山浦清美のお気楽トーク

省エネ、農業、飛行機、ボウリングのことなどテーマ限定なしのお気楽トークができればと思っております。

調和平均とドルコスト平均法

2021-01-07 | うんちく・小ネタ
 投資の世界ではドルコスト平均法は結構有名な用語です。投資対象は時々刻々価格が変動しますので、購入のタイミングが非常に難しいものです。一番高い時に買ってしまった場合には永遠に利益を得ることができないかもしれません。
 そこで一気に投資せずに投資金額を等分し一定間隔をあけて等分した金額分だけ購入するといった時間分散させる方法です。株式の場合で言えば、毎月一定の日付で10,000円分だけ買い付けます。つまり一株1,000円であれば10株買えます。翌月800円に値下がりしていれば12.5株となり、翌々月に1,100円に値上がりしていれば、9.09株、・・・。といった具合に購入していきます。いわゆる株式積立といったものです。
 時間分散には次のような方法もあります。毎月購入する数量を固定する方法です。先の株式の例でいえば、毎月一定の日付で10株ずつ買い付けます。初月に株価が1,000だとすると10,000円、翌月800円ですから8,000円、翌々月は1,100円ですから11,000が購入額となります。

 さて、どちらの投資法が有利でしょうか!?

 前者の場合、購入金額は10,000×3=30,000円で、購入株数は10+12.5+9.09=31.59株となり、平均取得株価=30000/31.59=949.67円です。
 後者の場合、購入金額は10,000+8,000+11,000=29,000円で、購入株数は10×3=30株となり、平均取得株価=29,000/30=966.67円です。

 比較してみますと前者の平均取得株価が低くなっており、前者の購入方法が有利であることが分かります。たまたま有利になるような値動きにしたのではないかといった疑問をお持ちになった方もいらっしゃるかも知れませんので、一般化して考えてみましょう。

 ここでは簡単のため2回取引することとします。各月の株価をa円、b円とし、前者の毎月の購入金額をc円、後者の毎月の購入株数をd株とします。

  前者の場合、購入金額はc×2=2c円で、購入株数はc/a+c/b=c(1/a+1/b)株となり、平均取得株価=2/(1/a+1/b)円です。
 後者の場合、購入金額はa×d+b×d=(a+b)×d円で、購入株数はd×2=2d株となり、平均取得株価=(a+b)/2円です。

 あれあれー、どかかで見たことがある式ですね。前者が調和平均で、後者が相加平均と言われているものです。高校の数学で相加平均・相乗平均の関係というのを学びます。
 一般に、a>0、b>0のとき、
 (a+b)/2≧√ab≧2/(1/a+1/b) (等号となるのはa=bのとき)
という関係が成り立ちます。
 即ち、価格が変動するならば、必ず相加平均の方が大きくなるということです。裏を返せば調和平均が必ず小さくなります。ということで価格が一定でない限り、調和平均である前者の方が取得コストが小さくなるということがお分かりいただけたと思います。
 この関係は2数だけの場合に限らずn個の数でも成立します。(証明は結構面倒なので割愛します。)

 ドルコスト平均法というのは調和平均のことだったのですね。数学で学んだ時には全く気にも留めなかったことでも、世の中には上手く活用している方々がいらっしゃるのに感心します。

 このドルコスト平均法を活用した商品は数多く存在するようです。先の例の株式の他、金、プラチナなどの商品取引あるいは投資信託などありました。調べたらもっともっとありそうです。中でも面白かったのが金などの貴金属現物取引です。株式などの場合月1回の取引というのが多いようですが、金などの場合、毎月の積立金額を営業日で割った均等額を毎営業日毎に購入するといった方法があります。月1回となれば毎回高値掴みする可能性(逆に安値ということもありますが・・・。)がありますが、毎営業日となるとより平均化ができることにもなるでしょう。

 ドルコスト平均法にもメリットばかりではありません。デメリットもあります。その最大なものはあくまでも平均ですので、最高のパフォーマンスは出せません。もちろん最高のパフォーマンスとは、最安値で全額を購入し、最高値で全てを売り抜けるということです。しかし、これは神業でない限りできないことでしょう。ですから色々な投資法が考案されているのだと思います。