久しぶりの雪

　朝方、暖かい布団にくるまれて幸せな気分に浸っていると、ぽつぽつと雨の音が聞こえている。月曜日、太平洋側も広く雪の予報が出ていたのに、クリスマスのときと同じく雪にならないまま終わるかと思っていたら、やがて雨は雪に変り、あっという間に、窓から見える景色が一面白くなってしまった。

　せっかく着飾った新成人の人たちには申し訳なく思うが、平日に降ったときの交通機関の乱れを想像すれば、休日で良かったなと考えたりする。寒さ自体はそれほど辛くはないが、足下の心もと無さはどうしようもなく、革靴で転ばないように集中するだけでかなりのエネルギーが消費されてしまう。

　それにしても、それなりに年齢を重ねているはずなのに、雪が降ると、ワクワクする気持ちはいまだに無くならない。やはり子供の頃の雪遊びの楽しかった記憶が今も根強く残っているからだろうか。私の田舎は四国の比較的山寄りのところにあるが、瀬戸内海側のように中国山地と四国山地に挟まれた地域では無いため寒気も入りやすく、南国にしては比較的冬場は雪が多い。

　まだテレビゲームもほとんど無かった子供時代。冬といっても家にこもることはほとんど無く、大体が外に出て遊び回っていた。そうした中で雪が降れば、めったに出来ない遊びが出来るということで、喜び勇んで大はしゃぎをしていた。やはりメインは定番中の定番の雪合戦。雪が降り始めると、どこからともなくみんな広場に集まってきて、雪合戦が始まる。最初は敵、味方に分かれて遠距離で投げ合いをしているが、そのうち接近戦になり、最後には敵味方関係なくなってしまう。やがて雪玉を作るのが面倒になり、掴んだ雪の固まりを頭から落としたり、襟から放り込んだりしていた。たいてい家に帰る頃には体中びしょびしょになっていて、親からこっぴどく怒られたが、不思議と寒くて凍えていた記憶は余り無い。

　雪の日独特の静けさもまた心地よい。人通りや車が少ないことも大きな要因の一つだが、雪が雑多な音を吸収してしまい、普段は聞こえないような自分の心臓の音すら聞こえそうな気がする。こんな静けさはめったに味わうことは出来ない。回りを真っ白に覆い尽くしてしまう雪は、見慣れた景色を瞬く間に異世界に変えてしまう。雪の降る日は、窓辺に座り、暖かい珈琲を飲み、のんびりと過ごしたい。

　今度の土日はセンター試験。センター試験の日は雪が降っている印象が非常に強い。自分にとって雪はたまに味わうことの出来る楽しみの一つであるが、人生の大きな転機を迎える受験生のために、願わくば、太陽の光刺す穏やかな日でありますように。（菊）



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