた。そんな中、僕は購入したばかりの携帯電話で実家に電話をかけていた。
『母さん、今年は実家に帰らないから!』
私は隔月の第三月曜日に登場します。よろしくお願い致します。
(照)
monipet
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センサー、IoT、ビッグデータを活用して新たな価値を創造
「できたらいいな」を「できる」に
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GuruPlug
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株式会社ジェイエスピー
横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
製品開発(monipet)、それに農業も手がけるIT企業
何があったか覚えている野球ファンも多い事だろう。
あの『平成の怪物』と呼ばれた松坂大輔を擁する神奈川県代表の横浜高校が、春・夏連覇(夏の大会の決勝はノーヒットノーランまで!)の偉業を達成したのだ。
1998年、夏。
僕は何があったかを絶対に忘れることは無い。
僕たち吹奏楽団の最大の目標は、吹奏楽コンクールでの演奏後に行われる結果発表で、全国大会に出場することができる北海道代表に選ばれることであった。
その日のために前年の年末から演奏する曲の選曲を始めた。決定するまでに聴いた曲は2~300はくだらない。曲が決まってからは時間があればデモテープを聴き、音を体中に運んだ。普段の練習は勿論の事、暇さえあれば楽器(ストリングベース)を持ち出して部室や自宅で自主練習をした。合宿前には左手の親指以外の指先は、絆創膏だらけになっていた。自主練習だけでは団体演奏は良くならない。同じパートや同じフレーズの楽器達が集まって分奏を行い、学校が閉まる時間まで残って全員での合奏を行った。幸い夏休み期間中のため授業は無い。コンクールの事だけを考える環境は整っていた。
当日は、ライバル校の演奏が1番最初だった。僕たちは演奏順が次のために舞台袖で聴いている。団員の緊張感がピークに達してきているのが解る。演奏時間は12分間と決まっているが、その12分間が果てしなく長く感じられた。
張りつめた空気が客席からの拍手で一気にはじけた。演奏が終わった。次は僕たちの番だ。あれだけのことをやったと後の自分に誇れるだけの事はやってきた。後は12分間を団員、指揮者、審査員、お客様と楽しむ時間にするだけ。
コンクールは課題曲→自由曲の順に演奏する。順調だ。課題曲が終わって、同じパートの後輩がピアノに移動する。少しもたついているようだ。12分を1秒でも過ぎてしまうと失格となってしまうため、会場中の皆が焦る。ピアノの用意が出来たと同時に指揮棒が動き出す。それを合図に自由曲の演奏が始まった。
指揮者はのってくると曲の最後の一音を必要以上に長く延ばす癖があった。この日も当然のように音を十分に響かせてから指揮を終えた。普段通り演奏しても2曲で11分50秒前後なのに、曲間でも時間を使ったし、この終わり方だ。『時間切れ失格』が団員全員の心を支配していた。が、演奏自体はこの日にピークを持ってきたことだけあって、今までで一番の出来だったと思う。本番中は代表の事など微塵も考えず、この広い会場で演奏できることの喜びと充実感でいっぱいだった。
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簡単に結果発表について説明しよう。良い結果から「金賞」「銀賞」「銅賞」である。「金賞」を受賞した団体の中から、全国大会に出場することが出来る『代表』が選ばれる。北海道の大学の枠数はたったの1つだけだ。言い忘れていたが「時間切れ失格」となった団体は、どんなに良い演奏をしていても「賞」が貰えない。しかも賞の発表前に言い渡される。
「では大学の部の結果です・・・」
この時点で時間切れ失格ではないことが確定した。全員が胸を撫で下ろした。
「1番『金賞』・・・」
「うぉ~~~~~!!!」
ライバル校は金賞だった。良い演奏だったし間違いないだろう。
「2番『金賞』・・・」
「きゃ~~~~~!!!」「うわ~~~~!!!」
僕たちも金賞だ。良い演奏を届けることが出来たようだ。ここまでは例年通り。
「・・・それでは代表校を発表します・・・」
次々と抱き合う代表に選ばれた演奏者達。目からは涙があふれている。興奮して寝転がっている人もいた。叫び過ぎたのだろう、ものすごい咳をしながら声にはならない声で喜びを分かち合っている。出場した演奏者全ての目標を達成した人たちの輪が会場の一角に出来ていた。そんな中、僕は購入したばかりの携帯電話で実家に電話をかけていた。
『母さん、今年は実家に帰らないから!』
私は隔月の第三月曜日に登場します。よろしくお願い致します。
(照)
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「できたらいいな」を「できる」に
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株式会社ジェイエスピー
横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
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