じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

「テロルの決算」

2006-10-01 13:22:46 | 
テロルの決算

文芸春秋

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★ 沢木耕太郎さんの作品で始めて読んだのがこの「テロルの決算」である。浅沼社会党委員長を刺殺した17歳の少年に焦点を当てて鋭く描いたノンフィクションである。

★ 最初の一行を読むとその文章の迫力に圧倒された。綿密な取材とスキのない構成。ムダのない表現。その冷静にして熱を感じる文章は、一度読み出すと途中でやめる事ができないほどだ。

★ ノンフィクションの最高傑作ではないだろうか。
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「無名」

2006-10-01 03:41:33 | 
無名

幻冬舎

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★ 沢木耕太郎が自らの父親について描いたノンフィクションである。

★ 私は次の一節が好きだ。「文章を書くようになっても、私はどこかで父を畏れていた。世の中には、たとえ無名であっても、どこかにこのような人たちがいるのだと思うと、無邪気にはしゃぐわけにはいかなかった。私が自分の知っている領域以外のことを書いたり話したりすることがほとんどなかったのは、常に父の眼を意識していたからだ。」(187ページ)

★ ノンフィクションの旗手と言われ、数々の秀作を生み出した沢木さん。その作品の背景にはこうした無数の「無名」な人々の視線があったのだなと知って、改めて感慨深かった。
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解夏

2006-10-01 03:08:04 | 
解夏

幻冬舎

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★ 人は自分だけは特別な存在だと思っている。例えば、人は誰でも死を迎えることを知ってはいる。しかしそれが自分に訪れることには案外無頓着なのだ。

★ 病にしてもそうだ。癌や難病など他人事のように思っているが、それがある日自分に降りかかってきたらどうであろう。

★ さだまさし作「解夏」は、そうした作品である。東京で教師をしていた主人公が発作に襲われる。そして少しずつ視力を失っていく。まるで真綿で首を絞められるような日々。主人公は故郷の長崎に帰り、故郷に一人残る母、東京からやってきた恋人とともに不安と迷いの日々を過ごす。

★ そんなある日、寺で僧侶から「解夏」の話を聞く。僧侶は、失明をするという恐怖を行になぞらえて説く。それは生きると言うことにも通じるものだった。

★ 視力や体の機能を失う恐怖は想像に余りある。私自身眼病で視力の一部が欠けたときは大きなショックを受けた。このまま治らなければ、いや益々悪化すればどうすればよいのだろうか。幸運にして私の目はほとんど以前の状態に回復したが、視力を失う不安は尋常ではなかった。金銭などで補うことのできないものである。

★ 「解夏」は短い作品だが、長崎の美しい風景を背景に、さださんの筆が冴えている。
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