じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

「授業の復権」

2006-10-05 02:59:08 | 
授業の復権

新潮社

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★ 授業の名人。斉藤喜博さんや大村はまさんの授業はNHKの番組で見たことがある。板倉聖宣さんの仮説実験授業は、板倉さんが大学の学園祭で実演されたときに参加させていただいた。こうした超有名人でなくとも先生の中には「役者やノォ~」と思わずうなるような授業のうまい先生がいる。

★ 授業のうまい教師には共通する特質があるようにも思う。話術はやはり必要だ。間のとりかた、表情、動作。どれも重要だ。暗い人や口ベたな人はやはり教師に適さない。生徒とまともにアイコンタクトができない人は生徒と心が通じるはずもない。中には役者としてはイマイチだが、脚本家として力を発揮する人がいるかも知れないけれど。

★ 教養や人間性。経験からくる自信、迫力なんてのもあるだろう。覚悟も大切かも。優柔不断はダメだ。自信がないのもダメだ。

★ 城山三郎さんの小説に「今日は再び来らず」というのがある。城山さんが塾・予備校業界を綿密に取材し書かれた作品だが、その中で予備校の講師に必要な資質を5つ挙げている。学者であり、芸者であり、役者であり、易者であり、医者である、と。なるほどなぁと思う。

★ 「授業の復権」の著者である森口朗さんは教師の授業力の低下を嘆く。そしてその原因を「ゆとり教育」「新学力観」に求める。

★ 確かに感じることがある。ここ20数年。少子化の流れの中で、教員の採用が抑制されてきた。教員養成大学では生き残りをかけ、教員免許をとらなくても卒業できるコースをつくったり、大学の統廃合を真剣に考えたぐらいである。そうした中で採用された教員は少数精鋭、優れた教員であるはずだった。戦後のデモシカ教員や「赤旗」教員とは違って。ところが現実は、子どもを前にしてうまく指導できない。問題を抱え込み心や体を壊してしまう、学級崩壊を防ぐことができない教員を多く生み出してしまったのである。

★ 少数精鋭の教員は意外とか弱く、ドサクサの中で大量採用された雑多な教員の方がむしろ力強く、学校に活気があったように思う。

★ もちろん社会背景が違っている。子どもも親も社会も今と昔では大違いである。昔あったような教師と親や子どもとの情報量の差も親の高学歴化やインターネット等情報技術の発達により、差がなくなるどころかむしろ逆転することも多くなってきた。教職の専門性が揺らぎ、教師の権威が低下したのも事実である。

★ こうした中で、「教師に何を求めるのか」と開き直られれば、返す言葉も難しいが、教員の「素人さ」を前提にファーストフードショップのように法則化、マニュアル化するか、「玄人」めざして修行を積んでもらうかである。教職の専門性を改めて築きなおしてもらうかである。

★ 「玄人」を目指す際も、戦前の師範教育を復活させるのか、近々実現する教職大学院に復権を求めるのか、これからが過渡期になりそうな気がする。
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バウチャーの使い方

2006-10-05 01:33:02 | 教育
★ 公立学校を活性化させるためにバウチャーが検討されていると言う。バウチャー(教育チケット)は親に学校選択権を委ね、多くの生徒を集めた人気のある学校、いわゆる「良い学校」により多くの財政支援をしようというものだ。学校に競争原理を導入することによって、よりよい教育を実現しようとする荒療治だ。確かにこれにより一部の「良い学校」はできるであろう。しかし、その良い学校がブランド校への進学率を看板に掲げることは目に見えているし、「良い学校」をつくることは「悪い学校」をつくることと同義である。

★ 良心的に考えれば、「悪い学校」は問題点を改善し「良い学校」をめざせば良いというものだが、世の中そんなに甘くない。「悪い学校」のレッテルを貼られれば、ますます悪くなっていく、悪のスパイラルが始まるだろう。学校のスラム化だ。

★ そう考えると、公立学校に一律にバウチャーを導入するのは慎重にならざるをえない。ただ今日、子どもを私立学校へ行かせるか、公立学校へ行かせるかでは親の負担に大きな差がある。憲法の条文に従って国が直接私立学校を支援できないから、間接的に私学助成が行われているが、それでも無償を原則とする公立と私立では雲泥の差がある。

★ 同じ公教育の一翼を担いながらこの差はいかがなものか。バウチャーを導入するならまずこの点に切り込んでもらいたい。親に公立か私立かを選択する権限を与えるのである。優れた私立にはバウチャーに基づいて多くの助成が行われる、親は公立と同じ額の負担で私立に子どもを通わせることができる。こうすれば良いのではないか。

★ このようにすれば私立が繁栄し、公立がつぶれてしまうかもしれないという危惧がある。公立の教職員にとってみれば死活問題だから組合が反対するのは明らかだ。しかし、公立が親の支持を得られないならば、そのような公立などつぶれてしまったほうが良いのかも知れない。公立は公立で既得権益に甘んじることなく経営努力をする必要はあろう。

★ 更に来春から開講が予定されている「放課後教室」。ここにもバウチャーを導入すればよい。「放課後教室」には経済的な理由で塾に通えない子にも教育を、といった理由もあるようだ。もちろん真の理由は退職教員の生活保障(悪く言えば天下り、よく言えば有効活用)だが。経済的な障壁をなくし、「放課後教室」か塾かを親が選択できるようにすればよい。「課外教育チケット」のようなものを配布すればよい。地域振興券の前例もあるから実現はそれほど難しくないと思うが。どうだろうか。
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