大雪と五輪

　NHKニュースによると横浜は11センチの積雪ということになっていた。へ？と言う感じだ。玄関を出てすぐ長靴を履いた足がズッポリ膝辺りまで潜り込む。どう見たってこりゃ30センチ40センチはあるだろう。それとも保土ヶ谷は横浜じゃないのか？まあいい。NHKニュースに文句を言っても始まらない。横浜気象台がある辺りの積雪が、わが家のある山の上とは大きく違っていたということだろう。
　
　日曜の朝刊は結局、あまりに雪深いために配達されなかった。家の前の坂道には土曜の夜に遭難したトラックがそのまま雪に埋もれていて、誰かが閉じ込められていると大変だと近所の人達がそれぞれ心配したのか手で掘り返して中を確認した痕跡が残っていた。雪の間から見えた文字によるとクール宅配便のトラックだった。ここまで冷やしてあれば常温でも問題ない。
　
　ご近所さんの力というのはあなどれない。日曜朝、日が昇ってくるといきなりあっちでジャリ、こっちでジャリと音が聞こえ始める。皆さんが雪かきを始めた音だ。急坂周辺に暮らす人々にとって翌朝坂道がスケートリンクのようになってしまうことを防ぐのは共通の目標だ。スコップで掘り返しながら白い道路を少しずつ黒く変えていく。向こうから黒く変えて来た道路とこっちから黒く変えてきた道路が連結される時、お互いハイタッチしたくなるぐらいの連帯感が生まれる。なんせ雪は重い。吹き溜まりで50センチを超えているような場所もある中、汗だくになりながら腰痛をこらえて1メートル2メートルと距離を伸ばして来たからだ。昼前には主要な坂道は歩いて平地まで降りられるところまで雪かきが終わっていた。
　
　この暴風雪によってかなり多くの地域が停電となった。東日本大震災直後のあの計画停電という言葉を思い出した人も多かったのではないか。電力の供給が無くなるということがどれぐらい大変なことなのか改めて実感したのが、最も電力を使っている東京都民でなく神奈川、千葉、茨城などのみなさんだったことは皮肉なことだ。都知事選は盛り上がらないようにコントロールされていたという話しがまことしやかに語られている。投票率が上がると苦戦する候補者を擁立している力の強いグループがいるということだ。その伝で言えば降雪が始まってからの東電のみなさんの東京地域停電防止作戦はしっかり結果を出した。もちろんそのおかげで手薄になった周辺地域の停電が長く続いたのだとしたら、都知事選恐るべしというところか。
　
　暴風雪騒ぎと時を同じくして、ソチ五輪が開幕した。周囲で降り積もる雪の印象が強烈なだけに冬のオリンピックが急に近くなった。開会式を見た。よく出来た映像とよく出来たアトラクションで素晴らしかった。だが、あの大きな電動マスコット人形は本当に登場させる必要があったのか。ソチの五輪委員長とIOCバッハ会長のスピーチは、これまでのもたもたする印象の挨拶と違い、オリンピックを形作る多くの人達の熱さを伝える大したものだった。ロシア人もこんなに純粋に夢を語れるものかと少し驚いた。最後までテロなど起きずに平和な祭典として盛り上がって欲しい。それにしてもどう見たって3位の人より良かったろうと潔い上村さんの代わりに悔しがっている。こんなこともオリンピックの楽しみか。（三）
　

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