トックリヤシ（２）

　ロベを買ったときは、本気でもう増やさないでおこうと思った。いくらなんでもこれ以上鉢を並べられない、と心に誓ったはずだった。だが、そんなもの大きなトックリヤシの前ではあっという間に霧散してしまった・・。
　確かに「３割引にしますよ」とか、「もう少ししたら仕舞い込みます」とか、店員さんに煽られたのは否めないが、それでもやっぱり私の意志の弱さが一番の原因だ。いや、欲の深さと言うべきか・・。



　こんな立派なトックリヤはそう簡単には見つからないだろう。以前娘からの誕生日プレゼントとして買ってもらったトックリヤシの１．５倍くらいの大きさはある。幹の根元が直径１０ｃｍはあって、名前のごとくトックリ型になりつつある。これを見ちゃうとな・・、我慢できないよな・・。バカだよな、ホントに・・。
　
　不思議なことに妻はほとんど反対しなかった。私の「トックリヤシが『寒くなる前に家に連れてって下さい』って夢の中でオレに訴えかけてくるんだよね」というほら話を聞いても苦笑するだけで、あえて反対しなかった。それどころか「そろそろホットカーペットを敷いてあげないといけないんじゃないの？」と葉っぱたちの温度管理を気にしたりしたから、驚いてしまった。いったいどういう風の吹き回しだろう・・。

　
　妻の忠告に従って、使わなくなったホットカーペットをジャングル部屋に敷いてみた。数日前に、電器店に行って、冬場室内を１０度以上に保つのに一番良い方法を尋ねてみたところ、空気を乾燥させてしまうエアコンよりもホットカーペットくらいが適度な温度を保つのにちょうどいいだろう、と妻と同じ意見だったので、グッと冷え込むよりも前に準備することにしたのだ。


　１０月になったとは言え、夜中の１２時を過ぎでも室内はまだ２０℃以上あった。いくらなんでもホットカーペットは気が早すぎたかな、と思わないでもないが、それぐらいの方がいいように思う。部屋の中にあるすべての葉っぱとともに明るい春を迎えるためには、万全の態勢を整えることが何よりも大事だから・・。